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90話 セシルが仲間に
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応接間にやって来たのは商業ギルドのギルドマスターと、その隣には冒険者ギルドマスターであるゼミラさんがいた。
「1週間弱ぶりだな、コウガ」
「ゼミラさん!?どうして商業ギルドに!?」
「ついさっきまでここでサンビーク長会議をしていた所でな、終わった時にコウガが来ていると聞いてついてきたんだ」
「そ、そうだったんですか……」
「なるほど、2人は知り合いなんだな」
初めて見る商業ギルドマスターがゼミラさんに問い掛ける。
「あぁ、ノイシュ開催の武闘会推薦枠をこのコウガ達に渡したんだよ」
「そうだったのか、なるほど。よく見たらミツキまで居るじゃないか!久しぶりだな」
「お久しぶりです、サーロインさん」
ミツキとは知り合いみたいだな、その商業ギルドマスターの名はサーロインと言うようだ、何だかお腹が空いてくる名前だな……肉が食べたくなるね。
ギルドマスター2人が俺達の座っているソファーの対面に座る。
「改めて初めまして、商業ギルドマスターをやっているサーロインだ、よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします、コウガです。こっちの狐人族がセシル、猫人族がシェミィです」
「よ、よろしく頼みます……」
「ん!よろしく」
「……ん?ちょっとまて!」
お互い挨拶を交わした所でゼミラさんからstopが入る。
「どうしました?」
「今、シェミィと言ったか?確かストームキャットの名がシェミィだったと記憶しているのだが……」
ゼミラさんは愛くるしい猫人族姿のシェミィを見る。
「シェミィ」
「ん!」
シェミィは俺の影に入り、そしてストームキャットの姿のシェミィへと変わって飛び出す。
「な……なんと」
「ほぅ……!」
ゼミラさんはびっくりしたようで目を見開いている、サーロインさんも物珍しく見ていた。
「まさか人の姿にもなれるようになっていたとは……驚いたな」
シェミィは自分の姿の見せ付けてから、また影に入って人型の姿になる。
「ん、驚いた?」
「あぁ、驚いたとも!変身……いや、擬人化と言うべきか?そんな事もあるのだな……」
普段クールな面持ちであるゼミラも、これには驚きを隠せないようだ。
「ゼミラ、驚くのも分かるが、そろそろ本題に……」
「あぁすまない、私は聞くに徹するから始めてくれ」
ゼミラはソファーの背もたれに背中を預ける。
「さて、セシル君の借金についてだが……PTの借金と聞いているが、君達のPTが借金を?」
「いや、マス……コウガ達は関係ないです」
「では、前のPTでの借金を?」
「はい……実は」
前PTでの出来事やクリスタの起こした事件、そして呪われた刀の話をした。
「それで肩代わりしてくれるコウガ君の元へ、自分が奴隷となって少しずつ返していく……と」
「……はい」
「ふむ……」
サーロインは暫く考え込むが……
「ギルドカードに登録されているとなると……厳しいか」
ボソッと小さくにだがそう言った。
「どうにもならないですか?」
黙って聞いていた俺だが、やはりセシルがこんな目に遭うのは我慢ならなくなり、問い掛けた。
「そうだな……説明された状況が事実なのであれば、PTとして失敗した分の支払い義務はあるだろう……PTの失敗による負債にセシル君の刀の刀が関係しているとなれば……セシル君が事実を言ったとしても、残りの3人が嘘を言って呪いのせいだと持ち出せば、セシル君に責任があると判断され……反撃は難しい」
「……」
セシルは太腿の上で握り拳を作り、悔しみの表情を浮かべる。
「クリスタの封印を解いたという確かな証拠と、クリスタ本人が借金したという証拠さえあれば何とかなるとは思うのだが……」
「……いえ、自分が悪かったんです。案内をして呪いを受けた自分が……だから、もういいんです」
「そうか……すまない、力になれたら良かったのだが」
「いえ……心遣いだけで充分です、ありがとうございました」
微妙な空気の中、セシルの借金はどうにもならないとの事なので、俺が金貨30枚支払う事になった。
セシルは金貨と一緒にギルドカードも提した。
「確かに、金貨30枚とギルドカードを受け取ったよ。これでセシル君の借金は0だ」
「……はい」
サーロインは金貨30枚を持って一旦部屋から退室、セシルは持っていかれる金貨を目で追いながら、部屋から出ていく瞬間に小さく手を伸ばしたのだが……すぐに戻した。
そして申し訳なさからなのか……悔しそうで、泣きそうで、今にも崩れてしまいそうな、そんな表情して俺を見た。
俺はセシルの手を握ってやる、するとボロボロと涙を流しながらも俺の手を握り返してくれた。
「後は奴隷契約だけだな……ガルムさんってサンビークに居るんだろうか」
「あぁ、確かコウガ達がノイシュに旅立った翌日に護衛依頼が出されていたはずだ、だからトライデント王国へ戻っていると思うぞ」
「そうですか……それなら仕方ないですね」
ゼミラさん曰く、もうガルムさんは居ないらしい。
仕方ないので、普通に店舗に居る人に頼むとしよう。
サーロインさんが部屋に戻ってきた、セシルにギルドカードが返される。
「それじゃ、行こうかセシル」
セシルは俺の手を握ったままコクリと頷く。
「ではなコウガ、何かあったら連絡してくれていいからな」
「はい、ありがとうございます」
俺達はギルドから出てインカース奴隷商館へと向かった。
商館へ入ると、すぐ近くに居た商人が声を掛けてきた。
「いらっしゃい、どんな奴隷を御要望で?」
眼鏡をかけて上司に媚び売ってそうな印象の商人だった。
「いえ、俺を主として、この女性と奴隷契約したいんですが」
「なるほど、かしこまりました!ささっ、こちらの部屋へどうぞ!私は契約書類と首輪を持って参りますので、中で暫くお待ちを」
眼鏡の商人に案内されて個室に入る。
部屋入って少しすると、お茶を持った奴隷が部屋に入ってきた。
よく見ると、メイランと共にサンビークに来た奴隷の1人だった。
「あっ!コウガ様!」
俺の事を覚えていたのか、お茶を配り終わった後にこちらに来た。
「あの時は本当にありがとうございました!」
深々と頭を下げてお礼を言ってくれた。
「ほんと、無事で良かったよ」
「無事だったのもコウガ様のお陰ですよ!メイランさんとカエデさんはお元気ですか?」
「あぁ、今は別行動をしてるが元気にやってるよ、カエデなんて俺と同じくらいに強くなったしな」
「本当ですか!?さすがカエデさん!」
こうして話していると、眼鏡商人が部屋に戻ってきた。
「おやおや、楽しそうですね。この御方をご存知なのですか?」
「はい!私がこっちに来た際に、護衛して貰った冒険者さんなんですよ!」
「うん?という事は……この御方がガルムさんが言っていたコウガ様ですか!」
「はい!」
「そうでしたか!ガルムさんよりお話は聞いております!あっ、申し遅れました、私ドルマゲスと申します!以後お見知り置きを」
「よ、よろしくお願いします……?」
勢いよく自己紹介されて少し戸惑ってしまったが、ガルムさんが育成している商人なら大丈夫だろう……
「では、こちらの書類と首輪をどうぞ」
ドルマゲスより首輪を受け取る。
「セシル、これを付けて血を垂らして契約すれば俺の物になる……覚悟は出来てるか?」
「あぁ、お金の件はまだ……あれだが、奴隷になる覚悟は出来ているさ……頼むマスター」
「了解」
セシルの首に奴隷の首輪を巻く、そして血を垂らしてから書類を書いていく。
「……はい、確認しました。これより契約を行います、良いですか?」
「「はい」」
「では、いきます」
『契約』
首輪が光り、模様がついた。
これでセシルは俺の奴隷となった。
「これで、私はマスターの物になったのだな……これからもよろしく頼む、マスター」
「あぁ、よろしくなセシル」
「1週間弱ぶりだな、コウガ」
「ゼミラさん!?どうして商業ギルドに!?」
「ついさっきまでここでサンビーク長会議をしていた所でな、終わった時にコウガが来ていると聞いてついてきたんだ」
「そ、そうだったんですか……」
「なるほど、2人は知り合いなんだな」
初めて見る商業ギルドマスターがゼミラさんに問い掛ける。
「あぁ、ノイシュ開催の武闘会推薦枠をこのコウガ達に渡したんだよ」
「そうだったのか、なるほど。よく見たらミツキまで居るじゃないか!久しぶりだな」
「お久しぶりです、サーロインさん」
ミツキとは知り合いみたいだな、その商業ギルドマスターの名はサーロインと言うようだ、何だかお腹が空いてくる名前だな……肉が食べたくなるね。
ギルドマスター2人が俺達の座っているソファーの対面に座る。
「改めて初めまして、商業ギルドマスターをやっているサーロインだ、よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします、コウガです。こっちの狐人族がセシル、猫人族がシェミィです」
「よ、よろしく頼みます……」
「ん!よろしく」
「……ん?ちょっとまて!」
お互い挨拶を交わした所でゼミラさんからstopが入る。
「どうしました?」
「今、シェミィと言ったか?確かストームキャットの名がシェミィだったと記憶しているのだが……」
ゼミラさんは愛くるしい猫人族姿のシェミィを見る。
「シェミィ」
「ん!」
シェミィは俺の影に入り、そしてストームキャットの姿のシェミィへと変わって飛び出す。
「な……なんと」
「ほぅ……!」
ゼミラさんはびっくりしたようで目を見開いている、サーロインさんも物珍しく見ていた。
「まさか人の姿にもなれるようになっていたとは……驚いたな」
シェミィは自分の姿の見せ付けてから、また影に入って人型の姿になる。
「ん、驚いた?」
「あぁ、驚いたとも!変身……いや、擬人化と言うべきか?そんな事もあるのだな……」
普段クールな面持ちであるゼミラも、これには驚きを隠せないようだ。
「ゼミラ、驚くのも分かるが、そろそろ本題に……」
「あぁすまない、私は聞くに徹するから始めてくれ」
ゼミラはソファーの背もたれに背中を預ける。
「さて、セシル君の借金についてだが……PTの借金と聞いているが、君達のPTが借金を?」
「いや、マス……コウガ達は関係ないです」
「では、前のPTでの借金を?」
「はい……実は」
前PTでの出来事やクリスタの起こした事件、そして呪われた刀の話をした。
「それで肩代わりしてくれるコウガ君の元へ、自分が奴隷となって少しずつ返していく……と」
「……はい」
「ふむ……」
サーロインは暫く考え込むが……
「ギルドカードに登録されているとなると……厳しいか」
ボソッと小さくにだがそう言った。
「どうにもならないですか?」
黙って聞いていた俺だが、やはりセシルがこんな目に遭うのは我慢ならなくなり、問い掛けた。
「そうだな……説明された状況が事実なのであれば、PTとして失敗した分の支払い義務はあるだろう……PTの失敗による負債にセシル君の刀の刀が関係しているとなれば……セシル君が事実を言ったとしても、残りの3人が嘘を言って呪いのせいだと持ち出せば、セシル君に責任があると判断され……反撃は難しい」
「……」
セシルは太腿の上で握り拳を作り、悔しみの表情を浮かべる。
「クリスタの封印を解いたという確かな証拠と、クリスタ本人が借金したという証拠さえあれば何とかなるとは思うのだが……」
「……いえ、自分が悪かったんです。案内をして呪いを受けた自分が……だから、もういいんです」
「そうか……すまない、力になれたら良かったのだが」
「いえ……心遣いだけで充分です、ありがとうございました」
微妙な空気の中、セシルの借金はどうにもならないとの事なので、俺が金貨30枚支払う事になった。
セシルは金貨と一緒にギルドカードも提した。
「確かに、金貨30枚とギルドカードを受け取ったよ。これでセシル君の借金は0だ」
「……はい」
サーロインは金貨30枚を持って一旦部屋から退室、セシルは持っていかれる金貨を目で追いながら、部屋から出ていく瞬間に小さく手を伸ばしたのだが……すぐに戻した。
そして申し訳なさからなのか……悔しそうで、泣きそうで、今にも崩れてしまいそうな、そんな表情して俺を見た。
俺はセシルの手を握ってやる、するとボロボロと涙を流しながらも俺の手を握り返してくれた。
「後は奴隷契約だけだな……ガルムさんってサンビークに居るんだろうか」
「あぁ、確かコウガ達がノイシュに旅立った翌日に護衛依頼が出されていたはずだ、だからトライデント王国へ戻っていると思うぞ」
「そうですか……それなら仕方ないですね」
ゼミラさん曰く、もうガルムさんは居ないらしい。
仕方ないので、普通に店舗に居る人に頼むとしよう。
サーロインさんが部屋に戻ってきた、セシルにギルドカードが返される。
「それじゃ、行こうかセシル」
セシルは俺の手を握ったままコクリと頷く。
「ではなコウガ、何かあったら連絡してくれていいからな」
「はい、ありがとうございます」
俺達はギルドから出てインカース奴隷商館へと向かった。
商館へ入ると、すぐ近くに居た商人が声を掛けてきた。
「いらっしゃい、どんな奴隷を御要望で?」
眼鏡をかけて上司に媚び売ってそうな印象の商人だった。
「いえ、俺を主として、この女性と奴隷契約したいんですが」
「なるほど、かしこまりました!ささっ、こちらの部屋へどうぞ!私は契約書類と首輪を持って参りますので、中で暫くお待ちを」
眼鏡の商人に案内されて個室に入る。
部屋入って少しすると、お茶を持った奴隷が部屋に入ってきた。
よく見ると、メイランと共にサンビークに来た奴隷の1人だった。
「あっ!コウガ様!」
俺の事を覚えていたのか、お茶を配り終わった後にこちらに来た。
「あの時は本当にありがとうございました!」
深々と頭を下げてお礼を言ってくれた。
「ほんと、無事で良かったよ」
「無事だったのもコウガ様のお陰ですよ!メイランさんとカエデさんはお元気ですか?」
「あぁ、今は別行動をしてるが元気にやってるよ、カエデなんて俺と同じくらいに強くなったしな」
「本当ですか!?さすがカエデさん!」
こうして話していると、眼鏡商人が部屋に戻ってきた。
「おやおや、楽しそうですね。この御方をご存知なのですか?」
「はい!私がこっちに来た際に、護衛して貰った冒険者さんなんですよ!」
「うん?という事は……この御方がガルムさんが言っていたコウガ様ですか!」
「はい!」
「そうでしたか!ガルムさんよりお話は聞いております!あっ、申し遅れました、私ドルマゲスと申します!以後お見知り置きを」
「よ、よろしくお願いします……?」
勢いよく自己紹介されて少し戸惑ってしまったが、ガルムさんが育成している商人なら大丈夫だろう……
「では、こちらの書類と首輪をどうぞ」
ドルマゲスより首輪を受け取る。
「セシル、これを付けて血を垂らして契約すれば俺の物になる……覚悟は出来てるか?」
「あぁ、お金の件はまだ……あれだが、奴隷になる覚悟は出来ているさ……頼むマスター」
「了解」
セシルの首に奴隷の首輪を巻く、そして血を垂らしてから書類を書いていく。
「……はい、確認しました。これより契約を行います、良いですか?」
「「はい」」
「では、いきます」
『契約』
首輪が光り、模様がついた。
これでセシルは俺の奴隷となった。
「これで、私はマスターの物になったのだな……これからもよろしく頼む、マスター」
「あぁ、よろしくなセシル」
応援ありがとうございます!
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