【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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そんな初めて知る話には驚いていると、銀君は不満そうな顔で青さんの方を見た。



「俺の家族全員が"可哀想”って煩いくらいに言ってくるし、学校の人達もたまに"可哀想”って顔で見るんだよ。
小さな頃に耳をつける手術はしてあるけど、いつもすぐに自分から言ってたからみんな知ってるし。
そんな中、和希だけはめちゃくちゃ普通の顔で俺の耳を見てきて。
それだけじゃなくてめっっっっちゃ感心した顔で俺の耳をマジマジと見てきて、”凄いな、全然分からない”って本気で言ってきて。
そこには"可哀想”の感情なんて一切なくて、俺は凄く嬉しかった。」



「そんな反応の奴は普通にいるだろ。」



「俺の周りには1人もいなかったから。
友実ちゃんは"ふ~ん”って感じでそれも面白かったけど、俺は和希のその反応が凄く嬉しかった。
・・・・凄く、嬉しかったんだぁ。」



銀君が本当に嬉しそうに笑ったからか、お兄ちゃんも普通に笑った。



それからまたみんなの方を見てゆっくりと、深く、お辞儀をした。



「増田清掃の代表取締役ではありますが俺は何も出来ません。
ですが俺には幸いなことに妹と友達がいます。
俺の代わりとして妹と友達を此処に残していきますので、一美のことをよろしくお願い致します。
一美が小関の”家"の長女として安倍幸治(こうじ)と結婚して幸せな女になれるよう、ワンスターエージェントの掃除屋の皆様で、一美のことを幸せにしてやってください。」



深く深く頭を下げているお兄ちゃんからのその言葉には泣きたくなった。



泣きそうになった、その時・・・



これまで一言も喋らなかった青さんが椅子から勢い良く立ち上がった。



そして・・・



「違うだろ、和希。」



青さんは銀君のことを押し退けてお兄ちゃんの頭を強引に上げさせた。



珍しく驚いているお兄ちゃんのことを青さんが凄く怒った顔で見下ろしている。



何でか凄く怒った顔をしている青さんが、言った。



「お嬢様のことを幸せにするのはその安倍っていう男でもなければ俺の所の掃除屋でもない、お前だろ、和希。」



青さんがお兄ちゃん、そう・・・言って・・・



「普通にしてたら結婚なんて出来ないようなその男とお嬢様のことを結婚させてやりたいって、お嬢様のことを幸せにしてやりたいって、そう思ってお前は俺の所に来たんだろ?
増田清掃の社長であるお前がそう思って、他所の掃除屋のこいつらに頭まで下げたんだろ?」



そんな言葉をお兄ちゃんに渡してくれて・・・



「お前が愛してる小関一美のことを本当の意味で幸せにしてやるのはお前だ、和希。
お嬢様がそれを知ることがないまま死んだとしても、小関一美のことを幸せにした男は加藤和希だということを俺は覚えててやるから。」



それで、私は・・・泣いた。



私”も"、泣いた・・・。



お兄ちゃんと一緒に、泣いた。



そんなお兄ちゃんにチロちゃんが叫んだ。



「私も覚えてます!!絶対に忘れません!!」



そしたら・・・



「仕方ねーから俺も覚えててやるよ。
こんなに可愛い顔をした男に泣かれたら忘れたくても忘れられねーよ、竜也よりも花音みたいな顔しやがって。」



守君がそう言うと、他のみんなも笑いながら「俺も!!」「私も!!」と続けてくれた。



それには青さんが大きな声で笑う。



「良かったな、和希!!
俺がボケたとしても他の奴らがこんなに覚えてるなら安心だろ!!」



「・・・・・・・っ」



自分の顔を片手で隠しながら泣くお兄ちゃんに、青さんは意地悪な顔で笑った。



「でも、難しい案件になりそうだから俺に出来るか・・・。」



そう言った青さんにお兄ちゃんは泣きながら、でも楽しそうに笑いながら言った。



「出来るだろ、青さん。
青さんなら簡単だろ?」



それには青さんが大きな大きな声で笑った。



「俺の指導員だった”お兄ちゃん"がそう言うなら間違いねーな!!!
俺になら出来るわ!!簡単に出来る案件だ!!!」



私のお兄ちゃんは加藤和希。
小関の”家"の秘書、加藤の”家"に生まれた。



生まれる前から完璧な秘書になる為に育てれてきたお兄ちゃんは、愛している女の子である一美さんのことを女の子として幸せにしてあげることは出来ない、してはいけない人生なはずだった。



そんな地獄でしかない世界で死んだように生き続けるだけのはずだった。



なのに・・・



それなのに・・・



青さんと銀君が喧嘩をしている姿をこんなにも幸せそうな顔で眺めている。



一美さんのことを1人の女としてお兄ちゃんが幸せに出来る道を、青さんが作ってあげたから・・・。



この空間の中だけで、創り上げてくれたから・・・。



”青さんはやっぱり凄いね・・・。"



”青さんはやっぱり凄くて・・・"



”どうしよう、私・・・。"



”これ以上、青さんのことを好きにならせないでよ・・・。"



”青さんなら私からの”愛してる"も受け取ってくれるかもしれないなんて、少しでも思わせないでよ・・・。"



お兄ちゃんがあんなに幸せそうに笑っている顔を見ることが出来てこんなにも嬉しいはずなのに、こんなにも苦しくなった。



こんなにも悲しくなった。



こんなにも、虚しくなった。



”一平さんの第2ボタン"を握り締める私のことを、お兄ちゃんはチラッとだけど見てきた。



でも、私はやっぱり”ダメ秘書"なので、お兄ちゃんが心の中で何て言っていたかまでは分らなかった。








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