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第1章 ◆ はじまりと出会いと
番外編2. リィちゃんの誕生日
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『おめでとう~♪おめでとう~♪今日は~大~好き~な、あなたが~生~まれた~記念~日♪』
小さなカップケーキを大皿に丸く並べて、真ん中の一際大きいケーキにはきれいなお花の飴細工。
その大皿を中心に様々なお菓子が色とりどりに載ったテーブルには、ピンクとエメラルドグリーンを基調としたレースとテーブルクロス。
テーブルや椅子には、みずみずしい緑の蔦と淡いピンクのリボンの装飾。
そんなテーブルを囲むように、ふよふよと光の玉がゆっくり漂っています。
今日は、リィちゃんの十四歳の誕生日。
私とリィちゃん、フォルトの三人で「妖精のかまど」でお誕生日会をしています!
『あなたの~新しい~一年も~たくさ~ん、恵みが~あります~よ~う~に~♪』
店員さん達と一緒にお誕生日の歌を歌い終えれば、ぽふっと光の玉が弾けてリィちゃんに降り注ぎます。
キラキラと光のシャワーを浴びて、リィちゃんはとても幸せそうに笑ってくれました。
「お誕生日おめでとう!リィちゃん!」
「ありがとう、クリスちゃん。とってもうれしいわ」
『リリーも十四歳か。時間が経つのは早えーな』
フォルトもどこかうれしそうな声で言いました。
その言葉に、リィちゃんは微笑みを返します。
「ふふ。確かに、ずいぶん経ったわね。フォルトはそれよりもずっと前からグランツ学園にいたのよね」
『まあな~』
二人の会話に首を傾げます。
その会話からして、二人は私が思っている以上に長い間学園にいるような感じです。
フォルトは学園に保護されてたって言ってたから長くいたのはわかるんだけど、リィちゃんはどういうことだろう?
そんな私の疑問に気がついたリィちゃんが答えてくれました。
「クリスちゃんには言ってなかったけど、私はね学園で生まれたの」
「へぇ、そうだったんだ。え?お父さんとお母さん、学園の人?」
そう訊くと、リィちゃんは一瞬暗い顔になりました。でも、すぐにそれは消えてにっこりと笑います。
傍にいるフォルトはちょっとだけ目を伏せて、リィちゃんを見つめていました。
あれ!?なんか間違ったかな!?
「私の両親はね、もういないの。だから、私もフォルトと同じ、保護されていたようなものよ」
「……そ、うだったんだ…」
これはものすごく訊いてはいけないことのような気がしました。
でも、リィちゃんは「気にしないで」と笑って言ってくれたから、小さく頷きました。
「ふふふ、だからね。こうやって、誕生日を祝ってもらうのは初めてよ。私、誕生日を祝うのがこんなに幸せなことだったなんて知らなかったわ」
『そういえばそうだったな』
ふわふわと微笑むリィちゃんに、フォルトが頷きます。
二人のあまりにも普通な反応に絶句します。
ちょっと待って!フォルト、そんなのんきにしちゃダメだよ!
きっとフォルトを睨むと、睨まれた方は訳が分からないという顔で見つめ返してきます。
「……フォルトはリィちゃんの誕生日祝ってあげなかったの?」
『そうだな。……あ、ああ………あ~~…』
フォルトの返事にジト目を返せば、夕焼け色に近い金色の目がだんだん横に泳いでいきます。
自分が祝うという発想はなかったようです。
そんな私達をリィちゃんはくすくすと笑いながら見つめていました。
「クリスちゃん、フォルトを責めないで。実際、私達は生まれた日とかは気にしないの。こうやって誕生日を祝うのは、人間くらいよ」
「えっ、そうなの?」
『クリス…俺達がどれだけの時間を生きると思ってんだ?エルフは知らねーが、精霊には時間の概念がないから日を数えることもしねーよ』
そ、そうなんだ…まさか誕生日を祝うのが人間だけの風習だったとは…。
確かに、エルフや妖精は人間よりも長生きで、私達人間の想像とは違う速さで歳を重ねていきます。
改めて、人間の時間の短さを思い知ります。
リィちゃんもフォルトも気にしてないみたいだけど、それでも、やっぱり誕生日を祝ったことがないなんてダメです!
親友の生まれた日は一緒に喜びたい。
お祝いのケーキや、お花、飾りつけもいっぱいして、リィちゃんの好きなもので誕生日を祝いたい。
だって、大好きな人が生まれた日ですよ?うれしいに決まってるじゃないですか!
むむむ。これからリィちゃんの誕生日は幸せいーっぱいの日にしなくちゃ!
「リィちゃん!これからは私が毎年祝うよ!リィちゃんに何度でもおめでとうを言うからね!」
『俺は仲間に入れてくれないのかよ!?』
両手を力拳しながら宣言するように言うと、焦るようにフォルトが叫びました。
「…だって、フォルトは誕生日、祝わないんでしょう?今までだってそうだったし」
人間以外は祝う習慣がないのだから、無理に巻き込むのも違う気がして、「私が」って言ったのです。
フォルトを仲間はずれにしたわけではありません。
『うぐ、そ、そんなことねーよ!リリーの誕生日なら祝うぞ!クリスと一緒に祝う!!』
フォルトは半ばやけくそな感じで叫びましたが、その目には嘘はないと思いました。
「うん!そうだよね!リィちゃん、私とフォルトが毎年誕生日を祝うからね!」
勢いよくリィちゃんの方に振り返ったら、リィちゃんはとてもびっくりした顔をしていました。
びっくりしすぎてるのか固まっていて、微動だにしません。
「リ、リィちゃん…?」
リィちゃんの顔の前で手を振って見せますが、その目が動くことはありません。
その代わりに、温かな雫がぽろぽろと溢れるように流れました。
その光景に私とフォルトがびっくりしたのは言うまでもないです。
「リィちゃん!?どうしたの!?」
『リリー!?』
「…っ、ふぇ…」
止まらない涙を拭おうともせず、ただただリィちゃんは泣き続けました。
ときどき苦しそうにしゃくりあげるから、こっちまで泣きたくなってしまいます。
滅多に泣かない親友の涙には弱いです。なにもできなくなります。
何の言葉もかけてあげられなくて、私とフォルトはリィちゃんが泣き止むまで待ちました。
店員さんもカウンターの向こうで心配そうにこっちを見ています。
しばらくすると、リィちゃんが落ち着いてきて、店員さんが用意してくれた濡れタオルで顔を拭きます。
ちょっとだけすっきりしたような顔で微笑んでくれたので、フォルトと一緒にほっとしました。
「ごめんなさい。泣くつもりはなかったんだけど…」
「リィちゃん、私、何か嫌なこと言っちゃった…?」
しょぼんとする私に、リィちゃんはふるふると首を横に振ります。
それにほっとした瞬間、リィちゃんが席を立って私を抱きしめてきました。
「すごく、すごくうれしかったの。大好きな人達に誕生日を祝ってもらえるなんて、こんなに幸せでいいのかなって思ったのよ」
リィちゃんの腕がさらに強く私を抱きしめます。
リィちゃんがこの学園でどんな風に過ごしてきたのかはわからない。
でも、寂しかったんだなっていうのはわかりました。
だって、リィちゃんがこうやって泣くほど喜んでくれたから。
「…そっか。うん。いいに決まってる。それに、リィちゃんが笑ってくれるなら、私にできることをするよ。大好きな人が幸せだと、私も幸せだから」
私もリィちゃんを抱きしめ返しました。
リィちゃんのふわふわの髪は出会った頃よりも伸びて、より一層大人っぽい雰囲気になりました。
そんな髪も一緒に抱きしめて、リィちゃんのお花のような香りを思う存分堪能します。
リィちゃんは、また涙が溢れてきたようで、私にしがみついたまましゃくりあげていました。
『…リリー、よかったな。おまえが一緒にいて幸せだと思える奴に出会えて…』
そんな中フォルトが呟いた言葉は、誰にも聞かれないまま光の粒と一緒に消えてしまいました。
結局、リィちゃんがなかなか泣き止まなくて、お誕生日会は予定よりも早くお開きになりました。
本当はお菓子を食べながらおしゃべりしたかったのですが、リィちゃんの様子から、それは難しいと判断したからです。
お菓子とテーブルセッティングをしてくれた「妖精のかまど」の店員さん達に申し訳ないと謝れば、残ったお菓子をてきぱきと三人分包んでくれました。
飾りつけに使ったお花や蔦、リボンなどもレースのテーブルクロスで素敵なブーケにしてくれて、リィちゃんに渡してくれました。店員さん達の早業がすごい…!
「次のお誕生日会も絶対ここでする!」と心に決めて、店を後にしました。
そして、リィちゃんの誕生日プレゼントを渡し忘れてしまった私達は、慌てて学園の寮まで行って渡すと、また泣かれてしまうのでした。
小さなカップケーキを大皿に丸く並べて、真ん中の一際大きいケーキにはきれいなお花の飴細工。
その大皿を中心に様々なお菓子が色とりどりに載ったテーブルには、ピンクとエメラルドグリーンを基調としたレースとテーブルクロス。
テーブルや椅子には、みずみずしい緑の蔦と淡いピンクのリボンの装飾。
そんなテーブルを囲むように、ふよふよと光の玉がゆっくり漂っています。
今日は、リィちゃんの十四歳の誕生日。
私とリィちゃん、フォルトの三人で「妖精のかまど」でお誕生日会をしています!
『あなたの~新しい~一年も~たくさ~ん、恵みが~あります~よ~う~に~♪』
店員さん達と一緒にお誕生日の歌を歌い終えれば、ぽふっと光の玉が弾けてリィちゃんに降り注ぎます。
キラキラと光のシャワーを浴びて、リィちゃんはとても幸せそうに笑ってくれました。
「お誕生日おめでとう!リィちゃん!」
「ありがとう、クリスちゃん。とってもうれしいわ」
『リリーも十四歳か。時間が経つのは早えーな』
フォルトもどこかうれしそうな声で言いました。
その言葉に、リィちゃんは微笑みを返します。
「ふふ。確かに、ずいぶん経ったわね。フォルトはそれよりもずっと前からグランツ学園にいたのよね」
『まあな~』
二人の会話に首を傾げます。
その会話からして、二人は私が思っている以上に長い間学園にいるような感じです。
フォルトは学園に保護されてたって言ってたから長くいたのはわかるんだけど、リィちゃんはどういうことだろう?
そんな私の疑問に気がついたリィちゃんが答えてくれました。
「クリスちゃんには言ってなかったけど、私はね学園で生まれたの」
「へぇ、そうだったんだ。え?お父さんとお母さん、学園の人?」
そう訊くと、リィちゃんは一瞬暗い顔になりました。でも、すぐにそれは消えてにっこりと笑います。
傍にいるフォルトはちょっとだけ目を伏せて、リィちゃんを見つめていました。
あれ!?なんか間違ったかな!?
「私の両親はね、もういないの。だから、私もフォルトと同じ、保護されていたようなものよ」
「……そ、うだったんだ…」
これはものすごく訊いてはいけないことのような気がしました。
でも、リィちゃんは「気にしないで」と笑って言ってくれたから、小さく頷きました。
「ふふふ、だからね。こうやって、誕生日を祝ってもらうのは初めてよ。私、誕生日を祝うのがこんなに幸せなことだったなんて知らなかったわ」
『そういえばそうだったな』
ふわふわと微笑むリィちゃんに、フォルトが頷きます。
二人のあまりにも普通な反応に絶句します。
ちょっと待って!フォルト、そんなのんきにしちゃダメだよ!
きっとフォルトを睨むと、睨まれた方は訳が分からないという顔で見つめ返してきます。
「……フォルトはリィちゃんの誕生日祝ってあげなかったの?」
『そうだな。……あ、ああ………あ~~…』
フォルトの返事にジト目を返せば、夕焼け色に近い金色の目がだんだん横に泳いでいきます。
自分が祝うという発想はなかったようです。
そんな私達をリィちゃんはくすくすと笑いながら見つめていました。
「クリスちゃん、フォルトを責めないで。実際、私達は生まれた日とかは気にしないの。こうやって誕生日を祝うのは、人間くらいよ」
「えっ、そうなの?」
『クリス…俺達がどれだけの時間を生きると思ってんだ?エルフは知らねーが、精霊には時間の概念がないから日を数えることもしねーよ』
そ、そうなんだ…まさか誕生日を祝うのが人間だけの風習だったとは…。
確かに、エルフや妖精は人間よりも長生きで、私達人間の想像とは違う速さで歳を重ねていきます。
改めて、人間の時間の短さを思い知ります。
リィちゃんもフォルトも気にしてないみたいだけど、それでも、やっぱり誕生日を祝ったことがないなんてダメです!
親友の生まれた日は一緒に喜びたい。
お祝いのケーキや、お花、飾りつけもいっぱいして、リィちゃんの好きなもので誕生日を祝いたい。
だって、大好きな人が生まれた日ですよ?うれしいに決まってるじゃないですか!
むむむ。これからリィちゃんの誕生日は幸せいーっぱいの日にしなくちゃ!
「リィちゃん!これからは私が毎年祝うよ!リィちゃんに何度でもおめでとうを言うからね!」
『俺は仲間に入れてくれないのかよ!?』
両手を力拳しながら宣言するように言うと、焦るようにフォルトが叫びました。
「…だって、フォルトは誕生日、祝わないんでしょう?今までだってそうだったし」
人間以外は祝う習慣がないのだから、無理に巻き込むのも違う気がして、「私が」って言ったのです。
フォルトを仲間はずれにしたわけではありません。
『うぐ、そ、そんなことねーよ!リリーの誕生日なら祝うぞ!クリスと一緒に祝う!!』
フォルトは半ばやけくそな感じで叫びましたが、その目には嘘はないと思いました。
「うん!そうだよね!リィちゃん、私とフォルトが毎年誕生日を祝うからね!」
勢いよくリィちゃんの方に振り返ったら、リィちゃんはとてもびっくりした顔をしていました。
びっくりしすぎてるのか固まっていて、微動だにしません。
「リ、リィちゃん…?」
リィちゃんの顔の前で手を振って見せますが、その目が動くことはありません。
その代わりに、温かな雫がぽろぽろと溢れるように流れました。
その光景に私とフォルトがびっくりしたのは言うまでもないです。
「リィちゃん!?どうしたの!?」
『リリー!?』
「…っ、ふぇ…」
止まらない涙を拭おうともせず、ただただリィちゃんは泣き続けました。
ときどき苦しそうにしゃくりあげるから、こっちまで泣きたくなってしまいます。
滅多に泣かない親友の涙には弱いです。なにもできなくなります。
何の言葉もかけてあげられなくて、私とフォルトはリィちゃんが泣き止むまで待ちました。
店員さんもカウンターの向こうで心配そうにこっちを見ています。
しばらくすると、リィちゃんが落ち着いてきて、店員さんが用意してくれた濡れタオルで顔を拭きます。
ちょっとだけすっきりしたような顔で微笑んでくれたので、フォルトと一緒にほっとしました。
「ごめんなさい。泣くつもりはなかったんだけど…」
「リィちゃん、私、何か嫌なこと言っちゃった…?」
しょぼんとする私に、リィちゃんはふるふると首を横に振ります。
それにほっとした瞬間、リィちゃんが席を立って私を抱きしめてきました。
「すごく、すごくうれしかったの。大好きな人達に誕生日を祝ってもらえるなんて、こんなに幸せでいいのかなって思ったのよ」
リィちゃんの腕がさらに強く私を抱きしめます。
リィちゃんがこの学園でどんな風に過ごしてきたのかはわからない。
でも、寂しかったんだなっていうのはわかりました。
だって、リィちゃんがこうやって泣くほど喜んでくれたから。
「…そっか。うん。いいに決まってる。それに、リィちゃんが笑ってくれるなら、私にできることをするよ。大好きな人が幸せだと、私も幸せだから」
私もリィちゃんを抱きしめ返しました。
リィちゃんのふわふわの髪は出会った頃よりも伸びて、より一層大人っぽい雰囲気になりました。
そんな髪も一緒に抱きしめて、リィちゃんのお花のような香りを思う存分堪能します。
リィちゃんは、また涙が溢れてきたようで、私にしがみついたまましゃくりあげていました。
『…リリー、よかったな。おまえが一緒にいて幸せだと思える奴に出会えて…』
そんな中フォルトが呟いた言葉は、誰にも聞かれないまま光の粒と一緒に消えてしまいました。
結局、リィちゃんがなかなか泣き止まなくて、お誕生日会は予定よりも早くお開きになりました。
本当はお菓子を食べながらおしゃべりしたかったのですが、リィちゃんの様子から、それは難しいと判断したからです。
お菓子とテーブルセッティングをしてくれた「妖精のかまど」の店員さん達に申し訳ないと謝れば、残ったお菓子をてきぱきと三人分包んでくれました。
飾りつけに使ったお花や蔦、リボンなどもレースのテーブルクロスで素敵なブーケにしてくれて、リィちゃんに渡してくれました。店員さん達の早業がすごい…!
「次のお誕生日会も絶対ここでする!」と心に決めて、店を後にしました。
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