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8 静かなる番犬

3 教えてあげるね

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「でもでも、ギンガくんさぁ……」

「お次はなんだ」

「ボクはキミが思ってるほど清くないよ? 今だっていろんな人と付き合ってるんだよ? ……それでもいいの?」

「複数交際を不純だと? 世界にはもっと合理的で多様な恋愛観が存在するぞ。細かい事をとがめたところで争いの種が生まれるだけだ」

 ああ言えばこう言う。
 彼の心が揺らぐことは決してなさそうだ。
 ここまで言ってくれるのなら、受け入れてあげなきゃかわいそうかな、という気持ちになってきた。

「だが、覚えておけ。お前はいずれこの私だけを選ぶ運命にあるということを」

「……はいはい」

 もう笑うしかない。


「さあ、トキ。私たちはこれからどこへ向かおうか」

「決めてないの?」

「ああ」

 どおりでさっきから同じところをぐるぐるしているわけだ。
 勢いで飛び出してきたはいいけど、無計画。マシューくんはまだ来てないみたいだけど、これでは遅かれ早かれ捕まってしまう。

「……しょうがないなぁ」

 ボクは一応“人質”みたいだけど、知恵を貸してあげることにした。
 彼の耳元で吐息まじりにしっとりとささやく。

「マシューくんを味方にする方法、一つだけあるの。トクベツに教えてあげるね……」


 ◆ ◆ ◆


 普段の授業ではほとんど使われない教室がある。もともとは音楽室だったらしい。壁は厚く、扉は防音、カーテンは遮光。内側から鍵だってかけられる。
 “アレ”をするのにはもってこいの場所。


「くっ、首は……やめて……、目立っちゃう……」

 机の上で重なり合い、互いの体を求めた。

「……やっ! ダメだって、言ってるのにっ……!」

 ギンガくんの唇が首筋に吸い付く。何度も何度も。その音はわざとらしいほど大きい。鼓膜にまで振動がつたわってゾクゾクした。

「お前は既に私のものだ」

 暗闇の中でボクの体を弄ぶ彼は、別人かと思うくらい冷酷だ。鋭利な刃を突きつけられた感じがして、ボクは思わずすくんでしまう。

「ちょ……、待って……!」

 あまりに迫真すぎて、なんだか怖くなってきた。

「拒否する権利は無い」

 彼の方は一切動じない。抵抗しようとするボクの口を塞ぐと、手荒に服を脱がせてくる。

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