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第一話 俺は、バレーがしたい
しおりを挟む若草武留(わかくさ たける)は、中学時代、ある感情を押し殺していた。
彼は、年の離れた兄が持っていた、ある漫画が好きで、その影響で、自分もあの主人公の様に、はたまたライバル校の素人一年生の様に、バレーで活躍がしたかった。
しかしながら、入学した地元の中学では男子バレー部がなく、仕方なしにオタク仲間の親友と文芸部に入って、その漫画に自分を登場させた二次創作小説を書いていた。
腐女子な文芸部部長に、その小説の三次創作をされるくらい、中々面白い小説だったらしいが、武留が情熱を燃やしたいのは、やっぱりバレーボールだった。
高校は、少し張り切ってリサーチして、昔は全国制覇したが、今は都大会通るかどうかの古豪にした。
あの漫画の主人公の様に、自分が全国に連れて行くんだ! という謎の自信からだった。
「なぁ、キミ、バレー入らない?」
入学初日。
190センチに到達した武留よりは小さいが、180センチ以上はあるような先輩に突如話しかけられた。
「え! 俺、バレーやりたいです!」
先輩は笑って、「利害の一致だな!」と武留をバレー部に招いた。
先輩は、上背のある武留を、上背だけでバレー部に引き入れたようで、中学は文芸部だった、自分はバレーやりたいけど、素人だ。というと、予想はしていたようで、まるであの漫画のライバル校の素人一年生だな! と、部室内は盛り上がった。
どうやら、武留のように漫画に憧れてバレーを始めた部員が多かった、バレー漫画オタク集団の集まりだったようだった。
まあ、現実は物語ほど上手くいくはずもなく、無残にも都大会予選で大敗し、三年は泣きながら高校生活でのバレーボール大会を終え、部活を去っていった。
「なぁ、武留よ」
「なんですか? 水波(みずなみ)先輩」
「上手くいかねぇなぁ」
水波小太郎(こたろう)は元部長から「お前が引っ張っていけ、エース」と部長の座を譲渡された二年エースである。
バレー漫画の主人公側の次期エースに憧れて中学から坊主らしい。
小太郎は顔をぐしゃぐしゃにしながら泣いていた。
「泣かないでくださいよぉ」
小太郎につられて武留もボロボロ泣き出した。
部室の外から奇妙な声がする、と、他の部員たちが出てきたが、もれなく全員がもらい泣きする羽目になった。
しかし、まだ終わってない! と立ち直るのも早かったこのバレー部は春高予選に向けて特訓を開始した。
そんな時だった。
『彼女』が武留のクラスに転校してきたのは……。
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