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二章
初夜 ※
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ラウルがララを連れて広間を出ようとしたところで、レイチェルに呼び止められた。
「ラウル殿下、しばし、しばしお待ちくださいませ」
「なんだ?」
振り返ったラウルに、レイチェルの後ろに控えた女官たちが、ささっとララを引き寄せてあれよあれよという間に連れて行こうとする。
「な、なんだみんな?」
ララが女官たちに手を引かれながら戸惑っている。
「おい?」
「陛下、すぐにお返しいたします。すぐですから。我らシンの女官の意地とプライドにかけて、ララ様をそのような粗末ななりであなた様にお引き渡しするわけには参りませんの」
「……どういう意味だ?」
「どういう意味もこういう意味も……。ま、悪いようにはいたしませんわ。さ、マーガレット……」
レイチェルのその一言で、マーガレットと呼ばれた女官が、ラウルを宮殿奥に用意した二人の初夜の寝室に粛々と案内した。
あまりにも色々なことがありすぎて忘れていたが、考えてみれば三日後にラウルとララは結婚するはずだった。新婚夫婦の部屋が用意されていてもちっともおかしくはないのだが、男のラウルの目から見てもこの寝室は結構な見ものだった。
豪華であることはもちろん、広い寝台の上は、恥ずかしいほどあからさまに、花とレースでふんだんに飾られていたのである。
思わず苦笑したラウルだったが、ララはこの城で、本当に大切に育てられてきたのだということがわかった。
「殿下、この奥が浴室にございます」
女官に言われて寝室の奥を覗くと、温泉の引かれた広い浴室があった。これは嬉しい。
いい国だ──
早速、たっぷりと湯の入った浴槽に浸かりながら、一瞬、本当に自分などが、ララとこの一夜を共に過ごしていいのかと思った。
穢らわしい忌児──
前王の言葉が頭に響く。
それに、こうなった以上、ララとの婚礼は白紙だ。
王が国に縛られるのはこの世界の理だ。ましてやララもラウルも聖王なのだ。自分の意思でこの立場を捨てることはもはや叶わない。
王がその立場を捨てて神龍を受け入れなければ、神龍がもたらす資源はたちまち枯渇すると言われている。たくさんの人々が飢えるのだ。そんなことはできない。
浴槽を出て、女官が用意してくれた布で体を拭き、寛いだ格好で寝台に座っていると、部屋の入り口のドアが開く音がした。
ギッ、パタン──
音がしたのになかなか誰も入ってこないので、様子を見に行こうとすると、薄水色のひらひらと儚いレースのナイトドレスを着たララが、顔を真っ赤にして前室から体を半分だけ覗かせ、怖々こちらを覗きこんだ。そして、寛いだ姿でレースと花で彩られた寝台に腰掛けているラウルを見て、ひっと息を飲むと固まった。どうするのかと思って見ていると、くるっと踵を返して部屋を出て行こうとした。
「あ、おい、待て待て!」
慌てて腕を掴んで引き止めた。
「や、やぁ、ラウル、なんていうか、あー、レイチェルや女官たちは頭がどうかしているんだ。こんなの馬鹿げているだろう? そなたもそう思うよな? というわけで出直してくる。離してくれ」
「ぶはっ、わはははは!」
ラウルはとうとう爆笑してしまった。多分、ここ数年で初めて心から笑った。
ララのこの姿が、この国の民の答えなのだ。二人が一緒になれないことはみんなわかっている。それなのに、大切に大切に育てた愛しい女王を、ラウルのために着飾り差し出してくれた。あなたは穢らわしい忌児ではないと言ってくれているのだ。
恥ずかしがって必死でラウルの手を逃れて逃げ出そうとするララを思い切り胸の中に抱きしめた。
「ほら、こうすれば俺にはよく見えないから、恥ずかしくないだろう?」
「……う、うーん?」
「みんな俺たちを祝福してくれているんだ」
「でもなんかこう、こうあからさまにさあどうぞというのがもう……」
「あはは」
ララは真っ赤な顔をラウルの胸に埋めて身を縮ませている。
ララの銀の髪は、柔らかく結い上げられて、細いうなじが露わになっている。細い肩のラインがすっかり露わになった薄いナイトドレスは、肩袖を軽く引っ張れば、するりと簡単に脱がせられそうだ。
「……考えて見ればだな、俺はお前の着飾った正装をまともに見たことがないぞ」
「え、そうかな? でも今朝の婚礼衣装はおばあさまが苦心惨憺して編み出した……」
「あれはおまえ、正装っていうより仮装だろ? そもそも正装を編み出すって言うか、普通?」
「う…まぁ、そうか…」
「初めて会った時からずっと男のなりだろう? ゴダールに行った時もそうだった」
「……た、確かに」
「だから、ほら、見せてくれ」
ラウルがララの肩を掴んで身を離そうとすると、ララがラウルの胸にしがみついて離れない。
「で、でもこれだってナイトドレスだから、正装とは言えないだろっ? いわば寝間着だ! だだだからダメだ!」
「あはは、せっかくレイチェルたちが用意してくれたんだろう?」
「ででででも、寝間着だから! それに、よく考えれば、私は滅多に正装なんかしないんだ……」
ララが耳まで真っ赤になって胸にしがみついている。死ぬほど可愛い。
「まぁ、いいけどな。脱がすんだから……」
「っ……」
ラウルの腕に力がこもり、思い切りララをぎゅうっと抱きしめた。
「ラウ……くる、し……」
「うん……」
わかっている。わかっているがそうせずにはいられない。だが、自分の想いはこんなものじゃない。
ララの息がつまる前に力を抜いて、小さな頭を支えている細いうなじに唇を落とした。唇を這わせてその先で震える小さな耳朶をやわからく噛んだ。
「ふ……」
「それに、俺はほんの数時間前に、おまえのもっと恥ずかしい姿も見てるんだがな」
ララがハッとした顔でゴダール城の小部屋のことを思い出したらしい。何日も前のことのように思えるが、まだほんの数時間前なのだ。
「もぅ、ラウル!」
真っ赤になって、振り上げた手を掴んだ。
その細い指先にキスする。
顎を片手で持ち上げ、ぽってりとしたララの唇を啄ばみながら、引き結んだ唇から力が抜けるのを待った。
やがてふっと緩んだララの柔らかい唇を吸う。短く唇を離すと、長い睫毛を伏せたまま、ララが追いかけてくるのがたまらない。
ラウルの手がナイトドレスの儚い肩袖をスルリと肩から落とした。
胸の前で結ばれたブルーのリボンを解くと、形のいい胸が溢れた。
両手でその柔らかい膨らみを持ち上げ、唇を順番に膨らみに押しつけながらその感触を確かめる。
きめ細かい肌はラウルの無骨な手に吸い付き、掌の中で形を変える。
親指と人差し指の間には、桃色の小さな蕾が震えている。
そっとつまんで唇で啄むと、舌先でそれがピンと硬くなるのを感じる。
ララの唇から小さな喘ぎと吐息が漏れる。
「あん……」
なぜララはいつも、こんなに甘い匂いがするんだろう。
掠れた声は、ラウルの欲望を遠慮なくくすぐる。
短い毛に覆われたララの秘密は、すでに十分濡れている。
ララは分かっているのだろうか。かわいい声で悶えるたびに、それをもっと聞きたくてララをめちゃくちゃにしたくなるのを。
「ああ、ラウル……」
「ララ、もう挿れたい……」
さっきからガチガチに昂り、早くララをよこせと喚くどうにもならない欲望の塊を掴んで、ララの濡れた割れ目にあてがった。
そこはすでにトロトロにとろけて震えている。
くちくちと淫らな音を聞き、このたまらない感触にゾクゾクと鳥肌を立てながら、ずぷっと一気に突き立てた。
ああ、熱い──…。
「ああっ──……」
ララに出会ってから、ずっと抱えていたラウルのひどい渇きが、深く挿入した途端に貪欲にその渇きを癒そうとする。
どうしてもララを貪ることがやめられない。
乱暴なことをしたら傷つけてしまうと思うのに、濡れた肉が絡みつく快感に激しく反応してしまう。
細くて柔らかな美しい身体が、ラウルの下でガクガクと翻弄されている。
必死に見上げる瞳が切なく歪む、しがみつこうと伸ばしてくる手が、ラウルの激しさについてこれずにシーツの上に落ちてしまう。
ララが泣いている。
ポロポロと泣きながら高く喘いでいる。
それがまたたまらない。
シーツの上に落ちた手を掴みながら、ララに溺れてゆく。
俺は狂っているのかもしれない―――。
「はぁはぁはぁ、ああ、ああ、ララ、ララッ……」
「はあはぁ、ラウル……」
「愛してる」
ララの可愛い悲鳴が部屋に響く、ラウルの激しい動きに合わせて寝台がギシギシと軋み、二人の汗と体液を吸ってシーツが濡れる。ララの爪先がシーツをかき乱し、ラウルを容赦無く締め上げる。
「ああっ、ララッ」
気づいたら、ララの両脇に手をついて、背中をそらしながら、最初の快感が迸るのを止められなかった。どくどくといつまでも迸る射精の快感が全身を震わせた。
「ラウル殿下、しばし、しばしお待ちくださいませ」
「なんだ?」
振り返ったラウルに、レイチェルの後ろに控えた女官たちが、ささっとララを引き寄せてあれよあれよという間に連れて行こうとする。
「な、なんだみんな?」
ララが女官たちに手を引かれながら戸惑っている。
「おい?」
「陛下、すぐにお返しいたします。すぐですから。我らシンの女官の意地とプライドにかけて、ララ様をそのような粗末ななりであなた様にお引き渡しするわけには参りませんの」
「……どういう意味だ?」
「どういう意味もこういう意味も……。ま、悪いようにはいたしませんわ。さ、マーガレット……」
レイチェルのその一言で、マーガレットと呼ばれた女官が、ラウルを宮殿奥に用意した二人の初夜の寝室に粛々と案内した。
あまりにも色々なことがありすぎて忘れていたが、考えてみれば三日後にラウルとララは結婚するはずだった。新婚夫婦の部屋が用意されていてもちっともおかしくはないのだが、男のラウルの目から見てもこの寝室は結構な見ものだった。
豪華であることはもちろん、広い寝台の上は、恥ずかしいほどあからさまに、花とレースでふんだんに飾られていたのである。
思わず苦笑したラウルだったが、ララはこの城で、本当に大切に育てられてきたのだということがわかった。
「殿下、この奥が浴室にございます」
女官に言われて寝室の奥を覗くと、温泉の引かれた広い浴室があった。これは嬉しい。
いい国だ──
早速、たっぷりと湯の入った浴槽に浸かりながら、一瞬、本当に自分などが、ララとこの一夜を共に過ごしていいのかと思った。
穢らわしい忌児──
前王の言葉が頭に響く。
それに、こうなった以上、ララとの婚礼は白紙だ。
王が国に縛られるのはこの世界の理だ。ましてやララもラウルも聖王なのだ。自分の意思でこの立場を捨てることはもはや叶わない。
王がその立場を捨てて神龍を受け入れなければ、神龍がもたらす資源はたちまち枯渇すると言われている。たくさんの人々が飢えるのだ。そんなことはできない。
浴槽を出て、女官が用意してくれた布で体を拭き、寛いだ格好で寝台に座っていると、部屋の入り口のドアが開く音がした。
ギッ、パタン──
音がしたのになかなか誰も入ってこないので、様子を見に行こうとすると、薄水色のひらひらと儚いレースのナイトドレスを着たララが、顔を真っ赤にして前室から体を半分だけ覗かせ、怖々こちらを覗きこんだ。そして、寛いだ姿でレースと花で彩られた寝台に腰掛けているラウルを見て、ひっと息を飲むと固まった。どうするのかと思って見ていると、くるっと踵を返して部屋を出て行こうとした。
「あ、おい、待て待て!」
慌てて腕を掴んで引き止めた。
「や、やぁ、ラウル、なんていうか、あー、レイチェルや女官たちは頭がどうかしているんだ。こんなの馬鹿げているだろう? そなたもそう思うよな? というわけで出直してくる。離してくれ」
「ぶはっ、わはははは!」
ラウルはとうとう爆笑してしまった。多分、ここ数年で初めて心から笑った。
ララのこの姿が、この国の民の答えなのだ。二人が一緒になれないことはみんなわかっている。それなのに、大切に大切に育てた愛しい女王を、ラウルのために着飾り差し出してくれた。あなたは穢らわしい忌児ではないと言ってくれているのだ。
恥ずかしがって必死でラウルの手を逃れて逃げ出そうとするララを思い切り胸の中に抱きしめた。
「ほら、こうすれば俺にはよく見えないから、恥ずかしくないだろう?」
「……う、うーん?」
「みんな俺たちを祝福してくれているんだ」
「でもなんかこう、こうあからさまにさあどうぞというのがもう……」
「あはは」
ララは真っ赤な顔をラウルの胸に埋めて身を縮ませている。
ララの銀の髪は、柔らかく結い上げられて、細いうなじが露わになっている。細い肩のラインがすっかり露わになった薄いナイトドレスは、肩袖を軽く引っ張れば、するりと簡単に脱がせられそうだ。
「……考えて見ればだな、俺はお前の着飾った正装をまともに見たことがないぞ」
「え、そうかな? でも今朝の婚礼衣装はおばあさまが苦心惨憺して編み出した……」
「あれはおまえ、正装っていうより仮装だろ? そもそも正装を編み出すって言うか、普通?」
「う…まぁ、そうか…」
「初めて会った時からずっと男のなりだろう? ゴダールに行った時もそうだった」
「……た、確かに」
「だから、ほら、見せてくれ」
ラウルがララの肩を掴んで身を離そうとすると、ララがラウルの胸にしがみついて離れない。
「で、でもこれだってナイトドレスだから、正装とは言えないだろっ? いわば寝間着だ! だだだからダメだ!」
「あはは、せっかくレイチェルたちが用意してくれたんだろう?」
「ででででも、寝間着だから! それに、よく考えれば、私は滅多に正装なんかしないんだ……」
ララが耳まで真っ赤になって胸にしがみついている。死ぬほど可愛い。
「まぁ、いいけどな。脱がすんだから……」
「っ……」
ラウルの腕に力がこもり、思い切りララをぎゅうっと抱きしめた。
「ラウ……くる、し……」
「うん……」
わかっている。わかっているがそうせずにはいられない。だが、自分の想いはこんなものじゃない。
ララの息がつまる前に力を抜いて、小さな頭を支えている細いうなじに唇を落とした。唇を這わせてその先で震える小さな耳朶をやわからく噛んだ。
「ふ……」
「それに、俺はほんの数時間前に、おまえのもっと恥ずかしい姿も見てるんだがな」
ララがハッとした顔でゴダール城の小部屋のことを思い出したらしい。何日も前のことのように思えるが、まだほんの数時間前なのだ。
「もぅ、ラウル!」
真っ赤になって、振り上げた手を掴んだ。
その細い指先にキスする。
顎を片手で持ち上げ、ぽってりとしたララの唇を啄ばみながら、引き結んだ唇から力が抜けるのを待った。
やがてふっと緩んだララの柔らかい唇を吸う。短く唇を離すと、長い睫毛を伏せたまま、ララが追いかけてくるのがたまらない。
ラウルの手がナイトドレスの儚い肩袖をスルリと肩から落とした。
胸の前で結ばれたブルーのリボンを解くと、形のいい胸が溢れた。
両手でその柔らかい膨らみを持ち上げ、唇を順番に膨らみに押しつけながらその感触を確かめる。
きめ細かい肌はラウルの無骨な手に吸い付き、掌の中で形を変える。
親指と人差し指の間には、桃色の小さな蕾が震えている。
そっとつまんで唇で啄むと、舌先でそれがピンと硬くなるのを感じる。
ララの唇から小さな喘ぎと吐息が漏れる。
「あん……」
なぜララはいつも、こんなに甘い匂いがするんだろう。
掠れた声は、ラウルの欲望を遠慮なくくすぐる。
短い毛に覆われたララの秘密は、すでに十分濡れている。
ララは分かっているのだろうか。かわいい声で悶えるたびに、それをもっと聞きたくてララをめちゃくちゃにしたくなるのを。
「ああ、ラウル……」
「ララ、もう挿れたい……」
さっきからガチガチに昂り、早くララをよこせと喚くどうにもならない欲望の塊を掴んで、ララの濡れた割れ目にあてがった。
そこはすでにトロトロにとろけて震えている。
くちくちと淫らな音を聞き、このたまらない感触にゾクゾクと鳥肌を立てながら、ずぷっと一気に突き立てた。
ああ、熱い──…。
「ああっ──……」
ララに出会ってから、ずっと抱えていたラウルのひどい渇きが、深く挿入した途端に貪欲にその渇きを癒そうとする。
どうしてもララを貪ることがやめられない。
乱暴なことをしたら傷つけてしまうと思うのに、濡れた肉が絡みつく快感に激しく反応してしまう。
細くて柔らかな美しい身体が、ラウルの下でガクガクと翻弄されている。
必死に見上げる瞳が切なく歪む、しがみつこうと伸ばしてくる手が、ラウルの激しさについてこれずにシーツの上に落ちてしまう。
ララが泣いている。
ポロポロと泣きながら高く喘いでいる。
それがまたたまらない。
シーツの上に落ちた手を掴みながら、ララに溺れてゆく。
俺は狂っているのかもしれない―――。
「はぁはぁはぁ、ああ、ああ、ララ、ララッ……」
「はあはぁ、ラウル……」
「愛してる」
ララの可愛い悲鳴が部屋に響く、ラウルの激しい動きに合わせて寝台がギシギシと軋み、二人の汗と体液を吸ってシーツが濡れる。ララの爪先がシーツをかき乱し、ラウルを容赦無く締め上げる。
「ああっ、ララッ」
気づいたら、ララの両脇に手をついて、背中をそらしながら、最初の快感が迸るのを止められなかった。どくどくといつまでも迸る射精の快感が全身を震わせた。
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