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第20話
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「……ただいま戻りました」
屋敷の玄関をくぐった時、俺は心地よい疲労感に包まれていた。
初めてのデート。初めての手繋ぎ。
隣には、満足げな顔をした英雄がいる。
こんな幸せな時間が、これからもずっと続くのだと思っていた。
「ああ。……楽しかったな、薫」
ガルド様が帽子を取り、愛おしそうに俺を見た。
「君の笑顔を独り占めできた。……これ以上の幸福はない」
「大袈裟ですよ。また行きましょ……う……」
言葉が、続かなかった。
急に、世界が歪んだ。
地面が斜めになり、天井が回転する。
「……え?」
足に力が入らない。
泥の中に沈んでいくような感覚。
俺の体から、何かが「抜け落ちていく」ような。
「……か、おる……?」
ガルド様の声が、水の中にいるように遠く聞こえる。
俺は助けを求めようとして、手を伸ばした。
「ガル、ド……さ……」
指先が触れる直前。
プツン、と。
俺の意識は、唐突に暗転した。
「薫ッ!? おい、薫!!」
遠くで、獣のような絶叫が聞こえた気がした。
屋敷の玄関をくぐった時、俺は心地よい疲労感に包まれていた。
初めてのデート。初めての手繋ぎ。
隣には、満足げな顔をした英雄がいる。
こんな幸せな時間が、これからもずっと続くのだと思っていた。
「ああ。……楽しかったな、薫」
ガルド様が帽子を取り、愛おしそうに俺を見た。
「君の笑顔を独り占めできた。……これ以上の幸福はない」
「大袈裟ですよ。また行きましょ……う……」
言葉が、続かなかった。
急に、世界が歪んだ。
地面が斜めになり、天井が回転する。
「……え?」
足に力が入らない。
泥の中に沈んでいくような感覚。
俺の体から、何かが「抜け落ちていく」ような。
「……か、おる……?」
ガルド様の声が、水の中にいるように遠く聞こえる。
俺は助けを求めようとして、手を伸ばした。
「ガル、ド……さ……」
指先が触れる直前。
プツン、と。
俺の意識は、唐突に暗転した。
「薫ッ!? おい、薫!!」
遠くで、獣のような絶叫が聞こえた気がした。
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