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2章 本編
33話 事故チュー
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夕暮れ時、最後に飲み物を買って男装ウツィアの店のソファで二人休むことになった。
「結構歩きましたね」
「そうだな」
フルーツジュースが美味しい。店で出してもいいかもと思いながら堪能する。
夫である女装したウェズはワインによる運営について考えていた。まだまだ伸び代がある。
(そういえば、今日は一日手を繋いでいたな)
今は近い距離で隣に座っているだけで手は繋いでいない。当たり前のように繋いで一緒に歩いていたなんて、結婚する前の王城にいた頃は考えてもいなかった。もっとも、女装男装して出掛けるなんてことも想像していなかったけれど。
「おかげで領地を回れた。ありがとう」
言われ、隣を見上げるとあたたかく色を灯した女装ウェズの瞳とかち合う。領地内騎士として領地のことが知れたのがよかったのだろうか。真面目な人なのね、とウツィアは推しの良さを噛み締める。
「なにもしてませんし」
「一人だと気付かないことが多い。酒も君と飲むと全然違う」
よりおいしく感じると言う。騎士同士ではあまり食事とかお酒飲んだりとかしないのかなとウツィアは首を傾げた。
「領地回りも同じだ。君と回るだけですごく満たされた」
「はええ」
(推しのデレがすごい)
「正直、ずっと手を繋いでいたかった」
瞳を伏せ憂いと照れを見せる姿が綺麗すぎてウツィアは心の中で悶えた。
(ひえええ美人すぎやろおおおおおお!)
一日デートしてウェズのテンションは少しおかしくなっていた。いつにも増して素直な言葉が出てくる。ウツィアの手に自身の手を重ねた。
「もっと一緒にいたかった」
「あ、あの」
(ちょっと待って私人妻なのよ、推し分かってるでしょおおおお)
まさかそっちの気があるの?
あれもしかして推しの好きな人、私?
まさかそんなこと……あ、でも領主でも同じ騎士のカツペルでもなく、かといって想い人を口にできないってもしかしてそうなの?
と混乱する中、さらに女装したウェズは男装ウツィアに近づいてくる。
あまつさえ頬を撫でたりし始め、ウツィアはより混乱した。
(き、きっと友達としてよね! あっれ、でもこの雰囲気キスしそうなんだけど? え、ガチでするの?)
断らなければいけないのに、断ることで推しの表情が翳るのではと思うとはっきり言えない。どうしようかとオロオロしているとやっとウェズは我に返った。
頬を撫でる手を下げ、距離を元通りに戻す。
「すまない、不用意に触りすぎた」
(ウツィアが可愛すぎるのがいけない)
「いえ、その、嫌じゃないですし。ほら女性同士だし」
「ああ」
(嫌われてない……よかった)
ほっとするもウツィアの動揺は全くおさまらない。
「あの! もう一杯お茶でも飲みましょうか」
落ち着く為には薬草茶がいい。寝る前に飲むといいリラックスできるの淹れようと勢いよく立ち上がる。
「あ」
歩きすぎて足が疲れている挙げ句、急に立ち上がったせいでうっかりバランスを崩す。このまま転んでしまった。
「あぶな、い」
助けようと手をとると簡単にウツィアはウェズの方に倒れ込んだ。
「!」
そのままウツィアはウェズに覆い被さる。手をソファにつけぶつかることは防げたけれど、触れてしまった。
(え、うそ?! これは! 古文書のあった事故チュー?! 本当に?!)
唇にあたった柔らかな感触に睫の長さまでよく見える近さは間違いなかった。すぐに離れる。
「ごめんなさい!」
「……いや、大丈夫」
「嫁入り前の女性になんてことを! すみません、その、あ! 女性同士なのでノーカンですね! ね!」
「……」
(のーかん?)
顔を真っ赤にしながら身振り手振り大袈裟に動かして推しをフォローする男装ウツィアに対し女装ウェズは内心軽く心臓を鷲掴みにされていた。
(結婚式以来初めて口付けした)
お茶淹れてきますと小走りに去るウツィアを見つめながら、内心子供のように喜んでいた。
(柔らかかった)
「結構歩きましたね」
「そうだな」
フルーツジュースが美味しい。店で出してもいいかもと思いながら堪能する。
夫である女装したウェズはワインによる運営について考えていた。まだまだ伸び代がある。
(そういえば、今日は一日手を繋いでいたな)
今は近い距離で隣に座っているだけで手は繋いでいない。当たり前のように繋いで一緒に歩いていたなんて、結婚する前の王城にいた頃は考えてもいなかった。もっとも、女装男装して出掛けるなんてことも想像していなかったけれど。
「おかげで領地を回れた。ありがとう」
言われ、隣を見上げるとあたたかく色を灯した女装ウェズの瞳とかち合う。領地内騎士として領地のことが知れたのがよかったのだろうか。真面目な人なのね、とウツィアは推しの良さを噛み締める。
「なにもしてませんし」
「一人だと気付かないことが多い。酒も君と飲むと全然違う」
よりおいしく感じると言う。騎士同士ではあまり食事とかお酒飲んだりとかしないのかなとウツィアは首を傾げた。
「領地回りも同じだ。君と回るだけですごく満たされた」
「はええ」
(推しのデレがすごい)
「正直、ずっと手を繋いでいたかった」
瞳を伏せ憂いと照れを見せる姿が綺麗すぎてウツィアは心の中で悶えた。
(ひえええ美人すぎやろおおおおおお!)
一日デートしてウェズのテンションは少しおかしくなっていた。いつにも増して素直な言葉が出てくる。ウツィアの手に自身の手を重ねた。
「もっと一緒にいたかった」
「あ、あの」
(ちょっと待って私人妻なのよ、推し分かってるでしょおおおお)
まさかそっちの気があるの?
あれもしかして推しの好きな人、私?
まさかそんなこと……あ、でも領主でも同じ騎士のカツペルでもなく、かといって想い人を口にできないってもしかしてそうなの?
と混乱する中、さらに女装したウェズは男装ウツィアに近づいてくる。
あまつさえ頬を撫でたりし始め、ウツィアはより混乱した。
(き、きっと友達としてよね! あっれ、でもこの雰囲気キスしそうなんだけど? え、ガチでするの?)
断らなければいけないのに、断ることで推しの表情が翳るのではと思うとはっきり言えない。どうしようかとオロオロしているとやっとウェズは我に返った。
頬を撫でる手を下げ、距離を元通りに戻す。
「すまない、不用意に触りすぎた」
(ウツィアが可愛すぎるのがいけない)
「いえ、その、嫌じゃないですし。ほら女性同士だし」
「ああ」
(嫌われてない……よかった)
ほっとするもウツィアの動揺は全くおさまらない。
「あの! もう一杯お茶でも飲みましょうか」
落ち着く為には薬草茶がいい。寝る前に飲むといいリラックスできるの淹れようと勢いよく立ち上がる。
「あ」
歩きすぎて足が疲れている挙げ句、急に立ち上がったせいでうっかりバランスを崩す。このまま転んでしまった。
「あぶな、い」
助けようと手をとると簡単にウツィアはウェズの方に倒れ込んだ。
「!」
そのままウツィアはウェズに覆い被さる。手をソファにつけぶつかることは防げたけれど、触れてしまった。
(え、うそ?! これは! 古文書のあった事故チュー?! 本当に?!)
唇にあたった柔らかな感触に睫の長さまでよく見える近さは間違いなかった。すぐに離れる。
「ごめんなさい!」
「……いや、大丈夫」
「嫁入り前の女性になんてことを! すみません、その、あ! 女性同士なのでノーカンですね! ね!」
「……」
(のーかん?)
顔を真っ赤にしながら身振り手振り大袈裟に動かして推しをフォローする男装ウツィアに対し女装ウェズは内心軽く心臓を鷲掴みにされていた。
(結婚式以来初めて口付けした)
お茶淹れてきますと小走りに去るウツィアを見つめながら、内心子供のように喜んでいた。
(柔らかかった)
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