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第3章

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 声の方を見上げると青年が立っていた。

「痛そう。今はこれしかないんだけど、よかったら使ってください」

 そう言って手渡されたのは、綺麗にたたまれたチェック柄のハンカチだった。

「あ・・・、ありがとうございます」

 ぼーっとしていた所為で返事が遅れてしまった。ただ単にぼけっとしていたわけではなく、青年が見とれてしまう程整った顔立ちをしていたからだった。

 くっきりとした目鼻立ちに黒髪はセットせずとも自然なままで似合っている。年齢は大学生くらいだろうが、凄く大人びていた。この時期なのに焼けた肌と顔立ちとの相乗効果で、アジアンな雰囲気が漂っていた。

「痛みますか?」

 無言の沙也加を心配して、屈んだ青年はそのままハンカチを足首に結んでくれる。青年が動くたびにふわりとバニラの甘い香りがした。

「これで少しはマシですかね?」

「え、あ、はい。ありがとうございます」

 青年が八重歯を見せて小さく笑うと、つられて沙也加も笑った。すると青年は眉をひそめて、何かを思い出したように沙也加を見据えた。

「___貴女、お名前は?」

「あ、はい。水谷です。水谷沙也「司様! こんなところで何をされてるんですか?!」

「・・・やあ、青木さん」

 名乗ろうとした時、廊下の向こうからバタバタと男の人が青年目がけて走ってきた。ぴしりとスーツを着た男性は今時風のしっとりとした髪型にクラッチバッグを片手に、はあはあと肩で息をしていた。

「スケジュールは一杯です。早く次に参りませんと」

「ああ、そうだね。・・・またお会いしましょう、沙也加さん」

「はあ」

 沙也加の間の抜けた返事は、青木という男に連れて行かれる青年には届かなかった。



「・・・司さん? なんかどこかで聞いた気が「おい」


 聞き慣れた低い声が響く。




「お前が行方不明だと聞いた。何さぼっている」


 後ろで貴臣が腕組みをしながら壁にもたれていた。


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