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「副社長、話長かったね~!!!」
あの後、会社全体の話や俺と明に何を求めているかの説明をされた。
会社自体がデカすぎるので、終わる頃には7時過ぎになっていて・・・
そろそろ出社してくる社員もいるからと、今日は帰された。
朝7時過ぎ、夜の店がある繁華街ではなくオフィスビルが建ち並ぶ街。
そこを歩く夜の人間の姿、アヤメと明の姿は異様だったはず。
でも・・・気分が良かった・・・。
少しだけ近付けた気になれたからかもしれない。
あの男を殺すための“権力”に、少しだけでも近付いたような気になれていた・・・。
「電車混んでそうだから、タクシーで帰る~?」
明に聞かれ、明を見る。
明は“男”だった・・・。
女の格好をして女の口調をしているけれど、明は“男”だった。
そんな明に笑いかける。
「先、帰ってろよ。
オフィス街とやらをブラブラしてから帰る。」
俺がそう言うと明は少し驚いていた顔をした後、笑った。
明は“アヤメ”を守ってくれていた。
あの男が何度も家に来ていたから。
極上に良い女であるオバサンが協力してくれ、“ママ”に監護権があったけれど親権者はあの男だった。
小学校まではあの狭い部屋に住んでいたので何度かあの男が俺とヒーローの姉ちゃんを連れていこうとしていた。
それを皆で・・・本当に皆で守ってくれていた。
小学校生活では明が。
“女”の明が常に守ってくれていた。
“アヤメ”はあまりにも可愛いらしく、あの男だけではなく近所の変態どもから狙われていた。
凄い治安の悪い地域に住んでいたから。
そんなアヤメを明が守ってくれていた。
“女”なのに、心は誰よりも“女の子”なのに、“男”の空気を纏った不思議な“何か”になってアヤメを守ってくれていた。
それは、今も・・・。
アヤメはホステス、明はゲイバーで働き学費を稼ぎ、同じ大学に通っていた。
大学以降の俺は完全にアヤメの姿だけだったので、明は“男”のままだった。
強くならないといけないと思った。
“女”としても“男”としても、強くならないといけないと思った。
でないと、俺はあの男を殺せない。
でないと、明は“男”のままでいる。
俺を守るために・・・。
1人でもあの男を殺しにいけるように、俺は強くならないといけないと思った。
明は“女の子”だから・・・。
あの男を殺しに行くのに、“女の子”の明を連れて行こうと思うような奴に、俺は誰からも育てられていないから・・・。
少しずつでも、強くならないといけないと思った・・・。
藤岡ホールディングスに採用され、やっとそこまで思えた・・・。
藤岡ホールディングスのビルの前でタクシーに乗り込む明を見送った後、“アヤメ”は1人になった。
12月の朝のオフィス街、少しクリスマスの飾り付けがされているオフィス街。
暗い色のコートや上着、暗い色の髪の毛をした群れの中・・・
真っ白な“アヤメ”が歩き始める・・・。
“アヤメ”でいる時の見本はヒーローのお姉ちゃん。
美しい美しい真っ赤な“紅葉”。
“アヤメ”と“剛士”は別人だった。
だって、見本が違うから。
“アヤメ”の見本はヒーローのお姉ちゃんで、
“剛士”の見本はヒーローのお兄ちゃんだから。
2人は血も繋がっていなければきょうだいではない。
ヒーローのお兄ちゃんは“きょうだい”と言っているけれど、俺が初めて会った時から2人は恋人同士だった。
きょうだいで恋人にはなれない。
だから、あの2人はきょうだいでもなく全くの別人。
その別人を見本にしているから、“アヤメ”と“剛士”は別人だった。
真っ白なロングドレスとファー姿の“アヤメ”。
この真っ白なロングドレスは、アヤメの勝負服だった。
クラブでNo.1になった時にヒーローのお兄ちゃんとヒーローのお姉ちゃんがプレゼントしてくれた。
勝負時には必ずこの真っ白なロングドレスを着る。
あのヒーロー2人から貰った服が俺の気持ち悪い身体を纏ってくれる。
それだけで、あの男の手の残像が見えなくなるような気がした。
そんな勝負服である真っ白なロングドレスを着て、12月の寒い朝・・・
明はいないけれど、そのひんやりとした空気を思いっきり吸い込んだ。
そして、ゆっくりと吐き出し・・・
1歩、歩き出そうとした・・・。
歩き出そうとした時・・・
背中から強めの風が拭いた。
これがビル風なのかと思いながらその風の先を見てみると・・・
カフェがあった。
どこにでもあるチェーン店のカフェ。
朝の7時過ぎなのに、オフィス街のカフェはもう開いているらしい。
カフェインを飲むことはしないので、付き合い程度でしかカフェに入ることはなかった。
でも、俺は・・・
さっき、少しだけ変われた。
あの極上に良い“女の子”から“男”だけど“アヤメ”だと言って貰い、副社長や秘書から・・・かぞく以外で初めて“アヤメ”が“男”であると知って貰えた。
変わろうと、思った・・・。
変わりたいと思った・・・。
強い“女”に、強い“男”に、変わりたいと思った・・・。
あの後、会社全体の話や俺と明に何を求めているかの説明をされた。
会社自体がデカすぎるので、終わる頃には7時過ぎになっていて・・・
そろそろ出社してくる社員もいるからと、今日は帰された。
朝7時過ぎ、夜の店がある繁華街ではなくオフィスビルが建ち並ぶ街。
そこを歩く夜の人間の姿、アヤメと明の姿は異様だったはず。
でも・・・気分が良かった・・・。
少しだけ近付けた気になれたからかもしれない。
あの男を殺すための“権力”に、少しだけでも近付いたような気になれていた・・・。
「電車混んでそうだから、タクシーで帰る~?」
明に聞かれ、明を見る。
明は“男”だった・・・。
女の格好をして女の口調をしているけれど、明は“男”だった。
そんな明に笑いかける。
「先、帰ってろよ。
オフィス街とやらをブラブラしてから帰る。」
俺がそう言うと明は少し驚いていた顔をした後、笑った。
明は“アヤメ”を守ってくれていた。
あの男が何度も家に来ていたから。
極上に良い女であるオバサンが協力してくれ、“ママ”に監護権があったけれど親権者はあの男だった。
小学校まではあの狭い部屋に住んでいたので何度かあの男が俺とヒーローの姉ちゃんを連れていこうとしていた。
それを皆で・・・本当に皆で守ってくれていた。
小学校生活では明が。
“女”の明が常に守ってくれていた。
“アヤメ”はあまりにも可愛いらしく、あの男だけではなく近所の変態どもから狙われていた。
凄い治安の悪い地域に住んでいたから。
そんなアヤメを明が守ってくれていた。
“女”なのに、心は誰よりも“女の子”なのに、“男”の空気を纏った不思議な“何か”になってアヤメを守ってくれていた。
それは、今も・・・。
アヤメはホステス、明はゲイバーで働き学費を稼ぎ、同じ大学に通っていた。
大学以降の俺は完全にアヤメの姿だけだったので、明は“男”のままだった。
強くならないといけないと思った。
“女”としても“男”としても、強くならないといけないと思った。
でないと、俺はあの男を殺せない。
でないと、明は“男”のままでいる。
俺を守るために・・・。
1人でもあの男を殺しにいけるように、俺は強くならないといけないと思った。
明は“女の子”だから・・・。
あの男を殺しに行くのに、“女の子”の明を連れて行こうと思うような奴に、俺は誰からも育てられていないから・・・。
少しずつでも、強くならないといけないと思った・・・。
藤岡ホールディングスに採用され、やっとそこまで思えた・・・。
藤岡ホールディングスのビルの前でタクシーに乗り込む明を見送った後、“アヤメ”は1人になった。
12月の朝のオフィス街、少しクリスマスの飾り付けがされているオフィス街。
暗い色のコートや上着、暗い色の髪の毛をした群れの中・・・
真っ白な“アヤメ”が歩き始める・・・。
“アヤメ”でいる時の見本はヒーローのお姉ちゃん。
美しい美しい真っ赤な“紅葉”。
“アヤメ”と“剛士”は別人だった。
だって、見本が違うから。
“アヤメ”の見本はヒーローのお姉ちゃんで、
“剛士”の見本はヒーローのお兄ちゃんだから。
2人は血も繋がっていなければきょうだいではない。
ヒーローのお兄ちゃんは“きょうだい”と言っているけれど、俺が初めて会った時から2人は恋人同士だった。
きょうだいで恋人にはなれない。
だから、あの2人はきょうだいでもなく全くの別人。
その別人を見本にしているから、“アヤメ”と“剛士”は別人だった。
真っ白なロングドレスとファー姿の“アヤメ”。
この真っ白なロングドレスは、アヤメの勝負服だった。
クラブでNo.1になった時にヒーローのお兄ちゃんとヒーローのお姉ちゃんがプレゼントしてくれた。
勝負時には必ずこの真っ白なロングドレスを着る。
あのヒーロー2人から貰った服が俺の気持ち悪い身体を纏ってくれる。
それだけで、あの男の手の残像が見えなくなるような気がした。
そんな勝負服である真っ白なロングドレスを着て、12月の寒い朝・・・
明はいないけれど、そのひんやりとした空気を思いっきり吸い込んだ。
そして、ゆっくりと吐き出し・・・
1歩、歩き出そうとした・・・。
歩き出そうとした時・・・
背中から強めの風が拭いた。
これがビル風なのかと思いながらその風の先を見てみると・・・
カフェがあった。
どこにでもあるチェーン店のカフェ。
朝の7時過ぎなのに、オフィス街のカフェはもう開いているらしい。
カフェインを飲むことはしないので、付き合い程度でしかカフェに入ることはなかった。
でも、俺は・・・
さっき、少しだけ変われた。
あの極上に良い“女の子”から“男”だけど“アヤメ”だと言って貰い、副社長や秘書から・・・かぞく以外で初めて“アヤメ”が“男”であると知って貰えた。
変わろうと、思った・・・。
変わりたいと思った・・・。
強い“女”に、強い“男”に、変わりたいと思った・・・。
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