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最上さんがそう言って、私の目の前にしゃがみ晃孝堂の饅頭をまた1つ手に取り私に差し出してきた。
「私が大学に上がる直前でポックリ死んでしまったおばあちゃんからの言葉を、それまで孫の中で1人だけ好き勝手に生きてきた私が誰よりも強く持ち続け、鶴さんの孫娘を探し出し此処まで千縁には秘密にして一緒に歩いてきました。」
「アエさん、死んじゃったの・・・?」
それにはまた大きく泣いた私に最上さんは何度も頷き、目に涙を溜めながらも笑った。
「おばあちゃんは死んでしまうその瞬間まで言っていました。
"加藤の"家”の"希望”が必ずおばあちゃんが残している"愛”を見付け出す。
だから見付けられたその時は、おばあちゃんの代わりにその"希望”の審査をして。
千年でもなく万年先の未来まで、一緒に歩いて行けば普通では歩けないような道を歩かせてくれる人間かどうか。
生きるからには楽しく生きない。
お金も食べる物も着る物もなくたって、その足があれば楽しい道を選んで歩くことが出来る。
たった1度の短い人生、でも万年先まで続くような普通ではない楽しい道を選びなさい。”」
私に晃孝堂の饅頭を差し出し続ける最上さんが困ったように笑った。
「"希望”の"希”の方は、千縁のことを見付けたタイミングで私のことにも気付きましたが、一緒に歩くには全然楽しそうに見えなかったので私の審査には落ちましたが。」
キラキラとした目で、何処までも強い目で、アエさんとよく似た瞳で私のことを見詰める最上さんが大きく笑って、言った。
「私が代わりにやっておきますから、望さんは晃孝堂のお饅頭でも食べてきてください!!」
"私が代わりにやっておきますから、亀さんは晃孝堂のお饅頭でも食べてきてください!!”
そう言って、おばあちゃんが休む時間を作ってくれていたアエさんの姿ともまた重なり、私は嗚咽を漏らしながら泣き・・・
晃孝堂の饅頭を最上さんの手と一緒に掴んだ。
"アエさんとはね、おばあちゃんのご主人様が奥様との初夜を迎えた日、おばあちゃんが泣きながら夜の道を彷徨い続けていた時に出会ったの。”
"もう歩いていられなくて、立ってもいられなくて、その場に泣き崩れた時に現れたのがアエさん。
1番下の弟をおぶって寝かし付けていたまだ幼い頃のアエさん。”
"そんなアエさんに泣きながら"加藤亀”として拾われたことを嘆いた。
愛している人と結ばれない人生になってしまった"加藤亀”のことを嘆き続けた。”
"そんなおばあちゃんにアエさんは普通のことを言ってきてね、本当に普通のことを。
それにはおばあちゃんはまた叫んだ。
この"家”のこともおばあちゃん自身のことも理解して貰えることなんてないし、受け止めてくれる人もいないって。”
"まだ幼かったアエさんにそんなことを叫びながら嘆いたおばあちゃんのことをアエさんは見捨てず、手まで差し伸ばしてくれて夜が明けるまで一緒にいてれた。
ずっと繋いでくれていたアエさんの手が凄く温かかったのを今でも覚えてる。”
"その数年後、偶然にも今度はお姉さんをおぶりながら倒れたアエさんに、今度はおばあちゃんが手を差し伸ばした。
照之と一緒に。”
"照之はね、おばあちゃんに"頑張れ”って言ったの。
小関の"家”よりも小さな息子達よりも、死んでしまいそうになっているご主人様のことだけを愛していた奥様と離縁したご主人様も言ってはくれないその言葉を。
おばあちゃんはね、それが凄く嬉しくて・・・。
凄く凄く嬉しくて・・・。”
"ですよね~!!亀さん、完全に恋をした女の子の顔になってましたもん!!
あの夜はこの世の終わりみたいだった亀さんがご主人様以外の男に一瞬で恋に落ちていて!!
これは私が絶対にくっつけてやらなければ!!と思ってフラフラの足で私も立ち上がりましたよ!!”
"「私はアエといいます。
若鮎のようにという想いでつけられた“アユ”という名前ですが、”ユ”が“エ”に見える程の字しか書けない父の元に生まれてしまって。
そんな家の私ですが、何かのご縁ですし私もご一緒していいですか?」ってね。"
”そんなにハッキリ覚えているんですか!?
なんか恥ずかしくなってきました!!"
”凄く格好良かったから忘れられないよ。
アエさんのあの時の姿はきっとずっと忘れない。
それから本当に、ずっと”ご一緒"してくれているアエさんのことを、私はボケたとしても絶対に忘れない。"
”少しはボケた方が良いですよ!!
その方が子どもも孫も少しはしっかりするだろうし!!"
”それって、うちの息子と孫がしっかりしてないってこと?"
”えっ・・・、あ~・・・・"
小さな頃に見たそんな幸せな光景が久しぶりに浮かんできた。
昨日から久しぶりに、思い出の中でだけだどアエさんにこんなに会えている。
あんなに元気しかないようなアエさんが、死んでしまったというアエさんが・・・
"だから待っていてください、望ちゃん。
望ちゃんがアエのことを見付けられるくらい大きくなった時、アエは必ず戻りますから。”
そう言って抱き締めてくれた時のアエさんの顔が最上さんの顔に重なった・・・。
「私が大学に上がる直前でポックリ死んでしまったおばあちゃんからの言葉を、それまで孫の中で1人だけ好き勝手に生きてきた私が誰よりも強く持ち続け、鶴さんの孫娘を探し出し此処まで千縁には秘密にして一緒に歩いてきました。」
「アエさん、死んじゃったの・・・?」
それにはまた大きく泣いた私に最上さんは何度も頷き、目に涙を溜めながらも笑った。
「おばあちゃんは死んでしまうその瞬間まで言っていました。
"加藤の"家”の"希望”が必ずおばあちゃんが残している"愛”を見付け出す。
だから見付けられたその時は、おばあちゃんの代わりにその"希望”の審査をして。
千年でもなく万年先の未来まで、一緒に歩いて行けば普通では歩けないような道を歩かせてくれる人間かどうか。
生きるからには楽しく生きない。
お金も食べる物も着る物もなくたって、その足があれば楽しい道を選んで歩くことが出来る。
たった1度の短い人生、でも万年先まで続くような普通ではない楽しい道を選びなさい。”」
私に晃孝堂の饅頭を差し出し続ける最上さんが困ったように笑った。
「"希望”の"希”の方は、千縁のことを見付けたタイミングで私のことにも気付きましたが、一緒に歩くには全然楽しそうに見えなかったので私の審査には落ちましたが。」
キラキラとした目で、何処までも強い目で、アエさんとよく似た瞳で私のことを見詰める最上さんが大きく笑って、言った。
「私が代わりにやっておきますから、望さんは晃孝堂のお饅頭でも食べてきてください!!」
"私が代わりにやっておきますから、亀さんは晃孝堂のお饅頭でも食べてきてください!!”
そう言って、おばあちゃんが休む時間を作ってくれていたアエさんの姿ともまた重なり、私は嗚咽を漏らしながら泣き・・・
晃孝堂の饅頭を最上さんの手と一緒に掴んだ。
"アエさんとはね、おばあちゃんのご主人様が奥様との初夜を迎えた日、おばあちゃんが泣きながら夜の道を彷徨い続けていた時に出会ったの。”
"もう歩いていられなくて、立ってもいられなくて、その場に泣き崩れた時に現れたのがアエさん。
1番下の弟をおぶって寝かし付けていたまだ幼い頃のアエさん。”
"そんなアエさんに泣きながら"加藤亀”として拾われたことを嘆いた。
愛している人と結ばれない人生になってしまった"加藤亀”のことを嘆き続けた。”
"そんなおばあちゃんにアエさんは普通のことを言ってきてね、本当に普通のことを。
それにはおばあちゃんはまた叫んだ。
この"家”のこともおばあちゃん自身のことも理解して貰えることなんてないし、受け止めてくれる人もいないって。”
"まだ幼かったアエさんにそんなことを叫びながら嘆いたおばあちゃんのことをアエさんは見捨てず、手まで差し伸ばしてくれて夜が明けるまで一緒にいてれた。
ずっと繋いでくれていたアエさんの手が凄く温かかったのを今でも覚えてる。”
"その数年後、偶然にも今度はお姉さんをおぶりながら倒れたアエさんに、今度はおばあちゃんが手を差し伸ばした。
照之と一緒に。”
"照之はね、おばあちゃんに"頑張れ”って言ったの。
小関の"家”よりも小さな息子達よりも、死んでしまいそうになっているご主人様のことだけを愛していた奥様と離縁したご主人様も言ってはくれないその言葉を。
おばあちゃんはね、それが凄く嬉しくて・・・。
凄く凄く嬉しくて・・・。”
"ですよね~!!亀さん、完全に恋をした女の子の顔になってましたもん!!
あの夜はこの世の終わりみたいだった亀さんがご主人様以外の男に一瞬で恋に落ちていて!!
これは私が絶対にくっつけてやらなければ!!と思ってフラフラの足で私も立ち上がりましたよ!!”
"「私はアエといいます。
若鮎のようにという想いでつけられた“アユ”という名前ですが、”ユ”が“エ”に見える程の字しか書けない父の元に生まれてしまって。
そんな家の私ですが、何かのご縁ですし私もご一緒していいですか?」ってね。"
”そんなにハッキリ覚えているんですか!?
なんか恥ずかしくなってきました!!"
”凄く格好良かったから忘れられないよ。
アエさんのあの時の姿はきっとずっと忘れない。
それから本当に、ずっと”ご一緒"してくれているアエさんのことを、私はボケたとしても絶対に忘れない。"
”少しはボケた方が良いですよ!!
その方が子どもも孫も少しはしっかりするだろうし!!"
”それって、うちの息子と孫がしっかりしてないってこと?"
”えっ・・・、あ~・・・・"
小さな頃に見たそんな幸せな光景が久しぶりに浮かんできた。
昨日から久しぶりに、思い出の中でだけだどアエさんにこんなに会えている。
あんなに元気しかないようなアエさんが、死んでしまったというアエさんが・・・
"だから待っていてください、望ちゃん。
望ちゃんがアエのことを見付けられるくらい大きくなった時、アエは必ず戻りますから。”
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