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vs. 過去の女。

黒いあんちくしょう。

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「あの女個人にも、組合出てく前にちょっとした嫌がらせ仕掛けといたし」

特定の人にとっては、死ぬほどイヤかもしれない、ちょっとした呪いを、な。
ふふふふふ。

私が、にたあ……と笑っていると。

「……具体的に、何ヤラかしたか教えろ」

おやじ殿、ちょっと落ち着いたらしい。
ぎゅうぎゅう締めあげていた腕をゆるめてくれた。
まぁ、まだ目はどっかりと床に座り込んだみたいになったまんまだけど、な。

周囲の組合員達もサワサワしている。
え?
そんなに気になる?
……それでは。
私があの女冒険者に、こっそり仕掛けた呪いの詳細をば……。

「何故かしら……。イヤな予感しかしないわ」

話す前から、おねーさまがドン引いている。

やだな~。
気が早いぞ?
ふふふふふ。

私は全開の笑みを浮かべて、話し始めた。

「1日に最低でも一回、いろんな大きさの各種『御器被り』に接近遭遇します。家庭内害虫の、黒くて素早いあんちくしょう、な」

たまに茶色いのも混じってるよね~。

そう軽~く言ったところ。
組合員達が顔色を変えてザワめいた。

「……接近遭遇?」
「え、物理的に?」
「幻覚じゃなくて?」
「いろんな大きさって……そんなにデカいのは、街中にゃ居ないだろ?」

……居るかもよ?

ニヤニヤしながら、私は更に具体的に語ってみた。

「朝、目覚めてすぐ枕元に。道を歩いていて、ふ、とした拍子に。入浴中に、ふ、と壁に目を向けたそこに。寝ようとして布団をめくったそこに。……いつ、どこに、どんな風に湧いて出るのか分からない。絶妙に、視界の隅っこを横切って。……ああ、今日は見なかった……と、気を抜いたところに。そっと這い寄り寄り添うように……」
「「「止めろーっ! 想像するだろーっ!?」」」

その場に居た全員が、嫌そーに叫んだ。
老若男女、一切区別なく。

……えー?

おやじ殿は、スッゴい良い笑顔で。
でかした! と、いわんばかりに拳を握って親指立ててる。
私も同じ仕草をおやじ殿に返した。
良い笑顔で、な。

「……地味だけど、イヤな呪いがまた1つ、か……」

おにーさまがコメカミに指先を当て、首を左右に振っていた。
ん~。
やっぱり好き嫌いハッキリ出るよね、御器被りって。

「「「アレが好きなヤツなんか、どこにも居ねぇよっ!」」」

なにも、みんな仲良く声を揃えて叫ばなくてもいいと思う。
うん。



「……コール。アンタだってイヤでしょう? 家庭内害虫なんか……」
「すでに家庭内の範囲を逸脱してるんじゃないかの……?」

おねーさまと組合長が、ゲンナリしている。
本気でイヤそーだ。

……え、私?

「生きてそこに居る……って事実の方がイヤだから、見かけたら即行潰すけど」

生かしちゃおかねーよ?

サラッと言ったら、その場に居た半数は私と同意見だったらしい。
うんうん頷いている。

残りは──。

「え、ヤダよオレ。触りたくない……」
「おれ速攻逃げる」
「……ヤツら飛ぶじゃん。飛んでくるじゃん。……コール、そんな時どーすんだ?」

え、また私?

「叩き落として踏み潰す」

きっぱり。

「あ、実際やってたな」

おやじ殿も証言。

うえ~……とさわさわするおっさんども。
少数の姐さん達ならともかく。
おっさんがナニ言ってんだか。







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