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私の質問に安藤香奈の顔は少しだけ歪んだ。
「違う。」
「あれ、違いましたか。
てっきり安藤さんかと思いました。」
「大西に社長の不倫のことを愚痴ったのは確かに私。
でも私は大西の彼女じゃない。
・・・・・・大西、彼女いるんだ。」
「馬場さんからそう聞いています。」
“顔や身体なんて使わなくても、涙なんて武器にしなくても、それでも必要とされるような女になりなさい。”
安藤香奈から言われた言葉をフッと思い出し、何気なく聞いた。
「大西君とエッチしました?」
「付き合ってもいないのにするわけないでしょ。」
「安藤さんの顔とか胸に食い付いてくる男、嫌いですか?」
「そんなの当たり前でしょ。」
「それを大西君に言ったことがありますか?」
「それは・・・、そんなようなことは愚痴ったことがあるかも。」
「大西君って、安藤さんの家に転がり込んでいますよね?」
並んでいた2人の距離がやけに近かった安藤さんと大西君の姿を思い浮かべながら聞いた。
私のことを大西君が庇う度にめちゃくちゃ怒った顔をしていた安藤さんの姿も思い出しながら。
「あ~・・・、うん、よくうちに泊まってはいるけど本当に泊まってるだけ。
あの子は朝が苦手で遅刻ギリギリなことも多くて、最初の頃は朝電話をして起こしてたんだけど、そのうち“直接起こしてください”って言われてよく泊まりに来てはいる。」
私から視線を逸らした安藤さんが怒りながら、でも悲しそうな顔もしながら文句を言った。
「あの子に彼女がいるなんて知らなかった。
最初の頃はいなかったし、いるなんて話もしてこなかったし、ずっといないのかと思ってた。
尾崎君のことがあってからは気を付けてたつもりなんだけどな、傷付くのは自分だし・・・。
だから社長のこともちゃんと自分の中で抑えてたし、相手がいる男のことなんて眼中にも入れないようにしてたのに・・・。
彼女がいる男を家の中に入れまくってたとか、私って相変わらず嫌な女・・・。」
最後は自分自身に文句を言った安藤香奈に、“たぶん”くらいの情報だけど伝えておく。
「大西君は、安藤さんと付き合っていると思ってるとかないですか?
馬場さんからの情報なので正確性は微妙なところですけど、“大西君の今の彼女”と馬場さんが言って、大西君が彼女の家に転がり込んでるということと、その理由が彼女に朝起こして貰う為とか言ってましたよ?
その彼女って、安藤さんのことじゃないですか?」
「・・・・・でも、私達はその・・・男女の仲になってないし。」
「安藤さんが身体目当ての男の愚痴とか言ってたからじゃないですか?
大西君から告白とかされてないんですか?」
「好きとは何度か言われてはいるけど・・・。」
「いや、めっちゃ普通に告られてるじゃん。」
「でも、私よりずっと若いし、普通に若すぎるし、もっと若い子と付き合った方が良いって何度も断ってる。」
「その断り方、大西君に伝わってます?
そんなことを言いながらも一緒にいるし、家に泊まらせてるし、ハッキリと付き合えないと言ってないなら大西君に伝わってないんじゃないですか?」
「でも、だからって私と付き合ってるとは・・・」
「安藤さん。」
安藤香奈の話の途中で安藤さんのことを呼んだ。
「安藤さんよりも若い私のことを構ったり私のことを庇う大西君を見て、安藤さんめっちゃ怒ってたじゃん。
色んな言い訳を並べて大西君の気持ちと向き合ってないみたいだけど、大西君のことが男としてちゃんと好きなんでしょ?
素直に“私も好き”って伝えて“エッチして”って言えば良いじゃん。
私からしてみたら何に悩んで何を迷ってるのか理解出来ないから。
今の会話が私には全部惚気に聞こえてイライラするから早くくっついてよ、ムカつくな~、もぉ~っ。」
思っていることを全部そのまま言った、ガバガバな口の私に安藤さんは楽しそうに大きく笑った。
「そうだね、言ってみる。
ありがとう。」
吹っ切れたような笑顔で私のことを真っ直ぐと見詰め、初めて見る優しい笑顔で笑った。
「尾崎君から聞いた、大変な家に生まれた女の子みたいだね。
それなのに強くて優しい良い子だって尾崎君が言ってた。
うちの会社の清掃だけじゃなくて私の恋の清掃までしてくれちゃって、加藤さんは良い清掃員だよ。」
安藤香奈がそんなことを言ってくれて・・・
「短期間とはいえめちゃくちゃムカつく日々だったけど、来てくれたのが加藤さんで良かった。
加藤さんならきっと良い秘書になれる、頑張ってね。」
清々しい顔で私にそう言ってくれた安藤さんが、私に手を振り歩いていった。
安藤さんからのその言葉に、私は少しだけ生き返ることが出来た気がする。
でも・・・
「いいなぁ・・・。」
安藤さんが歩いていく先の未来が、きっと幸せなモノだと想像出来てしまい、思わずそう言って・・・
なんだか凄く凄く苦しくなり、私はまた泣いた。
「違う。」
「あれ、違いましたか。
てっきり安藤さんかと思いました。」
「大西に社長の不倫のことを愚痴ったのは確かに私。
でも私は大西の彼女じゃない。
・・・・・・大西、彼女いるんだ。」
「馬場さんからそう聞いています。」
“顔や身体なんて使わなくても、涙なんて武器にしなくても、それでも必要とされるような女になりなさい。”
安藤香奈から言われた言葉をフッと思い出し、何気なく聞いた。
「大西君とエッチしました?」
「付き合ってもいないのにするわけないでしょ。」
「安藤さんの顔とか胸に食い付いてくる男、嫌いですか?」
「そんなの当たり前でしょ。」
「それを大西君に言ったことがありますか?」
「それは・・・、そんなようなことは愚痴ったことがあるかも。」
「大西君って、安藤さんの家に転がり込んでいますよね?」
並んでいた2人の距離がやけに近かった安藤さんと大西君の姿を思い浮かべながら聞いた。
私のことを大西君が庇う度にめちゃくちゃ怒った顔をしていた安藤さんの姿も思い出しながら。
「あ~・・・、うん、よくうちに泊まってはいるけど本当に泊まってるだけ。
あの子は朝が苦手で遅刻ギリギリなことも多くて、最初の頃は朝電話をして起こしてたんだけど、そのうち“直接起こしてください”って言われてよく泊まりに来てはいる。」
私から視線を逸らした安藤さんが怒りながら、でも悲しそうな顔もしながら文句を言った。
「あの子に彼女がいるなんて知らなかった。
最初の頃はいなかったし、いるなんて話もしてこなかったし、ずっといないのかと思ってた。
尾崎君のことがあってからは気を付けてたつもりなんだけどな、傷付くのは自分だし・・・。
だから社長のこともちゃんと自分の中で抑えてたし、相手がいる男のことなんて眼中にも入れないようにしてたのに・・・。
彼女がいる男を家の中に入れまくってたとか、私って相変わらず嫌な女・・・。」
最後は自分自身に文句を言った安藤香奈に、“たぶん”くらいの情報だけど伝えておく。
「大西君は、安藤さんと付き合っていると思ってるとかないですか?
馬場さんからの情報なので正確性は微妙なところですけど、“大西君の今の彼女”と馬場さんが言って、大西君が彼女の家に転がり込んでるということと、その理由が彼女に朝起こして貰う為とか言ってましたよ?
その彼女って、安藤さんのことじゃないですか?」
「・・・・・でも、私達はその・・・男女の仲になってないし。」
「安藤さんが身体目当ての男の愚痴とか言ってたからじゃないですか?
大西君から告白とかされてないんですか?」
「好きとは何度か言われてはいるけど・・・。」
「いや、めっちゃ普通に告られてるじゃん。」
「でも、私よりずっと若いし、普通に若すぎるし、もっと若い子と付き合った方が良いって何度も断ってる。」
「その断り方、大西君に伝わってます?
そんなことを言いながらも一緒にいるし、家に泊まらせてるし、ハッキリと付き合えないと言ってないなら大西君に伝わってないんじゃないですか?」
「でも、だからって私と付き合ってるとは・・・」
「安藤さん。」
安藤香奈の話の途中で安藤さんのことを呼んだ。
「安藤さんよりも若い私のことを構ったり私のことを庇う大西君を見て、安藤さんめっちゃ怒ってたじゃん。
色んな言い訳を並べて大西君の気持ちと向き合ってないみたいだけど、大西君のことが男としてちゃんと好きなんでしょ?
素直に“私も好き”って伝えて“エッチして”って言えば良いじゃん。
私からしてみたら何に悩んで何を迷ってるのか理解出来ないから。
今の会話が私には全部惚気に聞こえてイライラするから早くくっついてよ、ムカつくな~、もぉ~っ。」
思っていることを全部そのまま言った、ガバガバな口の私に安藤さんは楽しそうに大きく笑った。
「そうだね、言ってみる。
ありがとう。」
吹っ切れたような笑顔で私のことを真っ直ぐと見詰め、初めて見る優しい笑顔で笑った。
「尾崎君から聞いた、大変な家に生まれた女の子みたいだね。
それなのに強くて優しい良い子だって尾崎君が言ってた。
うちの会社の清掃だけじゃなくて私の恋の清掃までしてくれちゃって、加藤さんは良い清掃員だよ。」
安藤香奈がそんなことを言ってくれて・・・
「短期間とはいえめちゃくちゃムカつく日々だったけど、来てくれたのが加藤さんで良かった。
加藤さんならきっと良い秘書になれる、頑張ってね。」
清々しい顔で私にそう言ってくれた安藤さんが、私に手を振り歩いていった。
安藤さんからのその言葉に、私は少しだけ生き返ることが出来た気がする。
でも・・・
「いいなぁ・・・。」
安藤さんが歩いていく先の未来が、きっと幸せなモノだと想像出来てしまい、思わずそう言って・・・
なんだか凄く凄く苦しくなり、私はまた泣いた。
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