国賊の正義

かお

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本章

第1章 崩壊

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「ねえ、昔戦争って本当にあったの?」
「さあねぇ。ママのひいひいおばあちゃんの時代にはあったみたいだけど。」

これはとある親子の他愛もない会話である。

2145年。
太平洋戦争が終戦を迎えてから丁度100年経ち、戦争を経験した明治や昭和の激動の時代を生きた老人達は全員既に亡くなった。

今、この時代を生きているのは学校の歴史の授業の中でしか「戦争」というものを知らない人間だけである。

「俺だけなんだろうか......」
そんな中俺、藤本龍雅はある違和感を覚えていた。
無論俺も2120年に生を受けた為、「戦争」を教科書位でしか知らない。

だが、戦争が二度と繰り返してはいけない恐ろしいものというのは何となく分かる。何となくだが......

しかし現在、日本の政府はむしろ戦争を起こそうとしている感じを受ける。
俺がそう感じる理由の一つが「核保有」である。

昔の日本では「非核三原則」が当たり前の様であったが今の日本は数年前から核の保有国となっている。

なぜ日本が核保有国となったのか?
きっかけは韓国、中国、ロシアといった近隣国との関係悪化である。

これまで日本は韓国との竹島や慰安婦問題、中国との尖閣諸島、ロシアとの北方領土、北朝鮮との拉致問題と様々な歴史や領土に関する問題を抱えてきた。

そしてそれらの問題は数十年以上の時が経っても双方の国が譲る事もなく平行線のまま未解決の問題となっていた。

解決するどころか日本は特に動くこともなく、他国の好きにさせている状態であった。 

どこまでも日本は平和的な解決に拘ったのだ。

いや、もしかしたら解決する事すら半ば諦めていたのかもしれない。
勿論、日本も国としての立場があるから何でもかんでも諸外国にとって都合のいい国という位置づけではなかったのかもしれない。

しかし、当時の日本人は受け身な印象をどうしても受ける。

結局、日本は韓国や中国、ロシアとの領土問題をとうとう解決に向かわせる事はできなかった。それどころか韓国や中国、ロシアとの国交関係は最悪。特に韓国には未だに慰安婦問題を挙げられ、恨まれている。

日本は戦争を経験した事で、武力での強引な解決を良しとしなかった為、近隣国との関係をすぐに解決できるものではないとし、後回しにしたのだ。

だが、時代が変われば人々の考えも変わるということだろう。

今の日本では数年前から国独自で核兵器の開発に防衛省が力を入れ始め、現在はいくつかの核兵器を所有している状態である。

無論、まだ実際に使用した事はないが、いざという時には使わないとも限らない。

これが日本の現状である。
この様な日本の現状に対して、当然近隣諸外国は日本に対するスタンスを現在はかなり変えている。

例えば、北朝鮮は昔、牽制の意味を込めてミサイルを頻繁に打っていたが、日本が核保有を始めた初期段階から打つ頻度を下げ、終いには打つ気配が無くなった。

そういった点では日本は昔と比べて北朝鮮の恐怖に怯えずに済むため、国としてより平和であり、国民も安心できる環境となったが、一方外交関係は昔より最悪である。

核を保有し始めた頃からアメリカを中心に日本は経済制裁を受けている。
日本が核保有国を宣言する少し前から制裁は始まった。日本は実に6割以上を諸外国からの輸入に頼って生活を送っている。
制裁を受け、日本国民は特に飲食物に大きな影響を受けた。特に野菜は昔と比べて倍以上値段は上がった。

ただ、経済制裁を受けて日本国民が苦しむ結果となったかというと意外にもそんなことはなかった。
元々、様々な技術面において世界に誇るものを持っていた日本は農業を中心に自国で賄えるものは賄えるようにしたのだ。
今や日本での国内生産率は60%を超えている。丁度昔の日本の輸入率と同じ割合である。
こうして日本は現在殆ど諸外国に頼らず、自国でほぼ自己完結させている状態である。
以上、これが今の大まかな日本の現状である。
「一応、平和に暮らせるだけまだマシか。」
なんて感想は抱かないでくれよ。
はっきり言って最近の日本の治安は最悪だ。

日本という国自体が攻撃的な国になった事で国民性までも変わり始めている。
まあ、日本の警察がそもそも優秀である事から事件が起きても直ぐに解決はする。
解決はするが事件件数は年々増加傾向にある。

日本が核保有国を宣言する少し前から制裁は始まった。日本は実に6割以上を諸外国からの輸入に頼って生活を送っている。
制裁を受け、日本国民は特に飲食物に大きな影響を受けた。特に野菜は昔と比べて倍以上値段は上がった。
ただ、経済制裁を受けて日本国民が苦しむ結果となったかというと意外にもそんなことはなかった。
元々、様々な技術面において世界に誇るものを持っていた日本は農業を中心に自国で賄えるものは賄えるようにしたのだ。
今や日本での国内生産率は60%を超えている。丁度昔の日本の輸入率と同じ割合である。
こうして日本は現在殆ど諸外国に頼らず、自国でほぼ自己完結させている状態である。
以上、これが今の大まかな日本の現状である。
「一応、平和に暮らせるだけまだマシか。」
なんて感想は抱かないでくれよ。
はっきり言って最近の日本の治安は最悪だ。
日本という国自体が攻撃的な国になった事で国民性までも変わり始めている。
まあ、日本の警察がそもそも優秀である事から事件が起きても直ぐに解決はする。
解決はするが事件件数は年々増加傾向にある。

色々とダラダラ説明してきたが、まあ、これが今の日本の大まかな現状である。
更にいうと、今政府では日本国民の徴兵制度について議論されている。
2020年頃と比べ、人口も少子高齢化がかなり進むに進み、自衛隊を希望する若者がいないのが原因だ。

このままでは日本という国が国として維持できなくなる。きっと後数年もしない内に日本も徴兵制度を作るだろう。
かつて安全な国として諸外国に認められていた日本だが、今は全くの真逆である。

絶対にこのままでは日本は国民にとって住みづらい国となってしまう。
「俺が何とかしなければ。」
そう思い、俺は日本を立て直すための行動を起こすことにした。
行動を起こすといってもただの一市民である俺にできる事は少ない。
というのも日本は昔から生まれや血縁関係で日本のトップになれるかが決まる。所謂蛙の子は蛙と言うやつだ。政治家の子どもは親と同じく、政治家となる。中には総理大臣になる奴だっている。

国民からしてみれば優秀な総理大臣なんて数える程にもかかわらずね。
日本はそんな社会なもんだから正攻法で俺が政治家に立候補して「今の日本は終わってる」なんて発言しても誰も今の日本を変えようとは思わないだろう。

今の日本の現状に何の疑問も抱かず、核兵器所持を始めた上、徴兵制度まで作ろうとして逆行を始めてる連中なのだからな。
だから俺は普通ではありえないやり方で日本を変えないと行けないのだと思う。
それが何かはわからないけどな。

正しく誠実な日本に戻すには何ができるのだろうか。
最近、自分の中ではそんな疑問が常に渦巻いている。
「政治家を目指す?」「匿名で国会に直談判する?」それとも「デモ活動?」
答えはもちろん、自分自身が分かっている。
答えは「No」だ。
そんなありきたりなやり方で俺が国を変えられる訳がない。
「気分転換するか。」
悩んでいても答えは出そうに無いので外に出て気持ちをリフレッシュさせる。


※※※


俺は近所のファストフード店へと入る。
「おーい。こっちだ、こっち。」
軽い口調の男が店内で俺を呼ぶ。
「悪いな。待ったか?」
「いや、実は朝の開店と同時にいるから気にしなくていい。」
こいつの名前は的場真司。
大学時代からつるんでいる奴で俺と同じフリーターである。要は暇人。
「家にいると親が煩いからバイトが無い日でも時間潰す為に朝イチからいるんだよ。」
「あー。確かにお前の親厳しそうだもんな。」

俺はまだひとり暮らししてるだけまだマシだが、真司は実家暮らしであり、その上フリーターである。当然、真司の親は追い出すまではしないまでもかなりあたりが強いらしい。
「お前もせめてひとり暮らしすればいいのに。」

「それが出来れば苦労しないわ。逆に何でお前もフリーターなのにひとり暮らしする余裕があるんだ?」
「大したことはしてねえぞ?俺も普通にバイトいくつか掛け持ちして何とか20万程度は稼いでるだけだ。」

「いや、その割にはお前全然疲れてる様子ないじゃん。俺が誘えばすぐに返事寄越して来てくれるしよ。」
「いや、正直疲れてるぞ。この後もバイトあるし。ただまあ、数時間寝られれば俺は割と体力回復できるからよ。」

(化物だ......)
真司は心の底からそう思った。
「ところでよぉ。」
龍雅は真司に話を切り出す。
「最近の日本国内の情勢についてどう思う?」
「どう思うというと?」
「明らかに国全体がおかしいと思わないか?」

「おかしいというと?」
「今までは無かった徴兵制度をやり出しそうな雰囲気だし、全体的に今の日本は好戦的過ぎやしないか?まるで戦争を始める準備をしているような......」
「まあ、現状を見ると無いとは言い切れないかもなぁ。」

「そうだろ?何か俺達もそうならない為に行動するべきじゃないのか?」
「気持ちは分かるがただの一市民でしかない俺達ができる事なんてあるのか?」
「無い。だからお前に相談してるんだよ。」
「うーん。と言ってもやっぱり無理だろう。デモ活動は?」

「それも考えたけどそれにはまず、俺等と同じ意見の人間を集めないと行けないだろ。」
「でも、それが今できる唯一の対策じゃないのか?いきなり最初からできる事なんて限られてるに決まっているだろ?」
「まあ、確かにそうか。」

「まずはお前と同じ事を考えていて、協力してくれる奴を探してみよう。」
「どうやるんだ?」
「SNSとかで募るのはどうだ?」
「それが確かに一番早そうだな。」
早速俺は「X」のアカウントを作って仲間を集う事にした。

数日が経過した。
「X」の様子はどうなったのか?
結論から言うと反応は0であった。
「......」
「......」
俺も真司も「X」を見て黙り込むしかなかった。
「俺等のアカウントだけ非公開設定にされてるんじゃないのか?」

「それは無いと思うけど......」
予想外過ぎる結果に頭を悩ませる。
「てか、更紗ちゃんは?」
「更紗?今日は友達とショッピング行くとか行ってたけど。」
更紗というのは俺の彼女である。
更紗......溝口更紗とは大学の時から付き合っている。

「やっぱSNSも素人がやったところで上手く運用できないだろ?更紗ちゃんならその辺り詳しいんじゃねえの?」
真司の言う事には一理ある。 
近い内に更紗も交えて3人で会う約束をしようと思う。
「はぁ。」
俺は溜息をつく。

「どうしたんだ?」
「いや、俺達こんな状態でこの先やってけるのかなって。だってよ、SNS1つとっても俺等の想像通りにいかなくってさ。」
「まあ、お前は昔から行動力はあるけど頭悪いもんな。」

「はっきり言うなぁ。」
「はっきり言わないと今後やっていけないだろ。」
「一理ある。とりあえず更紗に連絡だけはしといたから。返信が来たらまたお前にも教えるわ。」
「了解。それじゃあまだ時間あるし、俺らも遊びに行こうぜ。」

俺が真司とボーリングで遊んでいる時だった。
「更紗から連絡返ってきたわ。」
「更紗ちゃん、何だって?」
「とりあえず、明日なら会えるって。」
「OK。何時?」
「昼過ぎから会おうだとさ。」

翌日、俺と真司は更紗との待ち合わせ場所に向かった。
「二人とも待った?」
「いや、俺らも今来たとこ。」
更紗は俺らよりも少し遅れて到着した。
「とりあえず近くの喫茶店でお茶でもしながら話そうぜ。」

喫茶店で俺と真司はコーヒー、更紗は紅茶を注文する。
コーヒーと紅茶を待ちながら俺達は他愛も無い雑談を楽しんだ。

雑談を楽しんでいると5分位でコーヒーと紅茶がきた。
「それで?今日の本題は何なの?」
雑談を切り上げ、更紗が聞いた。

「ああ、更紗にXの......所謂バズり方?を教わりたくてよ。」
「......」
何言ってんだ?こいつみたいな顔を更紗はしている。
真司がすかさずフォローを入れる。
「竜雅は今の日本の在り方は間違っていると本気で考えてんだ。」

「それで協力者を集って実際にデモ活動を起こそうって考えてんだよ。」
「頼む!更紗。俺と真司じゃXには疎すぎてどうすればいいか分からないんだよ。」
俺と真司で更紗に頭を下げて頼み込む。
一方、更紗は険しい顔をして黙り込む。

「分かったわよ。ただ面倒毎は巻き込まれたくないからあくまでアドバイスするだけ。実際に行動するのは竜雅達だからね。」
「恩に着ます!」
こうして俺達は更紗にSNSの使い方を教えて貰える事となった。

更紗が言うにはいきなり本題を話してSNSに投稿しても効果は無いらしい。
そもそも数多くのユーザーがいる中で自分のコメントに注目して貰うのには時間がかかるとのこと。
まずはフォロワーを増やしながら同時に何回も投稿をしていく。

「えっと......つまり?」
更紗の話を聞いて俺は愕然とする。横で話を聞いていた真司も「まじかよ!」と言い出しそうな驚きの表情をしていた。そんな男2人の表情を気にせずに更紗は「まあ、半年から1年はこのやり方だとかかるよね。」
どうやらSNSは頼りにならなそうである。

しかしこの時、半年も待っていられない事態が起こることをまだ彼らは知らなかった。いや、知る由もなかった。
これから竜雅達3人は変わり果てた日本と長きに渡り、戦い続ける事になる。
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