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第2章

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「腹違いの兄弟?」

「そう。僕と貴兄の間にはもう一人”司兄”がいて、三人兄弟なんだ。貴兄のお母さんは貴兄が十歳くらいの時に亡くなったみたいで、僕と司兄とは腹違いの兄弟。だけど僕らのお母さんは凄く・・・、奔放な人でね。僕が生まれてからしばらくして離婚しちゃったんだ」

「___そっか。匠くんも大変だったんだね。なんか・・・、ぐすっ」

「えっ? どうしてさや姉が泣くの」

 話をする匠の笑顔が無理してるのがわかる。沙也加は過去の自分と重ねてしまって涙が零れた。母は私を育てるために働き詰めで、学生の頃は行事に来てくれるのがおばあちゃんばかりで寂しい気持ちになっていた。きっと色んな思いが吐き出されずにこの小さな体に詰まっているのだと思い、沙也加は匠をぎゅっと抱き締めた。

「どうしたの。・・・僕は、平気だよ」

 涙が止まらない沙也加に匠は小さく笑い、抱き締められながら優しく背中を撫でた。



 抱き合って数分が過ぎ落ち着いてきてから、沙也加は急に恥ずかしくなってきた。年下相手に泣いているのを慰められるなんて・・・顔上げられないよ。

「さや姉、泣き止んでるでしょう?」

 腕の中で匠がそう言うと、図星で何も答えられない。無言で手を放し俯くと、匠に顔を捕まれて覗き込まれる。

「はははっ。すごい顔だよ」

 赤くなった鼻と朝青龍のように寄せられたほっぺで、何時もの五割増しで不細工になっている沙也加を見て匠は笑った。匠の手は外そうにも力が強くて外せない。そんな攻防戦に更に匠は楽しそうに笑いながら、瞼にキスをした。

「さあ、ケーキタイムだよ」





 匠に用意してもらった氷で顔を冷やしながらケーキを食べていると、またスマホが鳴った。


――メッセージ――

どうせ進まないんだろう。
小説の様にストーリーを書くだけでいいぞ。
企画書をお前に期待などしていない。

貴臣  11:18
――――――――――


「やや、やばい! やらなきゃ」

「どうしたの?」

「今日からちゃんと仕事でね。富豪との恋愛ストーリーを書かなきゃいけないんだ」

「そうなんだ。どんなの書く予定なの?」

「うーん。富豪と一般女性の恋なんだけど・・・、メイドとして一つ屋根の下で過ごすことになってみたいなのはどうかな?」






「いいんじゃない。でもそれって・・・、まるで貴兄とさや姉みたいだね」


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