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第一章
11話
しおりを挟むメイシー…どうしてあんなに機嫌が悪いのかしら 。
メイシーはシャンドラが死んだら困るってことよね。
もしかして私がお母様を思って逃げないのと同じようにメイシーの大切な人がシャンドラの手の中に居るとか…?
でもそれならやっぱりシャンドラの思い通りに動くだけのはずだし。
結局私に個人的な恨みがある。くらいしか考える他ない。
一緒にいるうちに私はメイシーの嫌がることをしてたのかな…。
"そろそろ用意出来たか?"
「うん!私は大丈夫よ。でも薬草を取りに行ったっきりティエラが帰ってこないの」
"ああ。アイツなら直接テミニエルの所へ向かうそうだ"
「何かあったの?」
"いや、まあ放っておけばいい。行くぞナーシャ"
「う、うん」
今にも雨が降りそうな中、急いでテミニエルの元へ行く。
「ソラン、雨が降りそうね」
"ああ。ティエラだろう"
「ティエラが雨を降らそうとしてるの?」
"まあ、念の為ってやつかな"
「どうして?」
"さあな"
ティエラは一体何を考えてるのかしら。
昨日と同じ飲み屋の2階へ到着し、テミニエルを呼び部屋へ入る。
「ナーシャ♡いらっしゃい。こんな感じの濾過装置でどうかしら?見て、油にヘドロを混ぜた液体をここに入れるとあらびっくり分別されちゃう。ふふ。いい感じでしょ?書類を用意しておいたわ。しっかり読んでサインしなさい」
「テミニエル様、ありがとうございます」
申請欄の事業主はテミニエルになっている。
事業申請書に私の名前はこの間言った通りどこにもない。
2枚目の私とテミニエル様との契約書。
オーナーは私。事業主としてはテミニエル様
費用は全て私が受け持つこと。
そしてその売上の9割は事業主テミニエルへ
残り1割はオーナーのものとする。
私がどうこうした訳じゃあないし
今後は絶対に必要なものだもの。
売上の1割は私っていうのは私が思ってた通りよ。
そのままサインしようとすると、
大雨が降り出した。
"ここって雨漏りがすっごいのよねぇ、こんなに大雨が降るって珍しいわね~"
ティエラ!?
「わ…私のコレクション達が」
"テミニエル様、大事な生き血達のコルクは大丈夫そう?"
「なっ大地精霊が雨を降らしてるの!?」
"ふふ。どうなのかしら~"
「ティエラ!?何してるの!?」
"薬草を取りに行く時にここを通りがかってね~。これで大儲けだぁって喜んでるテミニエル様を見つけちゃってさ"
「な。何言ってんのよ作るのは私なんだから作ったら人間は十分でしょうよ」
「ええ。私も1割で納得してるわ。だってほとんどテミニエル様が動いてくださってるでしょう?」
「甘い!!甘すぎるわ。私が作ることを引き受けたとしても事業を提案したのはあなたよ!?まさかこんなに何も考えず本当にボランティアの気持ちでサインするとは思わなかったわ。てっきり惜しみながらサインすると思ってたのに!!…ハッ」
"ね~ナーシャは本当に甘いわよね~"
"テミニエルがこんなにずるい奴だったとはなあ"
「ソラン…んんんん分かったわ。1割は確かにやりすぎたと思ってる。私もこの子が粘ると思ってまずは1割にしてたわけだし」
"ナーシャ。あなたはオーナーなのよ。きっちり交渉しなさい"
「ティエラ…。」
そっか…オーナーになる。これはただ疫病を落ち着かせるだけじゃなくて…事業を起こすってことは今後自分を支えるための資金源を作るってことなんだ。
「売上の半分!半分でいいわ!いや。3割でいいから!早く雨を落ち着かせてちょうだい!!」
ぎゅっと生き血達を抱きしめコルクを守るテミニエル。
私が書き換えた書類にサインすると次第に雨は止んだ。
「もう!荒業なんだから!この辺は大雨に当たらないし人気も多くはないから気に入ってたのに。雨漏りしない所に引っ越そうかしら。」
"ずるいことさえ考えければこんなことしないわっ"
「ソラン~人間の姿になって生き血を貰わないと割に合わないわ~」
"ふふ。ほらっソラン!早く人間になってあげなさいよ "
"この件に俺は関係ないだろ?テミニエル、ティエラも男だぞ?それも男の姿をすれば俺よりかっこいいらしい"
「なっ私はソランに顔だけで惚れてるわけじゃないわ!こんなヤツ知らないんだから」
"なんですって!?"
「何よ!」
ティエラとテミニエル様の言い合いが始まり
ホッとしているソラン。
"まぁ生き血くらい上げてもいいんじゃないかしら"
と巻き込まれ結局ソランは面倒になり人間の姿になり
生き血を上げることにしたらしい。
生き血って言うからには吸血鬼のように血を吸われるのかと思いきや
座って献血のようにルンルンです血を回収するテミニエルをみて安心して笑ってしまいそうになった。
テミニエル様にお礼をいい
「ふふふ。契約なんかより価値のあるソランの生き血もやっと貰えたし私も大満足よ♪まぁ分かってて雨を降らせる大地精霊はムカつくけど?」
"私のおかげで生き血が貰えたんでしょ?"
「違うわ!私が頼んだから貰えたのよっ」
"なんでもいい。早く戻るぞ"
「ありがとね。ソラン♡この書類は明日にでも役所に出して西の工場と契約するわね~それまで動くのは我慢してね~」
"ああ"
無事にテミニエル様と契約することが出来て家に帰る途中にふと思い出した
「ティエラ、そういえば薬草って…」
"ああ~それならテミニエル様のところに行く途中でシャンドラの寝てる横にポンっと置いといたわ。今頃薬師達が騒いでるんじゃないかしら"
「え、もう!?ありがとうティエラ」
"どうってことないわっ。あなたもわざわざシャンドラに会いたくないでしょ?まぁ弱ってるシャンドラを見せたかったけど。"
"性格の悪いやつだな"
"助けたたけで十分でしょうよ"
"まあな"
「ふふふ」
帰るとまた夜中の2時になっていて熟睡した。
______________________
朝になり朝一でお母さまが部屋に来た
「ナーシャ!!おはよう♪お義父さまが疫病に勝ったそうよ」
「まぁ。お母さま。一安心ね」
「なんでも疫病を治すための薬草が見つかったんですってこれで疫病も収まってくるはずだわ」
その直後、薬草が見つかったことは新聞でも広がったようで
安心したように街を出歩く人たちも増えた。
メイシーも喜びを隠せないように
「お嬢様…シャンドラ様がお目覚めになったようで明日には帰ってくるようです…またあの日々に戻ると思うと…」
とあからさまな嘘泣きをして部屋を出ていった。
私がメイシーに頼み事をした日から
吹っ切るように人が変わり、いつバレてもいいと言わんばかりに態度があからさまになった。
多分だけど…シャンドラが帰ってきたら確実にメイシーはなにかを仕掛けるだろうな…。と心をかまえる。
その日の夕方テミニエル様の言った通りに工場には装置が置かれることになり、この装置は工場の負担にならない程度の金額で修理を保証した月額制で契約することにしてくれたようだ。
これもまた夕刊になり
他の工場からも購入の意思や契約が殺到したらしくテミニエル様は忙しそうに知らせてくれた。
あの晩困っていた工場長らしい人はこの装置と多大な金額での購入ではなく契約制でこの装置を扱えることに泣いて喜び
安心して私たちも汚れた川や草木を生き返らせに行き、なんとか疫病騒動に収拾がついた。
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