必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 信じて、ただ座す。それがこれほどの苦痛を伴うと今ほど理解したことは無い。
 もともと春風は地道を厭わない家だ。それが結果につながるのならどれほどでも遠回りをし、足を止めることさえできた。だが今、将軍の側で春風当主は暴れだしそうになる己を沈めんとひたすらに瞼を閉じる。
 息子は今、どの辺りにいるのだろうか。姿を消した月路が側にいてくれれば良いが、それも確証はない。なにより、この城ですらあちこちに不穏な気配があるのがわかる。将軍たる芳次がいる、この部屋にも。
「納得できませぬ! 衛府の領地を返還し兵力を手放せば相手の思うつぼではありませんか! 上様は我々に何の抵抗もせず下賤の輩に殺されろと仰るかッ!」
 近臣の一人が叫ぶ。その顔は恐怖に強張り、脂汗が滲んでいた。彼に追従するようにその場にいた近臣たちが声をあげる。それを春風家の願いによって集まっていた領主たちは眉をひそめて聞いていた。
「今、ここに泰平の世があるのは誰のおかげか! ただ座すだけの帝でも、いかに衛府の邪魔をするかにばかり余念のない摂家のおかげでもないッ! 衛府が頂点に立ち続けたからではありませんかッ! そして我々がッ! 我々こそが衛府を守り歴代将軍を守ってきたのですッ!」
 必死に叫ぶ彼らは気づいていないのだろう。それは帝や摂家どころか、将軍さえも軽んじた言葉であるのだと。自分達がいなければ将軍は将軍足りえなかったと言っているのと同じなのだと。
「では聞くが、誠に今は泰平の世か?」
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