9 / 40
第一章
9話
しおりを挟む私は書籍部屋にある古い新聞を読み漁った。
メイシー…メイシー…。
あっ…
数年前に父、セルゲイ・ケルディア伯爵の奴隷営業が見つかり爵位剥奪。セルゲイ・ケルディア元伯爵と共にセレーナ・ケルディア元伯爵夫人がメイシー・ケルディア元伯爵令嬢を1人残し姿を消す。
これ…メイシーだ。
セルゲイ・ケルディア伯爵の奴隷営業発覚のセルゲイに雇われていた薬師達はシャンドラ・カルノス公爵が引き継ぐことになった。
これって元々伯爵とシャンドラは関わりがあったってこと?
じゃあやっぱりメイシーはシャンドラの手下なの?
よく分からない…。
でもシャンドラはメイシーが伯爵令嬢だった頃からの知り合いだったのね。
メイシーにはシャンドラの言うことを聞かざるを得ない人間ってわけね。
そんな立場なだけに失敗したら私みたいに怒られちゃうのかしら…
それならメイシーは自分の立場を守らないといけないし 。
といいように考えてみる。
だけど…やっぱりあの時はシャンドラの怒り方は何か違った。
何故あなたはシャンドラと違う思考で動いているの。
メイシーは私の思い込んでるような人間じゃあないんだ。
そう思う他なく少し希望が見えたような気がしたんだけどなぁと落胆する。
古い新聞持ち出し、引き出しに片付けて一息つく。
コンコン「お嬢様~そろそろかと紅茶と先程のクッキーをご用意しました」
「まぁ、ありがとうメイシー。このクッキーとっても美味しかったから楽しみにしていたのよ。メイシー、あなたも食べて」
メイシー。私1人で薬草クッキーなんて食べないわよ。
メイシーはどう出るのかしら?
「あ…ありがとうございますお嬢様。ですがこのクッキーはお嬢様が楽しみにしてらっしゃったので私なんかが貰っては…」
「いいのよ。私は貴方と食べたくて頼んだんですもの」
「まあ…ありがとうございます。」
クッキーを口に運ぶ素振りをみせるメイシー。
「あっお嬢様!このクッキー少し傷んだ臭いがしますわ…あのお店最近お客が少なくなってるようで…せっかくお嬢様が
お好きになったクッキーなのに。あそこはもう行かない方がいいかもしれません!」
「…そう。残念だわ」
「お嬢様のお口に合うような違うお菓子屋さんを探しておきますね」
「ありがとう。」
"悔しそうな顔して出ていったわねー。ナーシャあなたも強くなってきたわね"
"ふふ。でもどうしてもメイシーがこんなことする理由が分からないの"
"んーなにか嫉妬されるようなことしたの?"
嫉妬…毎日シャンドラに怒られる日々を送ってる私に嫉妬なんてされることないはず…。
誰かメイシーを知ってる人はいないのかな…。
シャンドラやメイシーの年頃の人で私が気軽に聞ける相手はラベル先生くらいね。今度聞いてみるかな。
コンコン「ナーシャ…」
「お母さまどうしたの?」
「実は…さっき※ラミフォンでお義父さまから連絡が来たんだけど…着いてすぐの頃は5人ほどだったのに隔離しても疫病の人がどんどん増えてるらしいの…それで当分家に帰れないけれど、ここまで広がるのは時間の問題だから外出を控えるようにしなさいって」
※ラミフォン…魔法石を使って相手の姿を見ながら話せるテレビ電話みたいなもの
当分帰ってこないんだ。それって私にとっては平和の訪れじゃない。
「大変ね。レティシャにも外でないようにしないといけないだろうし私もレティシャと遊ぶ時間を作るね」
「ええ…。助かるわ…。」
お母さまはきっとお父さまが亡くなった時みたいにシャンドラが死んでしまったら…って怖くて仕方ないのね…。
「その疫病は…まだ原因が分かってないの?」
「そうみたいなのよ…お義父さまは天才だものきっと原因が見つかるハズよね 」
「ええ。きっと」
不安そうなお母さまを落ち着かせてあげたくて
私はジェノシーでよく飲んでいたフルーツ入りの紅茶を作った。
「まぁ。とっても久しぶりだわ。美味しい。娘から紅茶を作ってもらえるなんて私は幸せね。ありがとうナーシャ。」
数日、シャンドラも居ないためレティシャとお母さまとの距離が縮まっていくような日々を過ごせた。
この時間をメイシーに邪魔をされたくない。と思っていたけど意外と何も起こることはなかった。
ただ疫病はあっという間にこの辺まで広がりだし
お母さまはより一層不安が増したようで時間が来るとラミフォンの近くでソワソワするようになった。
お母さま…また自分の旦那様が亡くなったらと思うとそりゃあ怖いわよね…。
数日後、疫病の原因が分かったみたいで飲み水が原因だったらしい。
西の方は物作りで成り立っていて工場地帯。
その工場の一部がきっちり破棄しなければいけない液体を川に流していたらしい。
その川がどんどん荒んで行き飲水に影響出てしまったようだった。
"ソラン…ソランならその水も綺麗に出来ちゃうの?"
"ああ。まあ簡単なことだぞ"
"ソラン…1度お忍びでその川に行きたい。"
"いいけど。放っておけばナーシャの敵が1人居なくなるのも時間の問題だろ?"
"だけど…シャンドラ1人のせいで多くの人が死んでしまうのはいやなの。それにシャンドラは私の敵よ。だけど他の人を助けに行ってるんだもの…。私は助ける力を持っているのにシャンドラ1人のために放っておくなんてことは出来ないわ"
"なら散歩がてら久しぶりに俺の上に乗って空でも飛んでいくか"
"'うん!!"
その日の日中はお母さまやレティシャと一緒に過ごした。
もしも普通に過ごせたら…こんな日々を過ごせたんだろうな。なんて思う。
その日の夜みんなが寝静まった頃合を見て
ソランに背中に乗せてもらい西へ向かった。
「わああ。夜の空ってこんっなに綺麗なのね」
"寒くないか?"
「うん!綺麗すぎていやなことも全部忘れちゃいそうなくらい。それにソランがふわふわで温かいしへっちゃらよ」
"はは。そりゃよかった"
"こらー私を置いて抜けがけなんて許さないわよ"
"ティエラ!抜けがけなんてしてないだろ"
"私に黙ってナーシャと2人で出かけるなんて抜けがけ同然よ"
「ふふふ3人で一緒に行けるなんて嬉しい」
___________
「これは……」
問題の工場の液体が流された川のそばは草木も枯れ、水の流れも悪くなって悲惨な状態だった。
"ナーシャ。この空気吸わない方がいいわ。口に布を当てておきなさい"
私は口に布を当てソランに尋ねる
"ソラン…これは直せそう?"
"ああそれは簡単だ。だがさすがにこの水の流れを直しても人間がまた同じことをすれば数年後にはまた元通りだぞ。今直してはまた同じことを繰り返すだろう"
「たしかに…何もせずに直せばまた同じことになるのは目に見えてるわ…1度工場に行ってみましょう」
「どうしたものか…液体を破棄する場所も見つからないまま川に流したせいでこんなことになるなんて…このままじゃ俺は……どうすれば…」
近づこうとすると工場長らしき人が工場のまえで埋まっていた。
流す場所がなかったのから…
そんな理由で川に流すなんて…
"その場がなんとかなればいいなんてほんっと人間の考えることはどうしようもないわ"
…この液体って全て分離できないのかしら…
ほら…飲み水を作るみたいな方法で
そこに魔法石を使って同じものを作れる人間がいれば出来ないこともないかもしれない…。
"ねぇソラン、ティエラ。2人ってずっとこの世界と精霊界を行き来してたのよね?"
"ああ"
"ええ"
"魔法石でラミフォンを作った人ってこの世界にいるの?"
"いるわよ…すっごく変わり者で有名らしいけど "
"この世界が好きな魔法使いだとは聞いた事あるが…気に入らない人間ならどんなに金を積んでも絶対に何も作らないらしいな"
"私、その魔法使いに会いたい!"
"…まぁナーシャなら…魔法使いに気に入られるかもしれないわね…"
1度家に帰り魔法石を取りに行き、魔法使いの元へ向かった
"魔法石なら会いに行くついでに取りに行ってあげるのに"
「家にあるのに新しいものを取りに行くのは勿体ないでしょう?ほら、鉱山の中にある方が石も育つだろうし」
"ナーシャのそういうところが好きだわ"
"ナーシャ、魔法使いの名前はフレア・テミ二エルだ。まずはテミニエル様?お話を聞いてください。って言ってみな
。初めから「お願いが」とか言うと頑固だから絶対聞く耳も持たないからな"
「教えてくれてありがとうやってみる」
ある飲み屋さんに入り2階の部屋の前に着いた。
…コンコン
……………
居留守かしら?
コンコン
「夜分遅くごめんなさい…初めまして。私ナーシャと申します。テミニエル様にお話を聞いていただきたくてここまで来ました」
30
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる