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空のグラスがのったお盆を持ってリビングに戻ると、お兄ちゃんが腕組みをして待っていた。
「失敗しなかったか?」
「うん・・・。」
「セロハンテープ、どうした?」
お兄ちゃんから聞かれ、戻るまでに一生懸命拭いた目を下に向けて答えた。
「生徒会長から取られちゃった・・・。」
「・・・・・・。」
「審査の結果、通過しない。
2人とも通過しない。」
「・・・・・・。」
「下品だしエッチな話ばっかりしてるし、彼女とのデート先まで一平さんに聞いてくるし・・・一平さんに胸とか・・・巨乳とかお尻とかどれが好きかまで聞いてくるし・・・。
でも、凄く・・・凄く良い人達だった・・・。」
下を向きながら静かに涙を流す。
「私のセロハンテープを一平さんに注意してくれて、私の口から取ってくれるくらい・・・私の口の封印を解いて私の心を割っちゃうくらい、優しくて強い人だった・・・っっ」
「・・・・・・。」
「“成金の家”って内部生からバカにされていたのに、“可哀想なお坊ちゃま君”ってバカにしながらも、それでも何故かそのお坊ちゃん達から離れることなく絡み続けて、生徒会長に多くの人から推薦されるような人だった。」
2学期から一平さんは生徒会の副会長になった。
だから一平さんと同じ生徒会の役員のことは調査されていて、お父さんからもお兄ちゃんからも懸念されていたのは生徒会長と書記の存在だった。
内部生と外部生ではお互いに分かり合えることがないまま卒業していく一平さんの男子校。
そんな高校なのに外部生の星野さんと鎌田さんは外部生からだけではなく内部生からも人気者になっていると報告書に書いてあった。
「凄く声の大きい人だった・・・。
だから聞きたくないことまで聞こえちゃうし、聞いたらいけないようなことまで聞こえちゃうの・・・。
でも凄く凄く楽しそうに話すから、聞かない方が良いと分かっていてもつい聞いちゃうの・・・。」
「・・・・・・。」
「他の人のことなのにまるで自分のことのように考えられる人。
考えるだけじゃなくて“何か”までしようとしてくれる人。」
「・・・・・。」
「凄く良い人だった・・・。」
「・・・・・。」
「口の封印を簡単に解いて、私の心を簡単に割って、私の余計なことまで聞いてくれて、その余計なことを本気で叶えようとしてくれて・・・。」
「・・・・・。」
「凄く良い人で、凄くダメな人だった・・・。」
今日も私の報告を黙って聞いているお兄ちゃんのことを泣きながら見た。
「特に生徒会長は普通のお坊っちゃまにはない心と言葉を持っている。
それは一平さんや一美さんのソレとも違って、トップに立つ人のソレなんだと思う。
それくらいだった・・・。」
「・・・・・。」
「それくらいの人だった・・・。」
「・・・・・。」
「それくらい大きな影響力を“何か”に・・・“誰か”に与えられる人だった・・・。」
「・・・・・。」
「空間のコーディネートは出来ない人なのかもしれないけど、“誰か”や“何か”は簡単にコーディネート出来る人だった。」
「分かった。」
お兄ちゃんが真面目な顔で頷いた。
「一平さんには必要以上に関わらないように言っておく。
一平さんを勝手にコーディネートされるわけにはいかないからな。」
お兄ちゃんからのその言葉に私は小さくだけど頷いた。
“やっぱり、もう会えないんだな。”
自分でその報告をしたのに、凄く苦しくなった。
凄く悲しくなった。
やっぱり凄く凄く、心がザワザワとした。
「失敗しなかったか?」
「うん・・・。」
「セロハンテープ、どうした?」
お兄ちゃんから聞かれ、戻るまでに一生懸命拭いた目を下に向けて答えた。
「生徒会長から取られちゃった・・・。」
「・・・・・・。」
「審査の結果、通過しない。
2人とも通過しない。」
「・・・・・・。」
「下品だしエッチな話ばっかりしてるし、彼女とのデート先まで一平さんに聞いてくるし・・・一平さんに胸とか・・・巨乳とかお尻とかどれが好きかまで聞いてくるし・・・。
でも、凄く・・・凄く良い人達だった・・・。」
下を向きながら静かに涙を流す。
「私のセロハンテープを一平さんに注意してくれて、私の口から取ってくれるくらい・・・私の口の封印を解いて私の心を割っちゃうくらい、優しくて強い人だった・・・っっ」
「・・・・・・。」
「“成金の家”って内部生からバカにされていたのに、“可哀想なお坊ちゃま君”ってバカにしながらも、それでも何故かそのお坊ちゃん達から離れることなく絡み続けて、生徒会長に多くの人から推薦されるような人だった。」
2学期から一平さんは生徒会の副会長になった。
だから一平さんと同じ生徒会の役員のことは調査されていて、お父さんからもお兄ちゃんからも懸念されていたのは生徒会長と書記の存在だった。
内部生と外部生ではお互いに分かり合えることがないまま卒業していく一平さんの男子校。
そんな高校なのに外部生の星野さんと鎌田さんは外部生からだけではなく内部生からも人気者になっていると報告書に書いてあった。
「凄く声の大きい人だった・・・。
だから聞きたくないことまで聞こえちゃうし、聞いたらいけないようなことまで聞こえちゃうの・・・。
でも凄く凄く楽しそうに話すから、聞かない方が良いと分かっていてもつい聞いちゃうの・・・。」
「・・・・・・。」
「他の人のことなのにまるで自分のことのように考えられる人。
考えるだけじゃなくて“何か”までしようとしてくれる人。」
「・・・・・。」
「凄く良い人だった・・・。」
「・・・・・。」
「口の封印を簡単に解いて、私の心を簡単に割って、私の余計なことまで聞いてくれて、その余計なことを本気で叶えようとしてくれて・・・。」
「・・・・・。」
「凄く良い人で、凄くダメな人だった・・・。」
今日も私の報告を黙って聞いているお兄ちゃんのことを泣きながら見た。
「特に生徒会長は普通のお坊っちゃまにはない心と言葉を持っている。
それは一平さんや一美さんのソレとも違って、トップに立つ人のソレなんだと思う。
それくらいだった・・・。」
「・・・・・。」
「それくらいの人だった・・・。」
「・・・・・。」
「それくらい大きな影響力を“何か”に・・・“誰か”に与えられる人だった・・・。」
「・・・・・。」
「空間のコーディネートは出来ない人なのかもしれないけど、“誰か”や“何か”は簡単にコーディネート出来る人だった。」
「分かった。」
お兄ちゃんが真面目な顔で頷いた。
「一平さんには必要以上に関わらないように言っておく。
一平さんを勝手にコーディネートされるわけにはいかないからな。」
お兄ちゃんからのその言葉に私は小さくだけど頷いた。
“やっぱり、もう会えないんだな。”
自分でその報告をしたのに、凄く苦しくなった。
凄く悲しくなった。
やっぱり凄く凄く、心がザワザワとした。
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