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転移の念と新たな仕事
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竜の島に到着した和人達はまず宿泊施設に案内されて向かうようだ。
移動中に島の観察をするが、俺の想像する遊園地のような電飾煌びやかな施設は無い。
代わりに各所に迷路やダンジョンといった人工的に作られたものが点在している。
遊園地は遊園地でも自然を満喫しながら楽しむレジャー施設とかアスレチック公園という感じだ。
ただ、その作られた施設を見るとどう見てもただじゃ済まないようなものばかりなんだよな。大丈夫なのか?これ。
宿泊施設で一晩過ごした一行は完全武装で火竜の領域に向かうようだ。
この島は南に入り口があり、そこは水竜の領域で北にも同じような縦長の領域がある。
南西には火竜の領域、北西には風竜、北東には氷竜、南東には地竜の領域があり、それぞれを領域を分けるかのように南北直線状に水竜の領域、それと十字に交わるように東西直線状に雷竜の領域がある。
そして水竜と雷竜の領域にはそれぞれ宿泊施設のようなものがあり、島の中央の山に竜人の屋敷と社がある。
一行は進みながら襲い掛かる小型のドラゴンを蹴散らしていく。
ドラゴンは倒されるとスッ何も残さず消滅する。
こっちのドラゴンはそういう生態なのか?変わってるな。
そのまま進むと分岐と謎かけ文があるようで、一行は悩んだ挙句選んだ道を進む。
進んだ先には大きなドラゴンが待ち構えている。どうみてもハズレだよな。
一行は逃げる事もせずそのまま大ドラゴンと戦闘開始。
大ドラゴンが口を開いたかと思ったら灼熱のブレスが一行を消し炭にした。
「え!?ちょ!?」
さすがにこの事態には焦った。即死!?
「落ち着いてください。最初の宿泊施設の方に転送されています」
動揺する俺にサチが冷静に教えてくれる。
良く見ると出発した宿泊施設の前に一行が無傷で倒れている。
「どういうことだ?」
「解析したところ、現在この島全体に特殊な魔法が発動しているようです」
「詳しく」
その日はそのまま宿で休む一行を眺めながらサチの話を聞く。
どうやら入場口を通った時点で島全体に展開している魔法陣が起動して、島が特殊な空間に変化するらしい。
その効果は重傷や死亡といった状態になると指定された場所に強制転送されるというもの。
そういえばオアシスの街にも似たような機能をしたものがあったな。
「先ほど和人達が倒した竜も転送されています」
先ほど倒された小型のドラゴンが倒された場所から離れたところで地団駄踏んでる姿が確認できた。悔しがる姿が少し可愛い。
「つまりこの魔方陣が発動している間は不死身になるのか?」
「そう言う事になります」
なるほどねー。
この竜園地を作ったのが勇者だと言うことを再確認させてもらった感じがする。
つまり勇者はリアルゲーム世界をこの島で作り上げたわけか。良く考え付くなぁ。
「魔法陣は入場者が入場口から出ると解除されます」
「攻略するか諦めると普通に竜の島に戻るわけだな」
「そういうことです」
はー・・・凄いなぁ。
「現在和人達が滞在している施設の裏手に山へ通ずる門がありますが、あそこを通るには水と雷を除く四領域の印が必要とされています」
「なるほど」
まとめよう。
現在この島は特殊な魔方陣の影響で行動不能になっても復活できる仕様になっている。
和人達の目的は中央の山に行き、この竜園地をクリアすること。
クリアするには島の各領域の印が必要なので実質一周する必要がある。
「序盤からあれだと結構厳しいんじゃないか?」
「どうでしょうか。ソウの方がその辺りの感性があると思いますが」
「うーん、そうだなぁ。日数かけて慎重に攻略していけばやれなくないぐらいかなぁ」
見た感じ適当にごり押ししようとすると痛い目を見るが、ちゃんと用意されたものをこなせば進めるようにはなってると思う。
折角作ったのに全部やってもらえず帰られると寂しいしな。多分その辺りは上手く作ってあると信じたい。
「しかしそこまでして和人達が頑張る理由はなんだ?」
「中央の山の社で貰えるお守りが目的のようですね」
「お守り?」
「はい。あらゆるヤクを払い、ムビョウソクサイが約束されるものらしいです」
「へー」
「あの、ヤクとかムビョウソクサイというのが良く分からないのですが」
「あぁ。厄ってのは降りかかる不幸だな。無病息災は平和に元気でいられるって意味だ」
「なるほど」
「で、実際その効果はあるのか?」
「ソウの加護に比べると微々たるものですが、あるようです」
「そうか。じゃあ信者が持ったら効能があがるようにちょっと協力しとくかな」
追加効能は・・・そうだな、厄払いという意味でいわれの無い悪意が向き難くなるようにしよう。
条件は信者である事、手にした本人である事、後に信者になっても効果が出る事。ぐらいでいいか。
承認すると社が一瞬ぼんやり光って直ぐ元に戻る。
あとは和人達がどれだけ頑張れるかだな。
日数掛かりそうだし、他の場所を見ながら状況を確認することにしよう。
サチが仕事の片付けをしている間にちょっと意識を集中してみる。
いつものように確認するだけの作業だが念を使う下準備だ。
今日はちょっとある事が出来るかどうかの確認をしている。
・・・確認結果、微妙。
微妙って珍しいな。難しいってことか。
「ふーむ」
「どうしました?」
片付けながらサチがこっちを向かずに聞いてくる。
「いや、いつもサチに転移してもらってるだろ。あれって俺も出来るのかなーって思って確認したら出来るのか出来ないのか良く分からない感じでさ」
「転移の念ですか。かなり難しいですよ」
「そうなのか?」
「はい。私も今の精度まで上げるのに結構頑張りましたから」
「なるほど。サチは努力家だな」
「そ、そんなことはないですよ。主神補佐官として当然の事をしただけです」
照れてる照れてる。
「それで、何が聞きたいのですか?」
機嫌がよくなったのか片付けた後に俺が座ってる膝の上に座ってきた。
「転移の念についてかな。ちょっと特殊っぽいし」
サチの胸の下辺りに腕を回して引き寄せながら聞く。
「そうですね、他の念と比べると少し特殊かもしれないですね」
んー・・・と少し考える様子で俺に背中を預けてくる。ちょっと俺より体温が高くて温かい。
「転移に必要な事は転移物の把握、転移先の座標、後は他と同じように集中力やマナですかね」
「ふんふん」
「特に重要なのが転移物の把握ですね。以前初めてソウと転移した時大幅に座標がずれた時がありましたよね」
「あーあったね、そんな事も」
あの時は突然の状況に振り回されてたな。懐かしい。
「転移物の把握が不完全ですと転移先の座標に狂いが生じてあのようにずれた場所に転移してしまいます」
「じゃあ下手すると空中とか土の中とかになったりするのか?」
「そこは大丈夫です。どういうわけか転移先は必ず地面の上になりますので」
そうなのか。これも上位天使の空間の謎の一つかな。
「それに転移の念は頻繁に座標のずれが発生します」
「そうなの?」
「はい。ですので転移場所は基本的に開けた場所になっています」
あー、言われて見れば転移した先はそれなりの空間が確保されてる場所ばかりだな。
「また、転移場所以外から転移すると精度が落ちやすいので近場の転移場所へ戻ってから転移するよう推奨されています」
なるほど。便利な念だと思ってたが結構制約が多いんだな。
「ふーむ、難しそうだなぁ」
俺にはまだ扱い切れそうにない。特に転移物の把握というのが出来ない気がする。
「そうなんですよ。使える人自体少ないですから」
「そうかー」
「少ないのですよ?」
上を向いてこっちに何か主張してくる。褒めろってことね。
「あぁ、うん、そうだな、サチは凄い」
「そうでしょうー」
頭を撫でてやると満足したように脚をパタパタと動かしてる。
ふむ。せめてここと家の間だけでも行き来できればと思ってたが、まだまだサチ頼みになりそうだ。
「あの、ソウ、もう大丈夫ですよ?」
いけね、考え事しながら撫でてたら髪がボサボサになってしまった。
「今日はちょっと別の仕事があります」
「ん?別の仕事?」
帰ろうかと思ってたらサチからそんな話が出てきた。
「神力の収支もそれなりに安定してきていますし、浮遊島の召喚をして頂こうかと」
「え?なにそれ」
「私達上位天使の世界では浮遊島での生活が主体になっていますが、どうしても人の手が入らないと朽ちてしまう島が出てきてしまいます」
「うん」
「そこで新たに浮遊島を作り出す事をします」
「それが神の仕事?」
「そうです。前の神様の時は私が代理で行っていましたが、神力の低下もあって最近は行っていませんでした」
「ふむ。それで神力が戻ってきたから再開しようというわけか。でも何で俺がやることになってんだ?」
「折角なので」
「折角て。まぁいいけどさ、元々神の仕事なんだろ?」
「はい」
「んー、よくわかんないがやるしかないんだろ。色々教えてくれ」
「はい。では移動します」
転移してからサチに抱えられ結構な距離を飛んだ後、ある浮遊島に着地した。
「この辺りがいいですね」
視線の先には広範囲に渡って空と雲しかない場所。
「ここに新しく作るのか?」
「はい。では浮遊島作成の説明をします」
「うん、よろしく」
「やる事は簡単です。これに従ってソウの好みの浮遊島を設定してください」
サチから渡されたパネルには浮遊島の状態を決める設定画面が出てる。
範囲、大きさ、数、気温、湿度、寒暖変化の有無など色々あるな。
「なんか凄いな」
「範囲は私のほうで固定化していますので動かせません」
範囲ってのは召喚する範囲か。
「大体わかるけど数ってなんだ?」
「召喚する数ですね、造島師の島々がこの数を多くしたものと思ってください」
ふんふん、なるほど。
あそこは大きいのを一つと小さいのと数を多くしたのを合わせたものなんだな。
「サチはいつもどうやって作ってたんだ?」
「適当ですね」
適当ってそんな。結構大きな作業だと思うんだけどこれ。
うーん、でも初めてだしちゃんと設定したいなぁ。
「これ川とかの設定はないのか?」
「川は水の精次第でしょうか」
「水の精次第?」
「水の精がこの島を気に入れば島の石を精霊石に変化させます。そうするとそこから水が湧き出て川になります」
「なるほど」
うちの池や川は人口的に作ったものだが、あれと似たような感じで自然と出来る感じか。
「本来精霊石は活性化させなければ水は湧かないのですが、水や氷の精霊石は精霊の性格の影響なのか活性化しやすいので、大抵活性化した状態で発見されます」
「精霊にも性格があるのか」
「ありますよ。火や地は我慢強く、風や雷は気まぐれ、水や氷はいい加減といわれています。光は人が好きで、闇はよくわかりません」
「へー」
出来れば精霊に気に入ってもらえる島になればいいなぁ。
そう考えながら色々と設定をして、サチに渡す。
「これでどうだ?」
「はい、大きい島ひとつにしたのですね」
「うん。最初だしね」
「いいと思います。では召喚します」
サチがパパっと操作をすると仕事場で神力を使う時に出る承認ボタンが俺の前に出てくる。
「これ押せば?」
「はい、いつものように」
「わかった」
承認っと。
すると空が歪んで島が空から降りてきた。
まるで巨大な空間収納から島を取り出すみたいだ。
「おお・・・すげぇ・・・」
「いつ見ても壮観ですねー」
ゆっくりと降りてきた島はここという場所でぴたりと止まる。
新しく出来た島は全部が茶色の何も無い状態。
中央に小高い山があるけどそれ以外は特に何も無い、非常にシンプルな形をしている。
「この後はどうするんだ?」
「いえ、これで終わりです」
「え?植物とかは?」
「放って置けば自然と生えます。召喚直後は育ちが早いので数日すれば他の島と同じような見た目になると思います」
「へー。面白いな」
「そのうちまた頼むと思いますので、今度はどういう島にするか考えておいてください」
「わかった。それとまたここに連れてきてもらってもいいか?どうなったか見てみたいし」
「えぇ、経過の確認も必要ですからまた来ましょう」
どうなってるか楽しみだなこれ。
また一つこっちの世界の楽しみが増えた。
今度はどんな島にしようかなぁ。
移動中に島の観察をするが、俺の想像する遊園地のような電飾煌びやかな施設は無い。
代わりに各所に迷路やダンジョンといった人工的に作られたものが点在している。
遊園地は遊園地でも自然を満喫しながら楽しむレジャー施設とかアスレチック公園という感じだ。
ただ、その作られた施設を見るとどう見てもただじゃ済まないようなものばかりなんだよな。大丈夫なのか?これ。
宿泊施設で一晩過ごした一行は完全武装で火竜の領域に向かうようだ。
この島は南に入り口があり、そこは水竜の領域で北にも同じような縦長の領域がある。
南西には火竜の領域、北西には風竜、北東には氷竜、南東には地竜の領域があり、それぞれを領域を分けるかのように南北直線状に水竜の領域、それと十字に交わるように東西直線状に雷竜の領域がある。
そして水竜と雷竜の領域にはそれぞれ宿泊施設のようなものがあり、島の中央の山に竜人の屋敷と社がある。
一行は進みながら襲い掛かる小型のドラゴンを蹴散らしていく。
ドラゴンは倒されるとスッ何も残さず消滅する。
こっちのドラゴンはそういう生態なのか?変わってるな。
そのまま進むと分岐と謎かけ文があるようで、一行は悩んだ挙句選んだ道を進む。
進んだ先には大きなドラゴンが待ち構えている。どうみてもハズレだよな。
一行は逃げる事もせずそのまま大ドラゴンと戦闘開始。
大ドラゴンが口を開いたかと思ったら灼熱のブレスが一行を消し炭にした。
「え!?ちょ!?」
さすがにこの事態には焦った。即死!?
「落ち着いてください。最初の宿泊施設の方に転送されています」
動揺する俺にサチが冷静に教えてくれる。
良く見ると出発した宿泊施設の前に一行が無傷で倒れている。
「どういうことだ?」
「解析したところ、現在この島全体に特殊な魔法が発動しているようです」
「詳しく」
その日はそのまま宿で休む一行を眺めながらサチの話を聞く。
どうやら入場口を通った時点で島全体に展開している魔法陣が起動して、島が特殊な空間に変化するらしい。
その効果は重傷や死亡といった状態になると指定された場所に強制転送されるというもの。
そういえばオアシスの街にも似たような機能をしたものがあったな。
「先ほど和人達が倒した竜も転送されています」
先ほど倒された小型のドラゴンが倒された場所から離れたところで地団駄踏んでる姿が確認できた。悔しがる姿が少し可愛い。
「つまりこの魔方陣が発動している間は不死身になるのか?」
「そう言う事になります」
なるほどねー。
この竜園地を作ったのが勇者だと言うことを再確認させてもらった感じがする。
つまり勇者はリアルゲーム世界をこの島で作り上げたわけか。良く考え付くなぁ。
「魔法陣は入場者が入場口から出ると解除されます」
「攻略するか諦めると普通に竜の島に戻るわけだな」
「そういうことです」
はー・・・凄いなぁ。
「現在和人達が滞在している施設の裏手に山へ通ずる門がありますが、あそこを通るには水と雷を除く四領域の印が必要とされています」
「なるほど」
まとめよう。
現在この島は特殊な魔方陣の影響で行動不能になっても復活できる仕様になっている。
和人達の目的は中央の山に行き、この竜園地をクリアすること。
クリアするには島の各領域の印が必要なので実質一周する必要がある。
「序盤からあれだと結構厳しいんじゃないか?」
「どうでしょうか。ソウの方がその辺りの感性があると思いますが」
「うーん、そうだなぁ。日数かけて慎重に攻略していけばやれなくないぐらいかなぁ」
見た感じ適当にごり押ししようとすると痛い目を見るが、ちゃんと用意されたものをこなせば進めるようにはなってると思う。
折角作ったのに全部やってもらえず帰られると寂しいしな。多分その辺りは上手く作ってあると信じたい。
「しかしそこまでして和人達が頑張る理由はなんだ?」
「中央の山の社で貰えるお守りが目的のようですね」
「お守り?」
「はい。あらゆるヤクを払い、ムビョウソクサイが約束されるものらしいです」
「へー」
「あの、ヤクとかムビョウソクサイというのが良く分からないのですが」
「あぁ。厄ってのは降りかかる不幸だな。無病息災は平和に元気でいられるって意味だ」
「なるほど」
「で、実際その効果はあるのか?」
「ソウの加護に比べると微々たるものですが、あるようです」
「そうか。じゃあ信者が持ったら効能があがるようにちょっと協力しとくかな」
追加効能は・・・そうだな、厄払いという意味でいわれの無い悪意が向き難くなるようにしよう。
条件は信者である事、手にした本人である事、後に信者になっても効果が出る事。ぐらいでいいか。
承認すると社が一瞬ぼんやり光って直ぐ元に戻る。
あとは和人達がどれだけ頑張れるかだな。
日数掛かりそうだし、他の場所を見ながら状況を確認することにしよう。
サチが仕事の片付けをしている間にちょっと意識を集中してみる。
いつものように確認するだけの作業だが念を使う下準備だ。
今日はちょっとある事が出来るかどうかの確認をしている。
・・・確認結果、微妙。
微妙って珍しいな。難しいってことか。
「ふーむ」
「どうしました?」
片付けながらサチがこっちを向かずに聞いてくる。
「いや、いつもサチに転移してもらってるだろ。あれって俺も出来るのかなーって思って確認したら出来るのか出来ないのか良く分からない感じでさ」
「転移の念ですか。かなり難しいですよ」
「そうなのか?」
「はい。私も今の精度まで上げるのに結構頑張りましたから」
「なるほど。サチは努力家だな」
「そ、そんなことはないですよ。主神補佐官として当然の事をしただけです」
照れてる照れてる。
「それで、何が聞きたいのですか?」
機嫌がよくなったのか片付けた後に俺が座ってる膝の上に座ってきた。
「転移の念についてかな。ちょっと特殊っぽいし」
サチの胸の下辺りに腕を回して引き寄せながら聞く。
「そうですね、他の念と比べると少し特殊かもしれないですね」
んー・・・と少し考える様子で俺に背中を預けてくる。ちょっと俺より体温が高くて温かい。
「転移に必要な事は転移物の把握、転移先の座標、後は他と同じように集中力やマナですかね」
「ふんふん」
「特に重要なのが転移物の把握ですね。以前初めてソウと転移した時大幅に座標がずれた時がありましたよね」
「あーあったね、そんな事も」
あの時は突然の状況に振り回されてたな。懐かしい。
「転移物の把握が不完全ですと転移先の座標に狂いが生じてあのようにずれた場所に転移してしまいます」
「じゃあ下手すると空中とか土の中とかになったりするのか?」
「そこは大丈夫です。どういうわけか転移先は必ず地面の上になりますので」
そうなのか。これも上位天使の空間の謎の一つかな。
「それに転移の念は頻繁に座標のずれが発生します」
「そうなの?」
「はい。ですので転移場所は基本的に開けた場所になっています」
あー、言われて見れば転移した先はそれなりの空間が確保されてる場所ばかりだな。
「また、転移場所以外から転移すると精度が落ちやすいので近場の転移場所へ戻ってから転移するよう推奨されています」
なるほど。便利な念だと思ってたが結構制約が多いんだな。
「ふーむ、難しそうだなぁ」
俺にはまだ扱い切れそうにない。特に転移物の把握というのが出来ない気がする。
「そうなんですよ。使える人自体少ないですから」
「そうかー」
「少ないのですよ?」
上を向いてこっちに何か主張してくる。褒めろってことね。
「あぁ、うん、そうだな、サチは凄い」
「そうでしょうー」
頭を撫でてやると満足したように脚をパタパタと動かしてる。
ふむ。せめてここと家の間だけでも行き来できればと思ってたが、まだまだサチ頼みになりそうだ。
「あの、ソウ、もう大丈夫ですよ?」
いけね、考え事しながら撫でてたら髪がボサボサになってしまった。
「今日はちょっと別の仕事があります」
「ん?別の仕事?」
帰ろうかと思ってたらサチからそんな話が出てきた。
「神力の収支もそれなりに安定してきていますし、浮遊島の召喚をして頂こうかと」
「え?なにそれ」
「私達上位天使の世界では浮遊島での生活が主体になっていますが、どうしても人の手が入らないと朽ちてしまう島が出てきてしまいます」
「うん」
「そこで新たに浮遊島を作り出す事をします」
「それが神の仕事?」
「そうです。前の神様の時は私が代理で行っていましたが、神力の低下もあって最近は行っていませんでした」
「ふむ。それで神力が戻ってきたから再開しようというわけか。でも何で俺がやることになってんだ?」
「折角なので」
「折角て。まぁいいけどさ、元々神の仕事なんだろ?」
「はい」
「んー、よくわかんないがやるしかないんだろ。色々教えてくれ」
「はい。では移動します」
転移してからサチに抱えられ結構な距離を飛んだ後、ある浮遊島に着地した。
「この辺りがいいですね」
視線の先には広範囲に渡って空と雲しかない場所。
「ここに新しく作るのか?」
「はい。では浮遊島作成の説明をします」
「うん、よろしく」
「やる事は簡単です。これに従ってソウの好みの浮遊島を設定してください」
サチから渡されたパネルには浮遊島の状態を決める設定画面が出てる。
範囲、大きさ、数、気温、湿度、寒暖変化の有無など色々あるな。
「なんか凄いな」
「範囲は私のほうで固定化していますので動かせません」
範囲ってのは召喚する範囲か。
「大体わかるけど数ってなんだ?」
「召喚する数ですね、造島師の島々がこの数を多くしたものと思ってください」
ふんふん、なるほど。
あそこは大きいのを一つと小さいのと数を多くしたのを合わせたものなんだな。
「サチはいつもどうやって作ってたんだ?」
「適当ですね」
適当ってそんな。結構大きな作業だと思うんだけどこれ。
うーん、でも初めてだしちゃんと設定したいなぁ。
「これ川とかの設定はないのか?」
「川は水の精次第でしょうか」
「水の精次第?」
「水の精がこの島を気に入れば島の石を精霊石に変化させます。そうするとそこから水が湧き出て川になります」
「なるほど」
うちの池や川は人口的に作ったものだが、あれと似たような感じで自然と出来る感じか。
「本来精霊石は活性化させなければ水は湧かないのですが、水や氷の精霊石は精霊の性格の影響なのか活性化しやすいので、大抵活性化した状態で発見されます」
「精霊にも性格があるのか」
「ありますよ。火や地は我慢強く、風や雷は気まぐれ、水や氷はいい加減といわれています。光は人が好きで、闇はよくわかりません」
「へー」
出来れば精霊に気に入ってもらえる島になればいいなぁ。
そう考えながら色々と設定をして、サチに渡す。
「これでどうだ?」
「はい、大きい島ひとつにしたのですね」
「うん。最初だしね」
「いいと思います。では召喚します」
サチがパパっと操作をすると仕事場で神力を使う時に出る承認ボタンが俺の前に出てくる。
「これ押せば?」
「はい、いつものように」
「わかった」
承認っと。
すると空が歪んで島が空から降りてきた。
まるで巨大な空間収納から島を取り出すみたいだ。
「おお・・・すげぇ・・・」
「いつ見ても壮観ですねー」
ゆっくりと降りてきた島はここという場所でぴたりと止まる。
新しく出来た島は全部が茶色の何も無い状態。
中央に小高い山があるけどそれ以外は特に何も無い、非常にシンプルな形をしている。
「この後はどうするんだ?」
「いえ、これで終わりです」
「え?植物とかは?」
「放って置けば自然と生えます。召喚直後は育ちが早いので数日すれば他の島と同じような見た目になると思います」
「へー。面白いな」
「そのうちまた頼むと思いますので、今度はどういう島にするか考えておいてください」
「わかった。それとまたここに連れてきてもらってもいいか?どうなったか見てみたいし」
「えぇ、経過の確認も必要ですからまた来ましょう」
どうなってるか楽しみだなこれ。
また一つこっちの世界の楽しみが増えた。
今度はどんな島にしようかなぁ。
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この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
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