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第1章
5
しおりを挟む男は満足した様に喉を鳴らして離れた。
「美味かったか?」
「いえ。もっと普通に頂けると幸いです」
「生意気だな。他の女は泣いて喜ぶぞ?」
「私を不特定多数に含めないで頂けると幸いです」
「___なんだその他人行儀な話し方は」
「私は、貴方の名前も顔も存じ上げておりませんので」
いつになく強気になってしまったのは、自分でも不思議だった。
「・・・貴臣だ」
「たかおみ?」
「貴臣様と呼ぶんだ」
「・・・嫌です」
ガバっ__
ようやく目が暗闇に慣れてきて、部屋の様子を見ようと思っていた矢先だった。
「お前。私が何時までも優しいとでも?」
ベッドに腰かけていた影が覆いかぶさってきた。これ以上キスされると唇の感覚が無くなってしまいそうで怖い。きゅっと目を閉じると、息のかかる距離で貴臣の動きが止まった。少しでも動けば唇が触れてしまいそうで、呼吸も出来なくなる。ククと押し殺した笑いが聞こえ、また姿が遠のいた。
次の瞬間に顎をぐっと押される体勢になり、背中をのけぞる。
「お前の首筋は甘い匂いがするな」
無防備な首元に貴臣の顔が寄せられていた。敏感になった首筋に息がかかるだけで、何だかむず痒い気持ちになる。
ちゅう、と啄ばむ様なキスが喉元に落とされた。一度ではなく何度も何度もくすぐるように唇が触れる。両腕に鳥肌が立ち、こんなにも首筋が弱いんだと痛感した。その様子に気付いたのか、今度はべろりと鎖骨から顎のラインまで一息に舐められる。舌が通った所が空気に触れてスースーと冷たくなり、貴臣の跡を感じた。思わず声が漏れてしまいそうになり、咄嗟に二の腕に顔をうずめる。
「なんだ、そんなに首筋をあらわにして・・・。もっと__食べてくださいと言わんばかりだ」
はあ、と熱い吐息が聞こえチクっとした痛みが走る。ちゅぱ、ぺろぺろと吸い付いては舐めてと貴臣の愛撫が少しずつおりていく。
「やっ、痕つけないで。お願い・・・」
「何故お前の願いを聞いてやらねばならないんだ。お前は私のオモチャだぞ?」
「ぇ・・・、や、だめっ」
貴臣に無防備な首筋を荒々しく噛みつかれ、小さなうめき声が漏れた。
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