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Part2 Rasidensy Days of the Southern Hospital

Chapter_10.ずっこけダブルデート(6)お昼寝しましょう

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At Urasoe City, Okinawa; 1:00PM JST, December 16, 1999.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
この項は年齢制限なしと思われます。

彼女が服を着ている横で僕は聴診器をセカンドバックに戻した。
「ただ、貧血は気になるな。いつも、ちゃんと食べてる?」
すると、多恵子はさらりとこう答えた。
「さっき生理になりました。だから、買い物してきた」

納得。なるほど、そういうことだったのね。

僕はセカンドバックから新品の使い捨てカイロを出した。僕自身が低血圧で冷え性なので、持ち歩いているのだ。
「使い捨てカイロ。これ腰に当てたら血行よくなるから。はい」
「助かる! 使おうね」
多恵子は早速、使い捨てカイロの封を開けている。
「低音やけど起こさないように、気ぃつけろよ」
「はーい。ああ、あったかい」
そう言って腰に当てて、再び横になった。
「しんどかったー。でも、これで治るはず。本当にありがとう」

「整形外科医が、生理痛の診察ねー」
脳裏に、半月前に診察した女性の顔が浮かぶ。僕は小声でつぶやいた。ブルータス、お前もか。

「まさか、あんたに診てもらうとはね」
多恵子も横になりながら、ぼそっと言葉を吐いている。
「で、貧血は前から?」
「正常値ギリギリの要観察ってやつですね。生理も不順だし。さっきいきなり来てたから、びっくりした」
おいおい。それはちょっと、まずいんじゃないの?
「看護師の不養生か。しばらく寝てなさい」
言った先からあくびが出た。コーヒーを飲んだはずなのだが、一仕事終えた安心感からか、なんだか眠くなってきた。
「俺も少し横になろうかな。シート倒していいよね?」
「いいよー。河童軍団、たっぴらかさないようにねー」
「大丈夫、大丈夫。よいしょっと」
僕はシートを倒して横になった。ちょうど、助手席の多恵子と向き合う形だ。背の高い僕には、ちょっとスペースなくて窮屈だな。

さっきの診察の後のせいか、妙な感じがする。
何かしてあげなくちゃいけない気がしたから、僕は右手を伸ばして、彼女の頭を撫でた。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
彼女はそういって目を閉じた。

僕は、眠っている彼女の頭をしばらく撫で続けた。それ以上はなにもしなかった。いや、できなかった。それだけ僕は多恵子に本気だった。
とにかく、はっきり言えることは、照喜名てるきなには感謝しなくちゃいかんってことだ。彼の事をきっかけに、僕らの仲が前より進展したのだから。

進展してる……よな? ま、いいか。

やがて、強烈な眠気が襲ってきた。僕は手を離し、仰向けになって目を閉じた。
多恵子さん、おやすみなさい。

Part2 Rasidensy Days of the Southern Hospital:FIN
……ということで、Part3へ To be continued.
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