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「会長、可愛くて良い子だったな。」
両手をポケットに入れ夏の夜の空を見上げていたら新之助がそう言ってきた。
その言葉を聞いて会長達がもういなくなったことが分かる。
それでも俺はこの空から目を離せなかった。
この黒い空を見上げて必死に上書きをする。
約1年ぶりに会った会長。
目にアイテープをして可愛く化粧をしていた。
服もなんだかお洒落な服を着ていて、俺が知っている会長とも違って見えた。
あれは“カヤ”ではなく“会長”だった。
俺の“本当に好きな女の子のカヤ”ではなく、“会長”だった。
他の誰かと付き合っている会長だった。
見た目も良くて勉強も仕事も出来る、そのうえ偉くもある男と付き合っている会長だった。
その会長の姿を消す為に、俺は夏の夜の空を見詰め続ける。
会長の姿をこの黒で上書きをする。
「お前、幼馴染み以外の奴にはネコが嫌いなことも隠すような奴だろ?
会長と仲が良かったなら、会長みたいな子でもいいんじゃん?」
新之助がそんなことを言って俺が上書きしていくのを邪魔してくる。
「会長は全然俺のタイプじゃない。」
「それはそうだろうけどさ、現実の世界に夏夜の“天使”はいないんだろ?
現実の世界で夏夜の天使になってくれるような子を探してみろよ。」
「現実の世界でもちゃんといる。」
両手を強く握り締め、“会長”の姿を黒で塗り潰し終えた。
そのまま目を閉じ“カヤ”の姿を思い浮かべる。
「訓練したからこの現実の世界でもちゃんと思い浮かべることが出来る。」
そう言ってからゆっくりと目を開け、この街並みを見た。
そしたら・・・
“カヤ”はいなくなってしまった。
高校の中では見えるのに・・・。
あそこではちゃんと見えるのに・・・。
「帰る・・・。」
“カヤ”がいる601号室へと帰る為に歩き出す。
「夏夜・・・!!」
新之助が俺の名前を呼び俺の腕を掴んできた。
呆然としながら新之助の顔を見ると、めちゃくちゃ心配した顔で俺のことを見ている。
その向こう側では他の幼馴染み達も同じ表情を浮かべている。
その幼馴染み達に俺は笑い掛けた。
「あの部屋の中ではちゃんと生きてる。
あの壁に魂を込められたから、俺の“天使”はあの部屋の中では本当に生きてる。
だからもうそれでいい・・・。
俺をあの部屋の中から引きずり出さないで・・・。」
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両手をポケットに入れ夏の夜の空を見上げていたら新之助がそう言ってきた。
その言葉を聞いて会長達がもういなくなったことが分かる。
それでも俺はこの空から目を離せなかった。
この黒い空を見上げて必死に上書きをする。
約1年ぶりに会った会長。
目にアイテープをして可愛く化粧をしていた。
服もなんだかお洒落な服を着ていて、俺が知っている会長とも違って見えた。
あれは“カヤ”ではなく“会長”だった。
俺の“本当に好きな女の子のカヤ”ではなく、“会長”だった。
他の誰かと付き合っている会長だった。
見た目も良くて勉強も仕事も出来る、そのうえ偉くもある男と付き合っている会長だった。
その会長の姿を消す為に、俺は夏の夜の空を見詰め続ける。
会長の姿をこの黒で上書きをする。
「お前、幼馴染み以外の奴にはネコが嫌いなことも隠すような奴だろ?
会長と仲が良かったなら、会長みたいな子でもいいんじゃん?」
新之助がそんなことを言って俺が上書きしていくのを邪魔してくる。
「会長は全然俺のタイプじゃない。」
「それはそうだろうけどさ、現実の世界に夏夜の“天使”はいないんだろ?
現実の世界で夏夜の天使になってくれるような子を探してみろよ。」
「現実の世界でもちゃんといる。」
両手を強く握り締め、“会長”の姿を黒で塗り潰し終えた。
そのまま目を閉じ“カヤ”の姿を思い浮かべる。
「訓練したからこの現実の世界でもちゃんと思い浮かべることが出来る。」
そう言ってからゆっくりと目を開け、この街並みを見た。
そしたら・・・
“カヤ”はいなくなってしまった。
高校の中では見えるのに・・・。
あそこではちゃんと見えるのに・・・。
「帰る・・・。」
“カヤ”がいる601号室へと帰る為に歩き出す。
「夏夜・・・!!」
新之助が俺の名前を呼び俺の腕を掴んできた。
呆然としながら新之助の顔を見ると、めちゃくちゃ心配した顔で俺のことを見ている。
その向こう側では他の幼馴染み達も同じ表情を浮かべている。
その幼馴染み達に俺は笑い掛けた。
「あの部屋の中ではちゃんと生きてる。
あの壁に魂を込められたから、俺の“天使”はあの部屋の中では本当に生きてる。
だからもうそれでいい・・・。
俺をあの部屋の中から引きずり出さないで・・・。」
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