コーデリア魔法研究所

tiroro

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3.魔法についてのお勉強

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 翌朝。
 私は所長から渡された本とにらめっこしていた。

 魔法大全──この本には魔法の属性とか、加護とか、等級とかその辺がまとめて書いてあるらしい。
 まぁ、読み書きの苦手な私には読むことが難しそうなんですけど……。
 研究室にいたリシテアさんをチラッと見る。
 ちょうどこちらを見ていたリシテアさんと目が合った。 

「フンッ……庶民には、とても理解できないでしょうね」

 リシテアさんにとっては嫌味のつもりだったかも知れないけど、本当に理解できません。
 挿絵も魔法陣っぽいのとか、よくわからない図形とかばっかりで、内容がさっぱりわからない。
 私が孤児院出身だとわかってるはずなのに、なんで所長はこんなものを渡してきたんだろう……。

「その本に書かれている文字は魔法文字。文学の履修は関係ないわ。
 貴女に本当に魔力が備わっているのなら読めるはずよ」

 そう言われても、私はあれから魔法のまの字も出せないんですよ。
 あの水晶の光が何だったのかわからないけど、私に本当に魔力なんてあるのかなぁ……。

「貸してみなさい」

 リシテアさんに本を渡した。
 すると、リシテアさんの目が怪しく光り出す。
 そのまま目から怪光線でも出しそうな雰囲気。

「ほら、こうするの。わかった?」

 ……何がですか?
 目を光らせるってこと? 私の目からは涙くらいしか出ませんけど。

「……さっきから、何も話さないわね」

 だって、リシテアさんって貴族でしょ?
 昨日はうっかり返事しちゃったけど、貴族の人に粗相をしたら処刑にされるって言うし、貴族社会のマナーを知らない私には迂闊に返事することもできませんよ。

「リシテア、またミアに何かちょっかい出してるのか?」

 ユリウスさんだ。
 トリートメントの申し子のユリウスさんだ。
 お願いですから、その綺麗な整った顔で私に近付かないでください。
 あの夢の出来事を思い出してしまいます。

「まただなんて……私はただ、魔導書の読み方を教えてさしあげようと……」

 リシテアさんはそっぽを向いてしまった。
 たぶんだけど、リシテアさんはユリウスさんのことを好きなんだと思う。
 だから、ああやって注意されるとふてくされちゃうんだ。

「ミア、魔導書は目に魔力を集めて読むんだ」

「どうしたらいいんですか?」

「目をつぶって、頭の中に魔力が集まる感じをイメージするんだ」

 ふむふむ……。
 なんか、頭の中に青白い光が見える気がする。

「その魔力を分裂させて、目に行き届くイメージで動かしてごらん」

 こう……かな?
 目を開けても、特に何も変わったようには……?

「ユリウスさんの背中の辺が……赤い?」

「私の魔力が見えるのか? それなら話が早い。その本を開いてごらん」

 ユリウスさんに言われるがまま魔法大全を開くと、さっきまで読めなかった内容が、私にも理解できるように変わっていた。
 文字とかじゃなく、頭に直接入ってくるような感じ……。

「できたじゃない……」

 もしかして、私の目もさっきのリシテアさんみたいに光ってる?
 本当に目から怪光線撃てちゃったりして──。
 とか、冗談のつもりでやってみたら光線がリシテアさんの近くの床に向けて飛んでった。

「ミア……あなた、私を殺す気!?」

「ご、ごめんなさい! まさか本当に出るなんて思わなくて!」

「また無詠唱か……」

 ユリウスさんがなんか言ってるけどそれどころじゃないです!
 リシテアさんが怒って風の魔法を手に溜めてるので、そっちどうにかしてください!


***
 

 本が読めてしまえば、あとはそんなに難しくない。
 なるほど、光属性は人にも発現するけれどそれほど多くない、亜人と呼ばれる種に発現しやすいと……。
 亜人……ね。
 私は物心つく前から孤児院で暮らしていた。
 施設長のアンナさんの話によると、私は孤児院の前に捨てられていて、両親とも不明なままだと聞いた。
 ここに来てからやたらと執着される髪色も、近隣にそういった髪の人物はおらず、私の血縁者らしき人も今日こんにちまで特定されていない。
 ──もしかして、私って亜人なの?

 いけない、自分の属性が気になって、つい光属性から調べてしまった。
 続きはまた後からにしよう。
 えっと、四大属性……。
 火、水、風、土──これが魔法の基本。

 火は攻撃特化。もっとも使い手が多い属性か。
 ただし、極められるのはその中でも一握りの才のあるものに限られる。
 ユリウスさんは、なんだか火属性な気がする。
 赤い魔力が見えたし。

 次は水だ。回復魔法に特化している……イメージ通りね。
 これも使い手は多いが、医療魔法として特に需要が高い属性か。
 火属性と同じく、水属性も極めるのは難しいみたい。
 
 次は風。風属性は行動補助や生活補助に応用される魔法が多い。
 移動速度を早めたり、空を飛んだり、極めると大きなものでも浮かせたりできるという。
 空を飛べるとか、超かっこよくない⁉︎
 私、光よりも風の方が良かったなー。
 
 土は防御に向いている。
 壁を作ったり、鎧のように身に纏って守ったり。
 極めたものは、物体を創造することも可能だとか。

 これら、四大属性はもっとも発現者が多い属性。
 基本となる四つの属性……だから四大属性っていうのね。

 次は特殊な属性。
 光と闇──光はさっき少し読んだ。
 特殊なんだ、光って。

 光は詳細はわかっていないところもあるが、事象に関与する魔法とも言われている。
 水と同じく回復に傾倒している面もあり、水属性では不可能なラウンドやグランドの付与も可能。
 ……また謎の言葉が出てきた。
 私が所長にスカウトされたのって、光属性の研究を進めたいからなんじゃなかろうか。

 闇属性か。光と対をなす属性。
 人の使い手は極めて稀だが、亜人にはさほど珍しくない。
 また亜人……。
 闇は火に次ぐ攻撃特化属性で、他の属性魔法との相性はよくない。
 創造神デオの加護を乗せられることが、魔の属性との大きな違い。
 加護って何ぞや。

 次はもっとも希少な聖と魔の二つの属性。

 聖は奇跡を起こす属性で、この力を持つ者は男であれば勇者、女であれば聖女として称えられる。
 そしてこの属性を持つ人は、時代の転換期に現れるとも言われている。
 ユリウスさんが勘違いしたのはこの属性か。
 聖女とか重すぎるし、こっちじゃなくて良かったよ。

 魔は人や亜人のような人間には発現しない。
 魔族のみが発現する属性で、この属性を極めたものは魔王となる宿命を持つ。
 勇者とか、聖女が出てきて御伽みたいに思っていたけど、魔王もいるんだ……。
 詳細は使い手がいないから不明みたいだけど、過去に人間と交友を持った魔族の協力で、攻撃に優れていてデオの加護は乗せられないことはわかっているらしい。


 複数の属性持ちなんてのもあるんだ。
 人は生まれつき複数の属性を持っている場合の方が多いのね。
 その場合は、どれかの属性能力が高く、副属性として他の属性を持つんだとか。
 私も光以外に何かの属性を持ってたりするのかな?
 極めるのは単一属性の者にしかできないので、複数の属性を持つ場合は器用貧乏で終わることも多いらしい。
 すごい才能の持ち主かと思ってたら違うんだ。

 相反する属性についても書いてある。
 火と水、風と土、光と闇、聖と魔──これらが相反する属性の組み合わせで、対となる属性の魔法は覚えられない……つまり、光と闇が両方備わって最強に見えることはないと。
 そんなことしたら、頭がおかしくなって死にそうだもんね。
 それ以外は、自分の属性じゃなくても中級魔法までは頑張れば使えるようになるんだ。
 自身と対となる属性じゃなければ、例えば私なら闇属性は無理だけど、火とそれに対をなす水の魔法は覚えられると。
 ここでも複数の属性を持つ人は不利なんだ。
 対となる属性が単一属性の人より一個多くなっちゃうんだね。

 範囲指定と加護。
 さっきからちょいちょい出てきてたやつだ。

 ワイドは、前方に見える扇形の範囲が対象。
 ラウンドは、指定した円の範囲内が対象で、グランドは、指定した広範囲に魔法をかけることができる。
 ラウンドとグランドは付加することで魔法名が変わり、初級魔法と同じ名前になる。
 例として、ヒールの最上位はリザレクションで、ラウンドやグランドを付加した場合はラウンドヒール、グランドヒールとなる。
 名前は初級魔法と同じヒールとなっても、内容はリザレクション……頭がこんがらがるな、この辺は……。
 
 加護について。
 代表的なものでは、創造神デオの加護を乗せることで、魔法の威力の底上げが可能となる。
 これは信仰によるもので、デオ以外の加護も乗せられることが、これまでの研究でわかっている。

 髪色と魔力の関係。
 髪の色が赤に近ければ近いほど、魔力が高いことがわかっている。
 そういえば、研究所内に赤っぽい髪の人が何人かいたな。
 所長とユリウスさんも赤っぽい感じの色だし……リシテアさんはブロンドだけど。
 私の桃色も、赤に近いといえば近いか。
 ちゃんとトリートメントして大事にしよう。

 まだ半分も読み終わってないのに、もう夕方か。
 気づいたら、リシテアさんもユリウスさんも帰っちゃったみたいで、部屋には私一人だった。
 こんなに夢中で本を読んだのって、小さい頃に読んだ童話の本以来なんじゃないかな。

「その本はどうだったかね?」

「所長、お疲れ様です」

「あまりに夢中なようだったので、声を掛けずにいたが、そろそろ帰る時間だ」

「とても勉強になりました!
 この本、借りて行ってもいいですか?」

「構わんよ。じゃあ、暗くなる前に気をつけて帰りなさい」


 その晩、私は本を読みながら眠りについた。
 夢の中で私は大魔導士となって、空を飛んだり魔法を撃ったり、目から怪光線を出したりしていた。
 怪光線はいらなかった。
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