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9話 私はなるたけ服破くの抑えます
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「彼女に相応しい筋肉は私のようだな」
私にふさわしいって?
私の筋肉は女性平均値より少し上なだけだから、私はそもそも団長の筋肉にふさわしくないと思う。
私だけに現れるから私の主観でバランスやレベルが決まっている可能性も捨てきれない。
けどたくさんの騎士のステータスを見たところ、客観的に精査されているとは思う。
「しかし症状を見るに、これは魔法と言わざるを得ないです」
ハマライネン医師が手を顎に添えて難しい顔をした。
それに室内の空気が重くなる。
このキルカス王国は純粋な人の腕の力で国を保っていて魔法については対策も知識も皆無に等しい。
「魔法であると医師団では治療に限界があります」
王立医師団でも魔法のことは学びが浅い。少し重い空気の中、団長が口を開いた。
「なら私の伝手を使おう」
「え?」
「ネカルタス王国に伝手なんてあったか?」
魔法大国ネカルタス。
魔法使いしかいない国は海を渡った南の大陸にある。
けど、希少な魔法使いを守るためネカルタスは鎖国を続けていて、やりとりできるのは一部の国だけだ。
「ドゥエツ王国に伝手がある。仲介してネカルタス王国に繋いでもらうか、ドゥエツ王国に常駐しているネカルタスの魔法使いに頼む」
「ドゥエツつーと、あのお嬢さん? 外交特使の」
「ああ」
ドゥエツ王国は西の隣国ソッケのさらに西に面する国だ。この国には敏腕の外交特使である公爵令嬢がいる。彼女の伝説は有名で、キルカス王国の優秀な猛者を細腕の拳だけで制圧し、武人と崇められていると聞いた。
そしたらとてつもない筋肉の持ち主なんじゃない? 一度拝んでみたいわ。
「は、いけない邪念が」
抑えないと。
「あの、ハマライネン先生。薬とか……ないですよね?」
「ええ。どちらにしても当面は経過観察です」
「うう……」
なるたけ筋肉見ないようにしなきゃいけない。
でももう見るの癖だからな……邪念を断ち切らないと!
「私もなるたけ早くとドゥエツ王国に伝える」
「団長……」
優しい!
でも勘違いしちゃだめ。これは部下を大切に扱う故の行動だ。
団長は誰でも助けてくれる。
私が王城勤務になる前に団長に助けてもらったことも彼には当たり前すぎて忘れている過去に違いない。
それぐらい団長にとっての人助けは当たり前のものだ。
「ですが早急に手を打たねばなりません。限りなく怪しい件の香料の分析を優先しましょう」
「ありがとうございます」
「その香料、かなり流通してますね?」
「ああ」
「回収を騎士団にお願いしたいのですが」
「分かった」
* * *
このやりとりだけで回収令が出た。
分析結果は出てないけど王陛下が許し、王城内すべての回収が始まる。
「すごい……」
「同じ被害を続けるわけにはいかない。初動対応としても遅すぎたと思う」
これで遅すぎるなんて団長は本当有能だ。
まだ香料が毒だと特定されていないのに、動けるよう許可をとってきただけでもすごいと思う。
「なら私はなるたけ服破くの抑えます!」
「制御できるのか?」
「分かりませんがやってみます!」
団長が意気込む私を見て少し眼を開いたあと、優しく目元を緩ませた。グレーの瞳が滲む。
その瞳に映る私の顔が少し赤い気がした。
「無理はするな」
「……は、はい」
「君は頑張りすぎるから心配だ」
それは長所だが、倒れたら辛い。
そう言われ心が跳ねた。
いやいや落ち着け私。勘違いはだめでしょ。
「り、留意します」
「ああ」
けど結局、私は我慢しすぎでとんでもないことをやらかす。団長に申し訳が立たないと落ち込むのはすぐそこだった。
私にふさわしいって?
私の筋肉は女性平均値より少し上なだけだから、私はそもそも団長の筋肉にふさわしくないと思う。
私だけに現れるから私の主観でバランスやレベルが決まっている可能性も捨てきれない。
けどたくさんの騎士のステータスを見たところ、客観的に精査されているとは思う。
「しかし症状を見るに、これは魔法と言わざるを得ないです」
ハマライネン医師が手を顎に添えて難しい顔をした。
それに室内の空気が重くなる。
このキルカス王国は純粋な人の腕の力で国を保っていて魔法については対策も知識も皆無に等しい。
「魔法であると医師団では治療に限界があります」
王立医師団でも魔法のことは学びが浅い。少し重い空気の中、団長が口を開いた。
「なら私の伝手を使おう」
「え?」
「ネカルタス王国に伝手なんてあったか?」
魔法大国ネカルタス。
魔法使いしかいない国は海を渡った南の大陸にある。
けど、希少な魔法使いを守るためネカルタスは鎖国を続けていて、やりとりできるのは一部の国だけだ。
「ドゥエツ王国に伝手がある。仲介してネカルタス王国に繋いでもらうか、ドゥエツ王国に常駐しているネカルタスの魔法使いに頼む」
「ドゥエツつーと、あのお嬢さん? 外交特使の」
「ああ」
ドゥエツ王国は西の隣国ソッケのさらに西に面する国だ。この国には敏腕の外交特使である公爵令嬢がいる。彼女の伝説は有名で、キルカス王国の優秀な猛者を細腕の拳だけで制圧し、武人と崇められていると聞いた。
そしたらとてつもない筋肉の持ち主なんじゃない? 一度拝んでみたいわ。
「は、いけない邪念が」
抑えないと。
「あの、ハマライネン先生。薬とか……ないですよね?」
「ええ。どちらにしても当面は経過観察です」
「うう……」
なるたけ筋肉見ないようにしなきゃいけない。
でももう見るの癖だからな……邪念を断ち切らないと!
「私もなるたけ早くとドゥエツ王国に伝える」
「団長……」
優しい!
でも勘違いしちゃだめ。これは部下を大切に扱う故の行動だ。
団長は誰でも助けてくれる。
私が王城勤務になる前に団長に助けてもらったことも彼には当たり前すぎて忘れている過去に違いない。
それぐらい団長にとっての人助けは当たり前のものだ。
「ですが早急に手を打たねばなりません。限りなく怪しい件の香料の分析を優先しましょう」
「ありがとうございます」
「その香料、かなり流通してますね?」
「ああ」
「回収を騎士団にお願いしたいのですが」
「分かった」
* * *
このやりとりだけで回収令が出た。
分析結果は出てないけど王陛下が許し、王城内すべての回収が始まる。
「すごい……」
「同じ被害を続けるわけにはいかない。初動対応としても遅すぎたと思う」
これで遅すぎるなんて団長は本当有能だ。
まだ香料が毒だと特定されていないのに、動けるよう許可をとってきただけでもすごいと思う。
「なら私はなるたけ服破くの抑えます!」
「制御できるのか?」
「分かりませんがやってみます!」
団長が意気込む私を見て少し眼を開いたあと、優しく目元を緩ませた。グレーの瞳が滲む。
その瞳に映る私の顔が少し赤い気がした。
「無理はするな」
「……は、はい」
「君は頑張りすぎるから心配だ」
それは長所だが、倒れたら辛い。
そう言われ心が跳ねた。
いやいや落ち着け私。勘違いはだめでしょ。
「り、留意します」
「ああ」
けど結局、私は我慢しすぎでとんでもないことをやらかす。団長に申し訳が立たないと落ち込むのはすぐそこだった。
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