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「会社側から解雇をするのは最近は難しいんだよ。
それにクビを言い渡された方のことも想像してみろ、病むぞ。」
「友実ちゃん、またバイトをクビになった?」
「今はどんな職種もコミュ力を求められることも多いからな。」
「お兄ちゃんの会社で雇ってあげれば良いのに。」
「何言ってるんだよ、俺はまだ大学生だろ?」
「それまだやってるのウケるよね。
そろそろバラして良いんじゃない?」
「そしたら俺への依存がなくなって、また“お兄ちゃん”の方に行くだろ。」
「確かに・・・。」
「お前、さっきから何やってるの?
ソファーの上に鞄の中身を次から次に出して。」
「青さんから貰ったハンカチが見当たらなくてさ。
コートのポケットにずっと入れてたつもりなんだけど、出したのかな~・・・。」
「部屋の中が段ボールだらけなんだろ?
そこは?」
「うん、そっちも探してみる。」
「そういえば、野々からはその後また連絡あった?」
「ないよ、青さんとの結婚生活が終わったら私から連絡してみる。」
「増田財閥の為にまた動けそうな女だった?」
「どうだろう。
今は何の仕事をしているのかも聞けなかったから、今度聞いてみるよ。
それよりもアエさんの行方は分かった?
おばあちゃん、そろそろ危ないんじゃない?」
「今探してる最中。
アエさんに暇を出してからもう随分と経ったからな。」
「そうだね、アエさんまだ生きてるのかな・・・。
鶴さんもまだ生きてるのかな~。
鶴さんとも会わせてあげたいな。」
「欲張りになったな、望。」
「私の望みじゃないよ、おばあちゃんの望みを代弁してあげてるの!」
「そういうことにしておく。」
バッグの中に散らかした物を片付けていきながらお兄ちゃんに色んな報告をしていく。
お兄ちゃんからも色んな話を聞きながら。
お兄ちゃんからの話はどこからどこまでが本当の話なんだろうとも思いながら。
「本当のところはお兄ちゃんが1番可哀想な人だよね。」
「当たり前だろ、俺以上に可哀想な奴がいたらそいつを連れてこいよ。」
「それは結構いると思うよ、虐待とかさ。」
「俺らのこれも普通に虐待だろ。」
「確かに~!!!普通に虐待だよね!!!」
私達にしか笑えないネタで今日も笑い合った。
増田財閥の秘書の“家”は、可哀想な子どもを基本的には1人しか生まない。
でも、私にはお兄ちゃんがいてくれて良かったと思いながら。
お兄ちゃんにとっても、私がいて少しは良かったと思ってくれていることを願いながら。
小さな頃から“ダメ秘書”と言われ続けて来たけれど、それでもお兄ちゃんからの愛は確かに感じている。
その愛が演技でも嘘でもなく、少しは本当であるように。
少し前まではそんなことを望んだことなんてないのに、お兄ちゃんが言う通り私は欲張りになったのかもしれない。
青さんと再会をしてから私は私ではなくなったような気がする。
でも・・・
本当の私は、昔からこんな感じなのかもしれないとも思えて。
最近の私の感情はジェットコースターのような状態だけど、今の私は結構好きな自分のような気もする。
そんな風に思える自分のことを“嬉しい”と思いながら、お兄ちゃんの家から青さんの家へと帰っていく。
見上げた夜の空には、ハッキリと見える星が1つ輝いていた。
それにクビを言い渡された方のことも想像してみろ、病むぞ。」
「友実ちゃん、またバイトをクビになった?」
「今はどんな職種もコミュ力を求められることも多いからな。」
「お兄ちゃんの会社で雇ってあげれば良いのに。」
「何言ってるんだよ、俺はまだ大学生だろ?」
「それまだやってるのウケるよね。
そろそろバラして良いんじゃない?」
「そしたら俺への依存がなくなって、また“お兄ちゃん”の方に行くだろ。」
「確かに・・・。」
「お前、さっきから何やってるの?
ソファーの上に鞄の中身を次から次に出して。」
「青さんから貰ったハンカチが見当たらなくてさ。
コートのポケットにずっと入れてたつもりなんだけど、出したのかな~・・・。」
「部屋の中が段ボールだらけなんだろ?
そこは?」
「うん、そっちも探してみる。」
「そういえば、野々からはその後また連絡あった?」
「ないよ、青さんとの結婚生活が終わったら私から連絡してみる。」
「増田財閥の為にまた動けそうな女だった?」
「どうだろう。
今は何の仕事をしているのかも聞けなかったから、今度聞いてみるよ。
それよりもアエさんの行方は分かった?
おばあちゃん、そろそろ危ないんじゃない?」
「今探してる最中。
アエさんに暇を出してからもう随分と経ったからな。」
「そうだね、アエさんまだ生きてるのかな・・・。
鶴さんもまだ生きてるのかな~。
鶴さんとも会わせてあげたいな。」
「欲張りになったな、望。」
「私の望みじゃないよ、おばあちゃんの望みを代弁してあげてるの!」
「そういうことにしておく。」
バッグの中に散らかした物を片付けていきながらお兄ちゃんに色んな報告をしていく。
お兄ちゃんからも色んな話を聞きながら。
お兄ちゃんからの話はどこからどこまでが本当の話なんだろうとも思いながら。
「本当のところはお兄ちゃんが1番可哀想な人だよね。」
「当たり前だろ、俺以上に可哀想な奴がいたらそいつを連れてこいよ。」
「それは結構いると思うよ、虐待とかさ。」
「俺らのこれも普通に虐待だろ。」
「確かに~!!!普通に虐待だよね!!!」
私達にしか笑えないネタで今日も笑い合った。
増田財閥の秘書の“家”は、可哀想な子どもを基本的には1人しか生まない。
でも、私にはお兄ちゃんがいてくれて良かったと思いながら。
お兄ちゃんにとっても、私がいて少しは良かったと思ってくれていることを願いながら。
小さな頃から“ダメ秘書”と言われ続けて来たけれど、それでもお兄ちゃんからの愛は確かに感じている。
その愛が演技でも嘘でもなく、少しは本当であるように。
少し前まではそんなことを望んだことなんてないのに、お兄ちゃんが言う通り私は欲張りになったのかもしれない。
青さんと再会をしてから私は私ではなくなったような気がする。
でも・・・
本当の私は、昔からこんな感じなのかもしれないとも思えて。
最近の私の感情はジェットコースターのような状態だけど、今の私は結構好きな自分のような気もする。
そんな風に思える自分のことを“嬉しい”と思いながら、お兄ちゃんの家から青さんの家へと帰っていく。
見上げた夜の空には、ハッキリと見える星が1つ輝いていた。
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