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2人で無言のまま電車に揺られる。
真夏だから窓ガラスは鏡のようにはならない。
元気さんの姿を見えないことにホッとしながら、まだまだ暗くならない真夏の夜の空を眺め続ける。
あの後、私は何も言わずに歩きだした。
何も言えなかった。
少しでも口から“何か”の言葉を出したらこの目から涙が流れてしまいそうで。
何も言えない私に元気さんはついてきた。
会社の最寄り駅まで、電車の中まで、家の最寄り駅まで。
そして、“ゆきのうえ商店街”のアーチの下まで。
ついてきたというより、ほぼ最後まで同じ目的地なので一緒に帰ったことになってしまう。
「俺、ここは通れないから遠回りして貰えないかな・・・?」
“ゆきのうえ商店街”のアーチを私が一歩くぐった時にそう言われた。
その言葉には小さく笑いながら聞いた。
「今も“結子さん”があの家にいるんですか?」
宝田さんの娘さんがあの可愛い女の人のことを“結子ちゃん”と言っていたのを思い出しながら聞くと、元気さんは“ゆきのうえ商店街”の向こう側に視線を移しながら答えた。
「今いるかは分からないけど。」
そう答えながらも、キラキラと輝きだしたような目で“ゆきのうえ商店街”の向こう側を眺めている。
結子さんが“今いるかは分からない”から、ここは通れないらしい。
私と一緒に帰るところは見られたくないらしい。
それにまた小さく笑いながら、私はもう一歩だけ進み元気さんに振り返った。
「お疲れ様でした。」
それだけ言って前を向いて歩きだした。
ここまで一緒に帰った事実には泣きそうになったけど、笑っておいた。
誰も私の顔なんて見ていないけど、それでも笑っておいた。
「美鼓ちゃん!!!」
元気さんが私を“美鼓ちゃん”と呼び、それには足を止めてしまいそうになる。
でも足を止めることなく進んでいく。
「俺、早く偉くなるから・・・!!
その約束だけは絶対に守るから・・・!!
ごめん・・・!!
約束、俺が守れなくて本当にごめん・・・!!」
そんな元気さんの言葉を背中で聞きながら、目に溜まった涙を流すことなく歩き続けた。
真夏だから窓ガラスは鏡のようにはならない。
元気さんの姿を見えないことにホッとしながら、まだまだ暗くならない真夏の夜の空を眺め続ける。
あの後、私は何も言わずに歩きだした。
何も言えなかった。
少しでも口から“何か”の言葉を出したらこの目から涙が流れてしまいそうで。
何も言えない私に元気さんはついてきた。
会社の最寄り駅まで、電車の中まで、家の最寄り駅まで。
そして、“ゆきのうえ商店街”のアーチの下まで。
ついてきたというより、ほぼ最後まで同じ目的地なので一緒に帰ったことになってしまう。
「俺、ここは通れないから遠回りして貰えないかな・・・?」
“ゆきのうえ商店街”のアーチを私が一歩くぐった時にそう言われた。
その言葉には小さく笑いながら聞いた。
「今も“結子さん”があの家にいるんですか?」
宝田さんの娘さんがあの可愛い女の人のことを“結子ちゃん”と言っていたのを思い出しながら聞くと、元気さんは“ゆきのうえ商店街”の向こう側に視線を移しながら答えた。
「今いるかは分からないけど。」
そう答えながらも、キラキラと輝きだしたような目で“ゆきのうえ商店街”の向こう側を眺めている。
結子さんが“今いるかは分からない”から、ここは通れないらしい。
私と一緒に帰るところは見られたくないらしい。
それにまた小さく笑いながら、私はもう一歩だけ進み元気さんに振り返った。
「お疲れ様でした。」
それだけ言って前を向いて歩きだした。
ここまで一緒に帰った事実には泣きそうになったけど、笑っておいた。
誰も私の顔なんて見ていないけど、それでも笑っておいた。
「美鼓ちゃん!!!」
元気さんが私を“美鼓ちゃん”と呼び、それには足を止めてしまいそうになる。
でも足を止めることなく進んでいく。
「俺、早く偉くなるから・・・!!
その約束だけは絶対に守るから・・・!!
ごめん・・・!!
約束、俺が守れなくて本当にごめん・・・!!」
そんな元気さんの言葉を背中で聞きながら、目に溜まった涙を流すことなく歩き続けた。
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