しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友

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 璃空と優斗は、少女漫画のような出逢いをした。

 あれは、2人が入学して間もない頃。 

 5月2日のことだった。

 璃空は朝から、身体の調子が悪かった。顔が熱い。それなのに、身体が震えるほど寒い。喉も痛い。食欲もない。

 典型的な風邪の症状だったが、璃空は長い間、風邪一つひいたことがないのを密な自慢としていたため、気のせいだろうと身体からの訴えを無視した。

 だが、限界がきた。

 璃空は一人、4限の授業が終わった教室にいた。
 幸いここの教室は次の授業では使われないらしく、璃空の他には誰もいない。

 5限がはじまるチャイムが聞こえたのは、10分前のこと。

 それなりに仲のいい友達はできてはいたが、まだひと月未満の付き合いだ。迷惑はかけたくない。そんな想いが強かった。

 璃空は人がはけたのを見計らい、フラフラしながら席を立った。

 廊下に出たが、人は見当たらない。

 403の教室を横切る。中からマイクを通した、聞き覚えのある教授の声が聞こえてきた。

 窓の外からは、複数の女の笑い声が響いてくる。

 目線を窓に向ける。空が燃えているように見えた。それぐらい赤く染まった空がぐらつき、自分がよろめいたことを知る。窓に左手をつき、何とか倒れそうになる身体を支えた。

 力が入らない身体を引きずり、エレベーターを目指す。一瞬。ふっと意識が遠のいた。身体が右に倒れる。運が悪いことに、そこは下る階段のすぐ傍だった。

(……あ、落ちる)

 何故かスローモーションのようにぼんやりそんなことを考え、目を閉じた。

 そんな璃空を、身体を張って受け止めたのが、優斗だった。

 実はあまり、璃空はこの時のことを覚えていない。ただ、自分を包み込む腕の温かさが、例えようのない位心地良かったことだけは覚えている。

(……気持ちいい)

 もう何年も、この感じを忘れていた気がする。

 抱きしめることはあっても、抱きしめられることは本当に久しぶりだった。

 弟と、高校の時一度だけできた彼女。どちらも抱きしめる側だったから。

 遠い昔。

 母親と父親にねだり、こうやってよく抱きしめてもらっていた。

 何度も、何度も。



 そんなことを、無意識に思い出していた。
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