19 / 693
2
2-4
しおりを挟む
────────────・・・・
「ただいま。」
帰ってからすぐにリビングに行くと、お母さんが奥様に夜ご飯を出している時だった。
時計を見ると19時前。
“帰りたくない”と思ってしまい、私はこんな時間まで帰れずにいた。
こんな“いけないコト”を私は初めてしてしまった。
「お帰りなさい、望。
一美も塾だし私1人で寂しかったの、一緒に食べよう?」
私が遅くなったことには何も言わず、奥様が優しい笑顔でそう言ってくれた。
それになんだか泣きそうになる。
泣きそうになってしまう。
思わず奥様から視線を逸らした私の目線の先にいたのは、お兄ちゃんだった・・・。
「もうすぐ一平さんが帰ってくる。」
お兄ちゃんが真剣な顔で私にそう言って、私のお母さんのことを見た。
「あと2人分のご飯出せる?
小関“家”と同じメニューの。」
「・・・分かった。
望、手伝える?」
お母さんの言葉には頷き、ダッフルコートを脱ごうとした。
でもその手をお兄ちゃんから素早く止められて。
「お前は先に飲み物出してきて。」
少しだけ悩んだ顔をしたお兄ちゃんが奥様のことを見た。
「俺、どんな風に見えますか?」
ニコッと可愛い笑顔で笑った、私とは違う公立中学校の制服を着ているお兄ちゃんが奥様に聞いた。
「凄く良い男の子。」
「ですよね。」
そう答えてから私のことをもう1度見た瞬間、玄関の開く音と一緒にガヤガヤと煩い声が聞こえてきた。
こんなに広い家なのに、そんな声が響いてきた。
「一平さんと同じ生徒会の人達。
生徒会長と書記の人。」
「・・・内部生じゃなくて高校からの外部生の2人?」
「そう、一平さんの今までの友人達とは違う。
望が審査してこい。」
「私が・・・?」
お母さんが準備をしたお茶がのったお盆を、お兄ちゃんが私に持たせた。
「望、コート。」
お母さんからコートを脱ぐように言われたけれど、お兄ちゃんは首を横に振った。
「このままで良い。
望はまだ中学1年生で、“普通”の女の子だから。」
お兄ちゃんがポケットからいつものセロハンテープを取り出し、私の口にいつものようにバツになるように貼り付けた。
お兄ちゃんにしか取れないセロハンテープを。
私が余計なことを言わないように私の口を封印するセロハンテープを。
「言ってこい、望。
これがお前が出来る秘書の仕事だ。
絶対に失敗するなよ。」
その言葉にドキドキと心臓が煩いくらい鳴っていく。
「口での自己紹介が出来ない分、しっかりお辞儀をして挨拶するんだぞ?」
頷く私にお兄ちゃんはめちゃくちゃ怒った顔になった。
「もしも失敗したら、学校でもセロハンテープをつけさせるからな。」
そんな恐ろしいことを言ってきたお兄ちゃんに、私は何度も何度も頷いた。
「ただいま。」
帰ってからすぐにリビングに行くと、お母さんが奥様に夜ご飯を出している時だった。
時計を見ると19時前。
“帰りたくない”と思ってしまい、私はこんな時間まで帰れずにいた。
こんな“いけないコト”を私は初めてしてしまった。
「お帰りなさい、望。
一美も塾だし私1人で寂しかったの、一緒に食べよう?」
私が遅くなったことには何も言わず、奥様が優しい笑顔でそう言ってくれた。
それになんだか泣きそうになる。
泣きそうになってしまう。
思わず奥様から視線を逸らした私の目線の先にいたのは、お兄ちゃんだった・・・。
「もうすぐ一平さんが帰ってくる。」
お兄ちゃんが真剣な顔で私にそう言って、私のお母さんのことを見た。
「あと2人分のご飯出せる?
小関“家”と同じメニューの。」
「・・・分かった。
望、手伝える?」
お母さんの言葉には頷き、ダッフルコートを脱ごうとした。
でもその手をお兄ちゃんから素早く止められて。
「お前は先に飲み物出してきて。」
少しだけ悩んだ顔をしたお兄ちゃんが奥様のことを見た。
「俺、どんな風に見えますか?」
ニコッと可愛い笑顔で笑った、私とは違う公立中学校の制服を着ているお兄ちゃんが奥様に聞いた。
「凄く良い男の子。」
「ですよね。」
そう答えてから私のことをもう1度見た瞬間、玄関の開く音と一緒にガヤガヤと煩い声が聞こえてきた。
こんなに広い家なのに、そんな声が響いてきた。
「一平さんと同じ生徒会の人達。
生徒会長と書記の人。」
「・・・内部生じゃなくて高校からの外部生の2人?」
「そう、一平さんの今までの友人達とは違う。
望が審査してこい。」
「私が・・・?」
お母さんが準備をしたお茶がのったお盆を、お兄ちゃんが私に持たせた。
「望、コート。」
お母さんからコートを脱ぐように言われたけれど、お兄ちゃんは首を横に振った。
「このままで良い。
望はまだ中学1年生で、“普通”の女の子だから。」
お兄ちゃんがポケットからいつものセロハンテープを取り出し、私の口にいつものようにバツになるように貼り付けた。
お兄ちゃんにしか取れないセロハンテープを。
私が余計なことを言わないように私の口を封印するセロハンテープを。
「言ってこい、望。
これがお前が出来る秘書の仕事だ。
絶対に失敗するなよ。」
その言葉にドキドキと心臓が煩いくらい鳴っていく。
「口での自己紹介が出来ない分、しっかりお辞儀をして挨拶するんだぞ?」
頷く私にお兄ちゃんはめちゃくちゃ怒った顔になった。
「もしも失敗したら、学校でもセロハンテープをつけさせるからな。」
そんな恐ろしいことを言ってきたお兄ちゃんに、私は何度も何度も頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる