やがて光りの王となり

雉村由壱

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【 第三章 】やがて光りの王となり

英雄③

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 火焔石から出てきたのはアルヴァンデールではあまり見かけない緑の妖精。風を司る妖精だ。

「そ、そんな、我々は……妖精を……焼いていたのか……?」

 クラウスが愕然と呟き、セラフィーナとマティアスも息を詰まらせた。

 アルヴァンデール王家にとって、特に魔力を有する者にとって、妖精とは友も等しい存在だ。なのに長きにわたりそれを殺し、富を得てきたということになる。

「ヴィー、なぜ妖精たちは石に閉じ込められているんだ?」

 ヴィーを抱きかかえるウィルバートが尋ねた。

「……さあ。もう、忘れたよ」

 ヴィーは力無く溜め息のように言葉吐く。

「ただ、言えるのは……お前たちが言う……魔物と妖精に違いはない。……お前ら人の仔にとって有益なものを……お前らが勝手に妖精と呼んでただけ……」

 マティアスが解放した緑の妖精は無邪気に飛び回りマティアスの近くにいた金の妖精たちともじゃれ合っている。

「母さま、クラウス殿下。……今の私達ならこの山にある全ての火焔石から彼らを解放出来るのではないでしょうか」

 マティアスがそう問いかけるとセラフィーナとクラウスが驚き顔を上げる。

「今のヴィーを……このバルヴィアを倒しても、また火焔石を使い続ければまた新たなバルヴィアが生まれてくる気がします」

「……そうね。火焔石がある限り、禁止しても私達が死んだ後にまた使う人間は出てくるわ」

「確かにそうなるな……。やってみるか。三人でどこまでできるかわからんが」

 マティアス、セラフィーナ、クラウスの三人は顔を見合って頷いた。

「お、お待ちくださいっ! この山にある全ての火焔石から妖精を解放するおつもりですか?!」

 突然ウィルバートが話に割って入った。

「出来ればそうしたい」

 マティアスはウィルバートを真っ直ぐに見て答えた。

「もしそれが成功した場合、山自体が崩壊する可能性が高いです。第五階層から下はまだかなりの密度で火焔石が存在していると思われますので」

 ウィルバートの指摘にクラウスがマティアスに視線を向け尋ねた。

「この男、何者だ?」

「彼はブラックストン家の者です」

 マティアスはクラウスに説明しながらも、ウィルバートが完全に記憶を取り戻している事実にも触れられ嬉しくなった。

「では、輝飛竜に乗り、空から解放を試みましょう」

 セラフィーナの提案にその場の全員が頷いた。

 セラフィーナとクラウスはそれぞれのものらしい輝飛竜に乗った。しっかりとした鞍が着けられた二頭の輝飛竜は優雅に飛び立った。


 マティアスとウィルバートもフェイに乗る。ウィルバートは外套の胸元を開け、抱いていたバルヴィアをそこに入れた。マティアスはバルヴィアが少し羨ましく感じたが、子供じみた嫉妬をしている場合ではないと、もやつくその感情を飲み込んだ。

「フェイ、行こう。あ、ゆっくりな!」

 マティアスの指示でフェイが飛び立った。バルテルニア王国から旅立った時よりは格段に優しく飛び立ったフェイだが、セラフィーナ達の輝飛竜に比べるとまだかなり荒っぽい。

 東の空が白く光り始めていた。あと少しで太陽が顔を出すだろう。

 明るくなり始めた空に三頭の輝飛竜が舞い、三角形を描きながら回り飛ぶ。バルヴィア山の火口を覗き込みながら、マティアスはウィルバートの背中に抱きつき右手に持った杖をかざした。

(みんなっ、さあ出てきて! もう自由に……)

 マティアスが祈り願うと杖から金色の光が線となって火口へと照射される。セラフィーナの杖とクラウスの剣からも同様の光が差し、三本の光の線は輝飛竜の旋回に合わせて編み込まれるかのように火口を照らし続けた。

 すると、その光が射すあたりから赤や青や黄色などの光がふわふわと湧き出てきた。

「マティアスっ! 光ってる! 俺にも見えるっ!」

 ウィルバートが興奮気味に叫ぶ。
 夜明けの薄明かりの中、ポコポコと色が生まれ喜ぶように飛び回っていく。そして東の山間やまあいから強い陽の光が差し込んだ。

 朝日に照らされたバルヴィア山。陽の光にも助けられたかのようにマティアス達三人が放つ光がより強くなり火口からさらに光が溢れ出した。

「ウィル! 凄いよ! 見えてるっ?!」

 マティアスは杖を構えながらウィルバートに叫んだ。 

「ああ! 見えてる!」
 
 ウィルバートもまた興奮しながら応える。

 バルヴィア山はゴゴゴ……と地響きを立てながら崩れ始めた。その沈み落ちる土砂をものともせず沢山の光が山の中から空に登ってきている。
その光はやがて七色の柱となり空へと登り拡散していった。

「こんなに、たくさんの妖精たちが閉じ込められていたなんて……」

 アルヴァンデールでこれほどまでの妖精を見たことは無かった。バルテルニア王国で妖精の種類が多いと感じたが、アルヴァンデールが少なかったのだとマティアスは実感した。

 やがてドォォォンと大地を震わせる轟音と共にバルヴィア山は完全に山の姿を消し、巨大な窪地が出来た。そこには大量の地下水が流れ込んできている。

「……これは、大きな湖になりそうだな」

 ウィルバートが呆然としつつ呟いた。

「マティアスっ! やったわ! 成功よ!」

 セラフィーナが嬉しそうに手を振り叫んできた。

「母さまっ! クラウス殿下っ! やりましたっ!」

 マティアスが叫ぶとクラウスも手を上げて応えた。
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