サザン・ホスピタル byうるかみるく

くるみあるく

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Part3 The year of 2000

Chapter_11.Fly to me! (4)意外な展開

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At Westwood, Los Angeles; November 30, 4:57PM PST, 2000. = At Naha City, Okinawa; December 1, 9:57AM JST, 2000.
At Westwood, Los Angeles; December 1, 7;00AM PST, 2000.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.

それから小一時間ほど経った。掃除を終えた僕は、先日買い揃えた安物のDVDプレーヤーで“Tom & Jerry”を再生して見入っていた。
僕が子供の頃、このアニメはかなり頻繁にテレビから流れてて、つい先日懐かしさから思わず全集を買ってしまったのだ。開封してから日本とリージョンコードが違うことに気づいたものの、後の祭り。それで仕方なくDVDプレーヤーまで買う羽目になってしまった。
それに、本当はこのシリーズそのものより、テレビシリーズで流れていた「真ん中」の話ってのが面白いんだけどね。

プロロローン プロロローン

電話だ。ほーら、きたぞ。僕は受話器を取った。
“Hello?”
「多恵子でーす。今、那覇空港」
……那覇空港?
「今から関空経由で、そっち行くから。んーと、明日の朝には着くと思う」
「な、な、何だって?!」
倒れそうなくらいびっくりした。思わず受話器に縋りつく。
「多恵子、お前、仕事は? 今日は夜勤だろ?」
多恵子の声が耳元でさらっと響いた。
「ああ、休暇とったよ。一週間くらい」
ち、ちょっと、待て! 君、学生のバイトじゃないんだぞ?
「そんな簡単に言うなよ! みんなに迷惑かけるだろ?」
「心配しなくていいよ。里香がちょっと前に長期休暇取ってた時、あたしずっと準夜勤入ってたんだから。あ、じゃ、飛行機出るから、後でねー」

電話が、プツッと切れた。
「はあ?」
僕は切れた受話器を持って、再び、茫然としていた。口が勝手にぱくぱく動く。
あ、じゃ、ひこうき でるから、あとでねー。

……多恵子、いゃー、本気か?

とても信じられなかったが、とりあえずインターネットで検索してみた。
五時だな。日本とロサンゼルスとの時差は十七時間。だから今、日本は、十二月一日の午前十時過ぎ。沖縄那覇空港から大阪伊丹空港あるいは関西国際空港まで、約二時間。伊丹空港だったら関空までバスあるいは電車を使えば一時間くらいか。そのあと出国手続きをして、関空から……。
僕はクリックを連打した。確かに、ロス行き、あるよ。あるけどさ。

僕は大きく首を振って、ノートパソコンを閉じた。やめた、やめた! 期待すると頭がおかしくなりそうだ。ありえないって!
立ち上がると冷蔵庫の中をあさぐり、買い置きのフライドフィッシュを取り出すと電子レンジへ直行した。ちょっと早いけど、日も沈んだし、寒いし。メシ食って、さっさと寝よっと。

チク タク チク タク……。ピッコーン ピッコーン ピッコーン

僕は毛布から右手を伸ばして目覚まし時計を止めた。ベッドの中で軽く伸びをする。ふわー、ううーん。……なま、何時なとーが?
時計をひったくる。七時……。昨日ちぬー何時いつぃとぅくんかいったが、や? あれー、確か六時過ぎやたが、や?
え、ぬーやん? あんやれー、はっしぇ! 十三時間じかぬんんとーたるばすい?!

がばっと飛び起きると、ぶんぶん頭を振った。はっさびよー! どぅくんじぢゅーさぬ、つぃぶるむっさー、あがよーい!

僕はバスタブに湯を張り、そこに漬かってしばらくぼーっとしていた。こういうときは体を温めるのが一番だから。ようやく低血圧症状から脱出して、ゆっくり頭が動き出した。
……あはー、やさ、やたさ。昨日ちぬー、多恵子から電話ぬあたんやー。……んちゃ、あれー、此処くまんかいちゅーんでぃ言たん、や?
まさか、んでぃみーしが……いや、まさか。

僕の頭がしゃんとして、沖縄語うちなーぐちから急速に標準語モードへと切り替わった。
わからんぞ。多恵子は思い立ったらすぐ実行するタイプだ。てことは、本当に、来る、かも。
一応、メールチェックしたほうがいいかな?

僕は急いでバスタブから上がると、コーヒーメーカーとノートパソコンの電源を同時に入れた。入れたてのコーヒーを啜りながらメールをチェックする。メールが一件。なんだこれ、差出人がKansai International Airport?
ダブルクリックすると、メールが開いた。

多恵子です。無事にチケットをゲットしたので、飛びますねー。
JALの六〇便で午前十時着の予定。
ロサンゼルス国際空港まで迎えに来てください。では。

十時着って、今……。
僕は時計を見て絶句した。もう八時半か!
あわててコーヒーカップを置き、すべての電源を切った。やっばい! すぐ出ないと間に合わないぜ!
身支度して玄関にダッシュしかけ、気づいた。ううっ、寒っ! コート、コート! ((7)へつづく)
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