しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友

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「君、大丈夫? どこか怪我してない?」

 優しく、気遣う声が頭の上からふってくる。

 包み込む体温が。
 音が。

 温かくて、ほっとする。

 この心地よさから離れたくなくて、璃空は力の入らない手でその腕を掴んだ。

 そのまま意識をゆっくりと手放し、次に目を覚ました時には、保健室のベッドの上にいた。

「あ、気が付いた?」

「…………誰?」

 擦れた、小さな声が口をついて出た。

 熱のせいか、思考がなかなか定まらない。視界もぼんやり霞んで見える。

 優斗は意識が戻った璃空に、ここはどこか。そして、ここに至った経緯を簡単に教えてくれた。

 因みに保険医は、会議に出ていて今はいないらしい。

 まだぼんやりとしていたが、それでも段々と思考が戻ってきた璃空は、サッと顔を青ざめ、優斗が止めるのも聞かず、上体を起こした。

「す、すいません。あの、おれもう大丈夫なんで」

 何度も頭を下げ謝った。優斗は、そんな璃空の頭に、ポンと優しく手を置いた。

「うん、それはいいから。それより、どうしてこんなフラフラになるまで我慢してたの? さっき熱を測ったら、39度もあったんだよ」

 その声があまりに優しく響いて、何故か璃空は焦った。

「え、と……大丈夫かなって」

「どうして人を頼らなかったの?」

「面倒、かけたくないなって……」

 璃空は後ろめたさもあり、顔を上げられなかった。

 優斗は一度、手を離した。けれど、戸惑いながらもまた璃空の頭に手を乗せ、そのまま頭を撫ではじめた。

 普通の状態なら、手を払いのけ、馬鹿にしているのかと怒鳴っていたかもしれない。

 けれど璃空は、怒るどころか、泣いてしまった。

 声の響きと手の温度に、心が緩んだのかもしれない。
 
 物心ついたころから、人前で泣いたことなどなかったのに。

 この時の精神状態は、確実におかしかった。

 熱のせいも、勿論あった。

 だが、慣れない土地。
 はじめての一人暮らし。

 そういった要因も、確かにあったのだろう。

 何で泣いているのか。自分でも分からなかったが、璃空は泣き続けた。

 その間優斗は、何も聞かず、何も言わず、ただずっと頭を撫で続けてくれた。



 大丈夫だと。そう言っているようだった。
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