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第1章
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しおりを挟む「__私が恐ろしいか?」
少しの沈黙の後、男がゆっくりと言った。
「______いえ」
ギシィィ
腰のあたりのスプリングが大きく軋んだ。沙也加の喉がひゅっと鳴り、グッと身体を強張らせた。
「その割には、酷く怯えている様に見えるが。・・・身体に聞いてみるか?」
男の大きな手の平がゆっくりと首筋を撫でた。ビクつく身体に落ち着けと何度も繰り返すが、男の手が離れ、また触れる時にはぴくりと身体を揺らしてしまう。
「どうした?身体の方が正直の様だな」
「少し、寒いだけです」
沙也加は真っ暗な中何をされるか分からない恐怖で、五感が通常よりも鋭くなってしまっていた。男の熱や呼吸、煙草の臭いまで全ての情報が脳に伝わってくる。
カチ。カラカラ___、ズズ。
また何か聞こえる。無意識に喉がごくりとなった。
沈黙の中、男の服が擦れる音が聞こえた。次の衝撃に備えて唇を噛みしめ、ぎゅっと目を閉じると急に息が出来なくなった。鼻を摘ままれてしまい咄嗟に口を開くと、唇が塞がれた。解放された鼻からは勢いよく空気が入ってくる。
「んんん」
口内に生温い水が入ってくると、反射的にごくりと飲み込んでしまった。変な薬かもしれない・・・。一瞬恐ろしい事が頭を過るが、舌を吸われて我に返った。
くちゅくちゅと音を立てて舌が入ってくると我が物顔で口内を弄ってくる。
「あ、はあ___、もう」
やめてという言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。がりっっと唇を噛まれて痛みで顔をしかめた。男は噛んだ唇を放そうとはせずに、ちゅうちゅうと緩急をつけて吸いついてくる。
「いやっ」
顔を背けるとグッと両手で顔を捕まれて、また熱い舌が入ってきた。生臭い鉄の味がした。
それからどのくらい時が経っただろう。男はまるで吸血鬼の様に唇の血を舐めとっては、口内でじっくりと味わう事を繰り返した。
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