せいぎのみかた

シンゴぱぱ

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第一升 ※誤字はわざとde・・・

1.助けてみた。

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 膝が笑っている。

 目の前に起こった出来事に、彼女は驚き、そして逃避するかのように自分の震えている膝を見て思った。



 彼女、龍造寺千鶴りゅうぞうじちずるは、つい先程まで、明日最初の仕事である、勤務状況を調査する店舗確認を終え、宿泊しているホテルに帰る途中であった。
 身辺警備の護衛二人を引き連れ、移動に使う車に向かっていた。

 どこぞのお国の重役でもない私に護衛とか・・・。

 仕事上トラブルやもめごとも有るにはあった。
 はじめは断ったが親族の経営する仕事にほぼ無条件で就職させてもらっている上、同世代の友人が到底稼ぐ事の出来ないほどの年収等を頂いている以上、無碍むげには断れなかった。

 得られる金額以上の仕事はしていると自他ともに認められていた。

 また、自分の身は自分で守れるほど、彼女は弱くはなかった。

 だが、彼は違っていた。

 依然同じ会社で働いていた社員。

 当然能力の低い、役の立たない社員であった彼を彼女は容赦なく切り捨てた。
 その逆恨みで彼女は彼から有りもしない暴言やピーやパオーンなジャンク語も浴びせられ、刃物迄出され切り付けられそうになった。

 当然護衛二人に捕り抑えられたものの、その男は突然変異し、みるみる異様な化け物へと変わっていったのだ。

 体から黒いシミの様な物が拡がり、真っ黒の体がメキメキと音を立て、大きなクマの様な形になっていく。

 護衛の二人は警棒を出し、殴りかかるが全く効いていない。
 片手の一振りで一人、もう一振りで一人と遥か遠くに吹き飛ばされてしまった。

 のそりのそりと黒いクマの様な二足歩行の怪物と変わり果てた彼は、荒い息を吐きながら千鶴に近づいてくる。
 
 奇怪病(きかいびょう)。

 ここ最近動画やSNSではやっていて千鶴も観たことがある。
 人の体が突然変貌し、化け物の様に人に襲い掛かることもあるという現象。

 都市伝説や眉唾ものではなかったのだと千鶴は現実を肯定する。

 気合をいれて千鶴は右回し蹴りをはなつ。
 しかしもはや人とは比べ物にならないほど硬化した彼の頭は、常人なら気絶できるであろう千鶴の蹴りを跳ね返し、バランスを崩した千鶴は尻もちをついた。

 膝上スカートのビジネススーツ姿。

 緩やかにお股を開き尻もちをついた姿。

 黒く硬化したクマの様な彼は鼻息も荒く近づいてくる。

「お前・・・犯す・・・ボロボロになるまで・・・」

 明らかに興奮した獣の様に迫るそれは、千鶴を対象とみなし、千鶴に迫ってくる。

「い、いや・・・」

 真っ黒く硬化したクマのようなそれは、のそりのそりと迫ってくる。

 あんなもの・・・無理、絶対無理。

 千鶴はこれから起こりえることに絶望するも、膝が笑い、もはや腰も抜け後ずさろうとすることさえできない。


 はたから見ればお股開いて、おいで坊やと誘っているようにしか見えない。

 硬化したクロクマもどきは千鶴の肢体をのそりのそりと、下からじっくりと嘗め回して上へと。

 これから起こることを興奮してか、更に鼻息が荒くなっていく。

「い、いや・・・こんな初めては・・・嫌!!」

 千鶴の精いっぱいの叫び。

 だが、周りには吹っ飛んだ護衛二人と黒い熊さんみたいなのしか居ない筈だった。

 突然黒い熊さんの動きが不自然に止まる。

 黒い熊さんの半身に、ぼんやりと光る白い人影が重なっている。

 その白い人影は左手を、黒い熊いさんの心臓辺りに突き刺していた。

 突き刺した左手は手首の辺りまで深々と入っており、黒い熊さんの体も、その手が刺さった部分が白くなっていた。

 まるで突き刺さった瞬間浸食されたかのように滲んでいる。

 白い人型はその左手をぬく。
 瞬間黒い熊さんから黒い液体がどろどろ溢れてくる。

 嗚咽のようなものを吐きながら黒い熊さんは倒れる。

 白い人型は全身を、まるで戦隊ものや仮面〇イダーの様な装甲でおおわれていた。

「大丈夫か?」

 白い人型は千鶴に振り向きざまに言う。

「ひっ・・・は、ひっ。」

 敵とも、味方とも知れぬ、ただ黒い熊さんに襲われることを免れた安堵感に襲われながら、返事は返す。

 気に食わなかったのか、白い人型は此方こちらを注視している。

「た、助けてくれたんですか?」

 悟った千鶴がすぐに言葉を放つ。
 
 コクリ。とうなずく人型。

 近未来の宇宙服のような、頭部は左右に羽の様な物が生えているような幻想的な全身鎧。

 千鶴の創造力ではそれが限界。

 それよりも今度はこの人型に襲われるのではと心の中では思い始めている。
 白い人型は数歩千鶴に歩みより、そして素早くしゃがんできた。

「ひっ。」

 突然の動きに千鶴は顔を背け、何もおこらなかったので、白い人型の方に顔を向ける。

 白い人型はしゃがんだまま、じっと千鶴の股をのぞき込んでいた。

 や、やっぱりわたしおそわre「質のいいおぱんつだな。」

「は?!」

「いや、上質のおパンツだ。」

「え、あ!」

 お股ぱっくりに尻もちをついていることを今更ながら気づき、
 膝を閉じようとする、が、白い人型の両手に阻まれ、閉じることが出来ない。

「材質は、シルクか。しかも白スーツに白とは。」

「い、いや」

「見るだけだ、へるものではないだろう」

「で、ですけど・・・」

「それにこの薄っすらと紫色の縦縞の模様が・・・実にいい。」

 そう言って人差し指が千鶴のおパンツに触れそうになっていく。

「あ・・・あっ」

 このままではきっと終わらない。

 きっとアーンなことやパオーンなことが黒い熊さんの代わりに・・・この白い人型に・・・

 でも、それほど嫌でも無いかもと思う自分にそういう気があるのかと頭の中で一人ボケ突っ込みする千鶴。


 あ、指が・・・


 今にも千鶴のおぱんつに触れそうになってるその瞬間。

 白い人型は動きを止め、名残惜しそうに千鶴のおパンツを数秒凝視する仕草。

「さらばだ。」

 と言って立ち上がり闇に消えた。

 そのあとすぐにパトカーのサイレンが響く。
 護衛の一人が気絶する前に連絡でもしたのだろうか。

 千鶴も頭を打ち付つけない程度に大の字に倒れた。

「たす・・・かった?」

 ***

 M町警察署。

 そこに、警察署長様が応接する様な質の良いソファーがある別室で、千鶴は警察の方と向き合っていた。

 私服警官二人、そして千鶴だ。

「落ち着いた様なので、すいませんが、少しだけ詳しくお話を。」

 警察の手帳を見せられ、そして名刺を渡される。

 特殊事項対策課とかかれた名刺でそれぞれ二人の名前が書かれている。

 一人は女性、もう一人は男性。ともに若く、女性の方が上司のようだ。雰囲気でもそうだが、男性の方はぎこちなさが抜け切れていない。

 ボイスレコーダーの様な物を千鶴に見せ、了解を得る。
 千鶴は頷き、女性警察官が口を開き始めた。

「千鶴さんを襲った黒い奇怪病患者と、白い人型についてすいませんが判ることを教えてください。」

「はい・・・襲ってきたのは依然同じ会社で働いていた社員の一人です。それを停めてくれたのは白い人型の方です。」

「そうですか。この写真を見てください。奇怪病患者の暴走を何度か止めているこの白い人型・・・「白檀塗」(びゃくだんぬり)と言っているそうですが、何か心当たりはありませんか?」

 防犯カメラか何かの写真に、先ほど見た白い人型の姿がぼやけて映っている。
 千鶴は一度見たことが有るので、何となくだがそうだろうと理解できる。

「い、いえ、私も初めて奇怪病になった人に襲われましたし、その白い人型の・・・白檀塗びゃくだんぬり?という方も、一言二言交わしたくらいですが・・・」

「どんな会話を?」 

 男性警察官がメモを取ろうとする。
 何か特記することが有ればというとこか。

 千鶴はしまったと思いうつむいた。

「あ、あの・・・・」

「はい」

「お・・・」

「お?・・・??」

「おぱんつの色について・・・」

 女性警官は男性警官のメモを取ろうとする手を留め、ため息をついた。
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