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91話 武闘会終了
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セシルの奴隷契約が完了し、ミツキの転移で武闘会会場へ戻ってくると、3位決定戦が終わって決勝戦が行われる所だった。
日が傾いて、夕日で空が赤く染まっている。
あの話をするにも夕飯の時間も近い、その辺どうするのかノシュタールに聞かなくちゃいけないな。
「おかえりご主人様!セシルちゃん、みんなとお揃いだね!」
「そうだな」
首に付いた奴隷用の首輪を触り、改めて奴隷になったんだと自覚する。
「首輪付けて思ったが……少し不思議な気分だよ。奴隷になったというのに、不安より安心感の方が大きいんだ」
「ふふっ、ご主人様の奴隷だからね、当たり前だよ!」
「そうっすね、ご主人の奴隷っすから!」
ソルトよ、重要な事なので2回言いました!みたいな感じになってるぞ。
「セシル、前にも言ったが……奴隷になったからと言って、無理して頑張る必要はないからな?セシルを奴隷とは思ってないからな?」
「あぁ、心得ておく……」
「ちょっと待ちなさい」
メイランがセシルの肩に手を置いて静止させる。
「うん?」
「セシル、ちょっとこっちに……」
メイランがセシルを連れていくと、カエデとソルトも引き連れてコソコソ話を始めた。
「……いい?セシル、私達はコウガ様の奴隷、本人が奴隷扱いしないと言っても、周りはそういう風には見てくれないわ」
「それは……」
セシルはコウガが奴隷扱いしないと聞いて安心していたが、周りからすればその限りではない事を再認識した。
周りからすれば自分達は、ただの奴隷なのだと。
「だけど、コウガ様の前では堂々としてなさい!コウガ様は私達と対等の関係を望んでるのだから、いち個人として振る舞いなさい。そして、逆にコウガ様を侮辱する奴に容赦は要らないわ、奴隷らしくコウガ様を護りなさい」
「セシルちゃん、私とご主人様が噛み砕いたあの人が例だよ」
「あ、あぁ……マスターやカエデ達を侮辱したあの冒険者の事だな」
「ええ、それだけは忘れないようにしなさいね」
「うむ、承知したよ」
メイランはセシルの肩に置いていた手を離す。
「メイランちゃん、あと1つ忘れてるよ」
カエデがメイランに耳打ちをする、メイランの顔が少し赤くなったが表情は崩さない。
「それはカエデから言いなさい、1番自覚しなきゃいけないのは貴方なんだから……いや、ソルトの方が自覚するべきかしら?」
「えっ、なんすか??」
メイランはソルトに耳打ちをすると、顔が真っ赤になる。
「うっ」
「ほらソルト、セシルに言ってあげなさい」
「あぅ……っす」
ソルトはセシルに顔を向ける。
真っ赤になった顔でこちらを向くソルトに、セシルは何を言われるのかと唾を飲む。
「じ、自分達は……奴隷でありながらもご主人に恋をし、人生を捧げる誓いをしてるっす……要するに、生涯をかけてご主人にお仕えするつもりっす……」
「う、うむ……」
「セシルは借金返済した後どうするかは分からないっすけど……もしご主人に、恋してずっと一緒になると決めたなら……自分達ともずっと一緒になること、それは分かっておいて欲しいっす……独り占めは出来ないっすよ」
「な、なるほど……」
ソルト達も細かく話し合った訳ではないのだが、そこの食い違いで関係が拗れるのは不味い、それは言わなくても明らかだ。
「自分達はご主人に対する誓いを把握済っす、だから話し合わなくても大丈夫だったっすけど、セシルはまだ自分達と出会ったばかりっすから、言っておくっすね」
「わ、分かった……心得ておこう。確かに、マスターの事は良いな……と感じたりはしたが、まだ私自身が問題だらけなのもあって、整理がついていないんだ」
コウガ自身はこの会話は聞こえていので分かっていないが、出会ったばかりのセシルがコウガに対して良いなと思っているのは、実は動物愛好家の加護のお陰である。
きっかけがあって、すぐに距離が縮まったというのもあるのだが、それ以上に加護の力も働いているからだ。
「そうね……借金の事と呪いが、ね」
「うむ、マスターからは別に良いと言われているが……借金の件はやはりケジメは付けなきゃいけない、だからその件はそれが片付いてから……だな」
要するに、借金したままなのに肩代わりしてくれた人とはイチャイチャ出来ないって事だ。
「……私は良いと思うけどね、片付く前にご主人様とくっついても」
「そうっすよね、本人の意思次第だと思うっす。借金を身体で返す……って訳じゃないんすから」
「む……それは、そうなのだが……」
身体で返す想像をしてしまったのか、セシルも顔を赤くする。
「……おーい、大丈夫か?セシルとソルトの顔が赤いぞ」
「!?ひゃい!」
待ちわびたコウガが、急に背後に来て声を出したからか、セシルがびっくりして変な声を出してしまった。
「もう、コウガ様が急に声掛けるから……」
「す、すまん……」
俺抜きで話してた内容は聞き取れなくて分からなかったが……セシルがみんなと仲良くなれるならいいか、多分女の子同士の秘密があるのだろう。
「試合終了ーーー!!!勝ったのは騎士団PTでした!!!」
勝負が決まり、応援席から歓声がわく。
「おっ、終わったみたいだな」
「やっぱり騎士団が勝ったみたいね」
「っすね、強かったっすからねぇ……」
ノシュタールは歓声に応えるかのように手を振っている、ゴリスターはよく分からない筋肉ポーズを決めて、オルガーは相変わらずクールにキメている。
「これにて武闘会は終了となります!個人戦、団体戦の1位、2位、3位の皆さんは、明日までに冒険者ギルドに来るようにお願いします!報酬が渡されますので!それではこれにて閉幕!お疲れ様でした!」
武闘会が終わった、凄く長かったような気がするが……それでも得られた物が多かった、参加して良かったと思う。
「それじゃ、片付けてから騎士団達の元へ行こうか」
「ですね!」
ぞろぞろと全員で移動し、騎士団達が来るであろう会場の出入口にて待つ事にした。
数分後、騎士団達が会場より出てくるのが見えた、俺は手を挙げて合図し合流する。
「すまないね、待たせたかな?」
「いえ、数分しか待ってませんよ」
「お久しぶりです、ノシュタール団長」
「ミツキ君か、久しいな。ティナ君達も元気にしてたかい?」
「勿論だ」
レインとツバキも頷いて元気だと答える。
「その様子なら大丈夫そうだね、また騎士団兵達を仕込んでくれないか?」
「時間がある時に依頼してくれたら行かせてもらうよ」
「ふふ、ではまた今度依頼するとしよう。最近兵達がたるんでるような気がしていてな、君達が来てくれると良い刺激になるんだ」
どうやら、ティナ達の実力が買われて騎士団の指導をしているらしい。
なるほど、そこで団長達と戦ったってことか……
「さて、あの話だけど……冒険者ギルドの一室を借りよう、あまり周りに漏らしたくないからね」
「分かりました」
夕飯が遅くなりそうだな……仕方ないか。
「ヴィーネ、先に帰って食事の支度しといてくれる?」
「かしこまりました」
スカートの裾を持ち、ぺこりと頭を下げる。
ミツキとヴィーネは物陰に隠れる、その10秒後にはミツキだけ帰ってきた、きっと転移で家に送ってきたのだろう。
「相変わらず便利だね、それ」
「はい、俺の命綱の1つです」
「そうだったね、では行こうか」
日が傾いて、夕日で空が赤く染まっている。
あの話をするにも夕飯の時間も近い、その辺どうするのかノシュタールに聞かなくちゃいけないな。
「おかえりご主人様!セシルちゃん、みんなとお揃いだね!」
「そうだな」
首に付いた奴隷用の首輪を触り、改めて奴隷になったんだと自覚する。
「首輪付けて思ったが……少し不思議な気分だよ。奴隷になったというのに、不安より安心感の方が大きいんだ」
「ふふっ、ご主人様の奴隷だからね、当たり前だよ!」
「そうっすね、ご主人の奴隷っすから!」
ソルトよ、重要な事なので2回言いました!みたいな感じになってるぞ。
「セシル、前にも言ったが……奴隷になったからと言って、無理して頑張る必要はないからな?セシルを奴隷とは思ってないからな?」
「あぁ、心得ておく……」
「ちょっと待ちなさい」
メイランがセシルの肩に手を置いて静止させる。
「うん?」
「セシル、ちょっとこっちに……」
メイランがセシルを連れていくと、カエデとソルトも引き連れてコソコソ話を始めた。
「……いい?セシル、私達はコウガ様の奴隷、本人が奴隷扱いしないと言っても、周りはそういう風には見てくれないわ」
「それは……」
セシルはコウガが奴隷扱いしないと聞いて安心していたが、周りからすればその限りではない事を再認識した。
周りからすれば自分達は、ただの奴隷なのだと。
「だけど、コウガ様の前では堂々としてなさい!コウガ様は私達と対等の関係を望んでるのだから、いち個人として振る舞いなさい。そして、逆にコウガ様を侮辱する奴に容赦は要らないわ、奴隷らしくコウガ様を護りなさい」
「セシルちゃん、私とご主人様が噛み砕いたあの人が例だよ」
「あ、あぁ……マスターやカエデ達を侮辱したあの冒険者の事だな」
「ええ、それだけは忘れないようにしなさいね」
「うむ、承知したよ」
メイランはセシルの肩に置いていた手を離す。
「メイランちゃん、あと1つ忘れてるよ」
カエデがメイランに耳打ちをする、メイランの顔が少し赤くなったが表情は崩さない。
「それはカエデから言いなさい、1番自覚しなきゃいけないのは貴方なんだから……いや、ソルトの方が自覚するべきかしら?」
「えっ、なんすか??」
メイランはソルトに耳打ちをすると、顔が真っ赤になる。
「うっ」
「ほらソルト、セシルに言ってあげなさい」
「あぅ……っす」
ソルトはセシルに顔を向ける。
真っ赤になった顔でこちらを向くソルトに、セシルは何を言われるのかと唾を飲む。
「じ、自分達は……奴隷でありながらもご主人に恋をし、人生を捧げる誓いをしてるっす……要するに、生涯をかけてご主人にお仕えするつもりっす……」
「う、うむ……」
「セシルは借金返済した後どうするかは分からないっすけど……もしご主人に、恋してずっと一緒になると決めたなら……自分達ともずっと一緒になること、それは分かっておいて欲しいっす……独り占めは出来ないっすよ」
「な、なるほど……」
ソルト達も細かく話し合った訳ではないのだが、そこの食い違いで関係が拗れるのは不味い、それは言わなくても明らかだ。
「自分達はご主人に対する誓いを把握済っす、だから話し合わなくても大丈夫だったっすけど、セシルはまだ自分達と出会ったばかりっすから、言っておくっすね」
「わ、分かった……心得ておこう。確かに、マスターの事は良いな……と感じたりはしたが、まだ私自身が問題だらけなのもあって、整理がついていないんだ」
コウガ自身はこの会話は聞こえていので分かっていないが、出会ったばかりのセシルがコウガに対して良いなと思っているのは、実は動物愛好家の加護のお陰である。
きっかけがあって、すぐに距離が縮まったというのもあるのだが、それ以上に加護の力も働いているからだ。
「そうね……借金の事と呪いが、ね」
「うむ、マスターからは別に良いと言われているが……借金の件はやはりケジメは付けなきゃいけない、だからその件はそれが片付いてから……だな」
要するに、借金したままなのに肩代わりしてくれた人とはイチャイチャ出来ないって事だ。
「……私は良いと思うけどね、片付く前にご主人様とくっついても」
「そうっすよね、本人の意思次第だと思うっす。借金を身体で返す……って訳じゃないんすから」
「む……それは、そうなのだが……」
身体で返す想像をしてしまったのか、セシルも顔を赤くする。
「……おーい、大丈夫か?セシルとソルトの顔が赤いぞ」
「!?ひゃい!」
待ちわびたコウガが、急に背後に来て声を出したからか、セシルがびっくりして変な声を出してしまった。
「もう、コウガ様が急に声掛けるから……」
「す、すまん……」
俺抜きで話してた内容は聞き取れなくて分からなかったが……セシルがみんなと仲良くなれるならいいか、多分女の子同士の秘密があるのだろう。
「試合終了ーーー!!!勝ったのは騎士団PTでした!!!」
勝負が決まり、応援席から歓声がわく。
「おっ、終わったみたいだな」
「やっぱり騎士団が勝ったみたいね」
「っすね、強かったっすからねぇ……」
ノシュタールは歓声に応えるかのように手を振っている、ゴリスターはよく分からない筋肉ポーズを決めて、オルガーは相変わらずクールにキメている。
「これにて武闘会は終了となります!個人戦、団体戦の1位、2位、3位の皆さんは、明日までに冒険者ギルドに来るようにお願いします!報酬が渡されますので!それではこれにて閉幕!お疲れ様でした!」
武闘会が終わった、凄く長かったような気がするが……それでも得られた物が多かった、参加して良かったと思う。
「それじゃ、片付けてから騎士団達の元へ行こうか」
「ですね!」
ぞろぞろと全員で移動し、騎士団達が来るであろう会場の出入口にて待つ事にした。
数分後、騎士団達が会場より出てくるのが見えた、俺は手を挙げて合図し合流する。
「すまないね、待たせたかな?」
「いえ、数分しか待ってませんよ」
「お久しぶりです、ノシュタール団長」
「ミツキ君か、久しいな。ティナ君達も元気にしてたかい?」
「勿論だ」
レインとツバキも頷いて元気だと答える。
「その様子なら大丈夫そうだね、また騎士団兵達を仕込んでくれないか?」
「時間がある時に依頼してくれたら行かせてもらうよ」
「ふふ、ではまた今度依頼するとしよう。最近兵達がたるんでるような気がしていてな、君達が来てくれると良い刺激になるんだ」
どうやら、ティナ達の実力が買われて騎士団の指導をしているらしい。
なるほど、そこで団長達と戦ったってことか……
「さて、あの話だけど……冒険者ギルドの一室を借りよう、あまり周りに漏らしたくないからね」
「分かりました」
夕飯が遅くなりそうだな……仕方ないか。
「ヴィーネ、先に帰って食事の支度しといてくれる?」
「かしこまりました」
スカートの裾を持ち、ぺこりと頭を下げる。
ミツキとヴィーネは物陰に隠れる、その10秒後にはミツキだけ帰ってきた、きっと転移で家に送ってきたのだろう。
「相変わらず便利だね、それ」
「はい、俺の命綱の1つです」
「そうだったね、では行こうか」
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