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8 連絡先ゲット
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なんだろうと見上げた瞬間、蒼井の顔が間近に迫り、唇に柔らかい感触がきた。
「……!?」
一瞬、なにが起きたのか分からなかった。
が、少しして俺は状況を理解した。
(俺……キス、されて……っ)
間違いない、俺は今、キスをされている。
途端に、胸の鼓動がドクドクと鳴り始め、身体の奥がきゅうっと疼く。
(な、んで……)
なんで、こんなオープンな場所で、男同士キスなんてしているのだろう。
訳がわからず、俺はキスを必死に受け止めながらも考える。
どう考えても、おかしい。
連絡先を交換したいというだけで、こんなこと普通はしない。
やはり、俺の事を揶揄っているのだろうか。
(バカにして……っ)
もう悔しくて涙が出そうだ。
それなのに、身体は甘くて官能的なキスに反応を示してしまい……。
「んぅ……っ」
口の中に舌が侵入してきて、疼き始めていた下半身に熱が集まっていくのが分かる。
俺は自分の反応に驚いて目を見開いた。
(俺、男、なのに……っ)
こんなの嘘だ、ありえない。
相手はあの、大嫌いな蒼井響だぞ?
というか、ここはカフェで他の客も居るし、こんな事をしていたら絶対に注目の的だ。
BL好きの女子なんか居ようもんなら、写メだの動画だの撮られるかもしれないし、そもそもカフェでこれはアウトなんじゃないだろうか。
この席はちょうど横に観葉植物が置かれているので、多少は人目を凌げるのがせめてもの救いだ。
「ん、んんっ……!」
内心めちゃくちゃ焦った俺は、必死に抵抗を示す。
けれど、強靭な力で押さえつけられていて、身動きすらまともに出来ない。
(くそ……っなに考えてんだ!)
「……っなせ!」
「っと、押すなって」
結構強く押し返したつもりだったけれど、蒼井には大したダメージはいかなかったようで、辛うじて唇が離れただけにとどまった。
目の前には蒼井のやたら綺麗な顔があり、俺は顔を真っ赤に染め上げ、顔を逸らした。
「お、おおお押すに決まってんだろ! 何考えてんだお前……っ」
必死で目を合わせないようにしながら言うと、蒼井はニヤリと笑みを浮かべる。
そして、俺の顎を軽く掴むと、クイっと強引に前を向かせた。
「やっ……」
「はぁ、その反応。反則だろ……もっかいキスしてもい?」
「……!!」
そんなの、ダメに決まっている。
けど、蒼井の切なげに細められた瞳を見つめていると、キスを許してしまいそうになる。
俺は無言のまま、どうにか力を振り絞り蒼井の身体を押し返した。
「……っと」
今度こそ、蒼井はよろめきながら俺から離れた
俺はようやく解放され、ホッと胸を撫で下ろす。
しかし、ホッとしたのも束の間、チラリと周りを見渡せば、案の定、あちこちの客席から視線が集まってしまっていた。
俺は恥ずかしくて、更に顔を真っ赤に染め上げ俯いた。
「……帰る……」
あまりの恥ずかしさに、もう顔を上げられない。
すると、掠れるような蒼井の小さな声が頭上に降ってきた。
「……ごめん」
「え……」
意外にも、素直に謝ってきた蒼井の声があまりにも弱々しく掠れていて、驚いた俺はつい顔を上げた。
じっと見つめていると、蒼井はヨロヨロと自分の席に戻り、そのままガクリと項垂れてしまった。
「お、おい……?」
「……」
「蒼井? なんだよ、大丈夫か?」
「大丈夫……じゃない」
「……」
……困った。
今、一体なにが起きているのか、理解が追いつかない。
カフェに来たら偶然こいつが居て、逃げようとしたらつかまって、連絡先交換しようと迫られ、拒否したらまたつかまって、抵抗したらキスされた……そしてまたキスしようと迫られ拒絶したら落ち込まれた。今ココ。
と、脳内で簡単にまとめてみても、俺の心臓はバクバク鳴りっぱなしだし、手は震えてるし、顔は熱いしで訳がわからないのは変わらなかった。
(はぁ、もう……)
状況は全くよく分からないけれど、今目の前で蒼井が辛そうな事だけは分かる。
仕方なく、俺は蒼井の近くまで行くと、とりあえずスマホを差し出した。
「……わかった。どうしても連絡先交換したいなら、ほら」
「……いいの?」
チラリと見上げた蒼井の目は、僅かに輝きを取り戻す。
やはり、蒼井がこんなに落ち込んでしまった理由は連絡先の交換が出来なかったかららしい。
俺はスマホを差し出したまま続けた。
「……っ別に。俺の事からかわない、変な事しないって約束してくれるなら、いい、けど……?」
「うん、もちろん約束する。じゃあ……はい」
蒼井は僅かに顔を上げると、自分のスマホを取り出して、ID交換用のQRコードを表示させた。
俺はそれを読み取り、蒼井の連絡先を追加する。
「できた」
「ん、じゃあメッセ送るね」
そう言って、蒼井は速攻でメッセージを送ってきた。
(はやっ!)
開くとそこには『連絡先ゲット♪ よろしくー!』と元気一杯のメッセージが……。
(も、もしかして……やられた!?)
これはどうにもこうにも、ハメられた気がしてならない。
俺はカッとなって、蒼井を睨みつけた。
「お前……! まさかさっきの、演技だったのか!?」
「いいや? 演技じゃないし。ま、よろしく、佐久間君」
「はぁああああああ!?」
ニヤリとした笑みを浮かべる蒼井の顔には、先ほどの暗い影は一ミリも感じられない。
それを見て、絶望の雄叫びを上げる俺。
(あー……おわた)
……かくして。
俺は蒼井と連絡先を交換したのだった……。
「……!?」
一瞬、なにが起きたのか分からなかった。
が、少しして俺は状況を理解した。
(俺……キス、されて……っ)
間違いない、俺は今、キスをされている。
途端に、胸の鼓動がドクドクと鳴り始め、身体の奥がきゅうっと疼く。
(な、んで……)
なんで、こんなオープンな場所で、男同士キスなんてしているのだろう。
訳がわからず、俺はキスを必死に受け止めながらも考える。
どう考えても、おかしい。
連絡先を交換したいというだけで、こんなこと普通はしない。
やはり、俺の事を揶揄っているのだろうか。
(バカにして……っ)
もう悔しくて涙が出そうだ。
それなのに、身体は甘くて官能的なキスに反応を示してしまい……。
「んぅ……っ」
口の中に舌が侵入してきて、疼き始めていた下半身に熱が集まっていくのが分かる。
俺は自分の反応に驚いて目を見開いた。
(俺、男、なのに……っ)
こんなの嘘だ、ありえない。
相手はあの、大嫌いな蒼井響だぞ?
というか、ここはカフェで他の客も居るし、こんな事をしていたら絶対に注目の的だ。
BL好きの女子なんか居ようもんなら、写メだの動画だの撮られるかもしれないし、そもそもカフェでこれはアウトなんじゃないだろうか。
この席はちょうど横に観葉植物が置かれているので、多少は人目を凌げるのがせめてもの救いだ。
「ん、んんっ……!」
内心めちゃくちゃ焦った俺は、必死に抵抗を示す。
けれど、強靭な力で押さえつけられていて、身動きすらまともに出来ない。
(くそ……っなに考えてんだ!)
「……っなせ!」
「っと、押すなって」
結構強く押し返したつもりだったけれど、蒼井には大したダメージはいかなかったようで、辛うじて唇が離れただけにとどまった。
目の前には蒼井のやたら綺麗な顔があり、俺は顔を真っ赤に染め上げ、顔を逸らした。
「お、おおお押すに決まってんだろ! 何考えてんだお前……っ」
必死で目を合わせないようにしながら言うと、蒼井はニヤリと笑みを浮かべる。
そして、俺の顎を軽く掴むと、クイっと強引に前を向かせた。
「やっ……」
「はぁ、その反応。反則だろ……もっかいキスしてもい?」
「……!!」
そんなの、ダメに決まっている。
けど、蒼井の切なげに細められた瞳を見つめていると、キスを許してしまいそうになる。
俺は無言のまま、どうにか力を振り絞り蒼井の身体を押し返した。
「……っと」
今度こそ、蒼井はよろめきながら俺から離れた
俺はようやく解放され、ホッと胸を撫で下ろす。
しかし、ホッとしたのも束の間、チラリと周りを見渡せば、案の定、あちこちの客席から視線が集まってしまっていた。
俺は恥ずかしくて、更に顔を真っ赤に染め上げ俯いた。
「……帰る……」
あまりの恥ずかしさに、もう顔を上げられない。
すると、掠れるような蒼井の小さな声が頭上に降ってきた。
「……ごめん」
「え……」
意外にも、素直に謝ってきた蒼井の声があまりにも弱々しく掠れていて、驚いた俺はつい顔を上げた。
じっと見つめていると、蒼井はヨロヨロと自分の席に戻り、そのままガクリと項垂れてしまった。
「お、おい……?」
「……」
「蒼井? なんだよ、大丈夫か?」
「大丈夫……じゃない」
「……」
……困った。
今、一体なにが起きているのか、理解が追いつかない。
カフェに来たら偶然こいつが居て、逃げようとしたらつかまって、連絡先交換しようと迫られ、拒否したらまたつかまって、抵抗したらキスされた……そしてまたキスしようと迫られ拒絶したら落ち込まれた。今ココ。
と、脳内で簡単にまとめてみても、俺の心臓はバクバク鳴りっぱなしだし、手は震えてるし、顔は熱いしで訳がわからないのは変わらなかった。
(はぁ、もう……)
状況は全くよく分からないけれど、今目の前で蒼井が辛そうな事だけは分かる。
仕方なく、俺は蒼井の近くまで行くと、とりあえずスマホを差し出した。
「……わかった。どうしても連絡先交換したいなら、ほら」
「……いいの?」
チラリと見上げた蒼井の目は、僅かに輝きを取り戻す。
やはり、蒼井がこんなに落ち込んでしまった理由は連絡先の交換が出来なかったかららしい。
俺はスマホを差し出したまま続けた。
「……っ別に。俺の事からかわない、変な事しないって約束してくれるなら、いい、けど……?」
「うん、もちろん約束する。じゃあ……はい」
蒼井は僅かに顔を上げると、自分のスマホを取り出して、ID交換用のQRコードを表示させた。
俺はそれを読み取り、蒼井の連絡先を追加する。
「できた」
「ん、じゃあメッセ送るね」
そう言って、蒼井は速攻でメッセージを送ってきた。
(はやっ!)
開くとそこには『連絡先ゲット♪ よろしくー!』と元気一杯のメッセージが……。
(も、もしかして……やられた!?)
これはどうにもこうにも、ハメられた気がしてならない。
俺はカッとなって、蒼井を睨みつけた。
「お前……! まさかさっきの、演技だったのか!?」
「いいや? 演技じゃないし。ま、よろしく、佐久間君」
「はぁああああああ!?」
ニヤリとした笑みを浮かべる蒼井の顔には、先ほどの暗い影は一ミリも感じられない。
それを見て、絶望の雄叫びを上げる俺。
(あー……おわた)
……かくして。
俺は蒼井と連絡先を交換したのだった……。
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