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Part3 The year of 2000
Chapter_11.Fly to me! (5)再会
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At Los Angeles; December 1, from 9:00AM to 10:20AM PST, 2000.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
僕はトレンチコートを引っ掛けて、車を発進させた。UCLA近郊から高速道路を飛ばしても、ロサンゼルス国際空港まで一時間近く掛かる。まして駐車場の状況が……今日、土曜日だよな? すぐに空きが見つかればいいが。
突然、僕の車の前に割り込みが入った。あ、畜生この野郎! 慌ててブレーキを踏む。うわっ、危ねー。こんな時に割り込むなよ。今、事故ったら、しゃれになんねーだろ!
ようやく国際空港の建物が見えた。やっぱり一時間掛かったな。そのまま国内線ビル構内の駐車場へ進んでいく。
えーっと、よかった、空いてるぞ。
ロサンゼルス国際空港は、十以上のビル群から成り立っている。まず、ここから下の階へ降りて、国際線ビルまで出なくてはならない。僕は空きスペースに停車させエンジンを切ると、ドアを開け走り出した。エスカレーターで国内線到着フロアへ向かう。だんだん、空港の喧騒が大きくなってきた。
辺りを見回して気がついた。しまった、ここは国際線から一番遠いビルじゃねーか!
思わず腕時計を見る。九時四十五分? うわー!
僕は走った。空港巡回バス乗り場へ直行する。目の前にブルーのバスが停車した。
“Wait! Please wait!”
叫びながら両手を大きくぶんぶん振り回してバスを足止めし、タックルするように車内へ転がり込んだ。
ああ、乗れたー。心臓がばくばく言ってる。僕はコートを脱いでハンカチを取り出し、顔を拭き拭き息を整えた。ふー、やれやれ、これで国際線までいけるぞ。
あっという間にバスが国際線ビルへ到着した。僕は降りて駆け出した。よし、十時ちょうど。なんとか間に合ったな。ここで待っていればいいんだな?
たしかJALだったな? すでに到着済みか。じゃあ、今頃荷物受け取って、あと入国審査と税関……。
ここまで考えをめぐらせたとき、お腹がグーッと鳴いた。そういえば俺、朝からずっとメシ食ってねー!
僕はすぐ隣のカフェテリアに行き、ブルーベリー味のベーグルとコーヒーを注文して、到着ロビーを睨みながら速攻で食べた。ER所属の外科医として、日ごろの訓練の成果か、早食いはもはや特技と言えるまでになっている。全然自慢にならないけど。
すっかり腹ごなしができた頃、到着ロビーに日本人の姿がちらほら現れだした。多恵子の姿はまだない。
僕は目をこらして到着口をずっと見守った。
三分、五分、……八分経過。
とうとう、見覚えのある姿が僕の視界に現れた。小柄で痩せ気味のシルエット、肩までかかった栗色の髪、そして耳にはあのイルカのピアス。首から肩を藍色のマフラーでぐるぐる巻きにし、いつものごとく安物のジーパンを履き、大きなトランクを二つも抱えてきょろきょろ周囲を見回している。
僕は走った。全速力で、彼女の側へ。
「多恵子ー!」
彼女の名を大声で叫んだ。つかまえた。本物だ!
「つ、勉? わ、わ、わ!」
強く抱き締めた。彼女が戸惑おうと、周りの人間が不審な目でこちらを見ようと、構うものか!
「よかった……よく来た……よく来た!」
抱き締めたまま、僕は何度も繰り返した。うれしいよ、本当にうれしい! 会いたかったよ、多恵子!
「うん、あたしも、会いたかった」
多恵子の小さなつぶやきを、僕はこの耳ではっきり聞いた。
これが、僕が自分の足で全力疾走した、最後の思い出。うん。悪くないや。
ということで、次章へTo be continued.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
僕はトレンチコートを引っ掛けて、車を発進させた。UCLA近郊から高速道路を飛ばしても、ロサンゼルス国際空港まで一時間近く掛かる。まして駐車場の状況が……今日、土曜日だよな? すぐに空きが見つかればいいが。
突然、僕の車の前に割り込みが入った。あ、畜生この野郎! 慌ててブレーキを踏む。うわっ、危ねー。こんな時に割り込むなよ。今、事故ったら、しゃれになんねーだろ!
ようやく国際空港の建物が見えた。やっぱり一時間掛かったな。そのまま国内線ビル構内の駐車場へ進んでいく。
えーっと、よかった、空いてるぞ。
ロサンゼルス国際空港は、十以上のビル群から成り立っている。まず、ここから下の階へ降りて、国際線ビルまで出なくてはならない。僕は空きスペースに停車させエンジンを切ると、ドアを開け走り出した。エスカレーターで国内線到着フロアへ向かう。だんだん、空港の喧騒が大きくなってきた。
辺りを見回して気がついた。しまった、ここは国際線から一番遠いビルじゃねーか!
思わず腕時計を見る。九時四十五分? うわー!
僕は走った。空港巡回バス乗り場へ直行する。目の前にブルーのバスが停車した。
“Wait! Please wait!”
叫びながら両手を大きくぶんぶん振り回してバスを足止めし、タックルするように車内へ転がり込んだ。
ああ、乗れたー。心臓がばくばく言ってる。僕はコートを脱いでハンカチを取り出し、顔を拭き拭き息を整えた。ふー、やれやれ、これで国際線までいけるぞ。
あっという間にバスが国際線ビルへ到着した。僕は降りて駆け出した。よし、十時ちょうど。なんとか間に合ったな。ここで待っていればいいんだな?
たしかJALだったな? すでに到着済みか。じゃあ、今頃荷物受け取って、あと入国審査と税関……。
ここまで考えをめぐらせたとき、お腹がグーッと鳴いた。そういえば俺、朝からずっとメシ食ってねー!
僕はすぐ隣のカフェテリアに行き、ブルーベリー味のベーグルとコーヒーを注文して、到着ロビーを睨みながら速攻で食べた。ER所属の外科医として、日ごろの訓練の成果か、早食いはもはや特技と言えるまでになっている。全然自慢にならないけど。
すっかり腹ごなしができた頃、到着ロビーに日本人の姿がちらほら現れだした。多恵子の姿はまだない。
僕は目をこらして到着口をずっと見守った。
三分、五分、……八分経過。
とうとう、見覚えのある姿が僕の視界に現れた。小柄で痩せ気味のシルエット、肩までかかった栗色の髪、そして耳にはあのイルカのピアス。首から肩を藍色のマフラーでぐるぐる巻きにし、いつものごとく安物のジーパンを履き、大きなトランクを二つも抱えてきょろきょろ周囲を見回している。
僕は走った。全速力で、彼女の側へ。
「多恵子ー!」
彼女の名を大声で叫んだ。つかまえた。本物だ!
「つ、勉? わ、わ、わ!」
強く抱き締めた。彼女が戸惑おうと、周りの人間が不審な目でこちらを見ようと、構うものか!
「よかった……よく来た……よく来た!」
抱き締めたまま、僕は何度も繰り返した。うれしいよ、本当にうれしい! 会いたかったよ、多恵子!
「うん、あたしも、会いたかった」
多恵子の小さなつぶやきを、僕はこの耳ではっきり聞いた。
これが、僕が自分の足で全力疾走した、最後の思い出。うん。悪くないや。
ということで、次章へTo be continued.
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