転移したら研師になった。  この能力で全てを研ぎ澄ます

正海広竜

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第二話

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 こんな目に遭ったのは、数時間前の事だった。

 おふくろが作った朝食を掻っ込むように食べ終え、鞄を片手に持って家を出た。
「行って来るわ」
「事故に巻き込まれないように注意しなさいよ」
 玄関の戸を開けて、食卓で食器の片づけをしているおふくろにそう言うと、おふくろがそう返事して来た。
 いつもの通りの朝の光景だった。

 俺が通う学園は市立天海てんかい学園と言う、何処かのお坊さんの名前から取った名前みたいな学校だが、別段、僧侶の養成学校などではない。
 進学校でもないが、不良が沢山居る訳でもない。かと言ってスポーツに力を入れているという訳でもない普通の高校であった。
 俺はこの学校に春入学した。
 後数日したら夏休みが始まるからか、同じように通学路を歩く同級生や先輩達は夏休みに何をするか話し合っていた。
「あ、あいつ」
「見たら駄目よ」
「目が合ったら、因縁付けられるぞ」
 同じように通学路を歩く同級生達が俺を見るなり、ヒソヒソと話ながら距離を取って来た。
 別段、気にしてはいないが、其処までされる事をしたかなと思うぜ。
「あいつが笹山孫市か」
「夜になると、他校の生徒と喧嘩をしているという話だな」
「暴走族を一人で潰したという話も聞いたな」
「反社を親に持っていると聞いたぞ」

 俺を見ながら話している奴らが、わざとかと言えるぐらいな大声で話していた。
 ったく、この三白眼の所為でそう言われているんだな。
 ついでに、瞳が青いせいでよく言われる。
 これはおふくろがアメリカ人の血を引いたハーフだから、俺もそれを受け継いだなんだがな。
 それで、小中の頃はカラコン付けているとか、目立ちたがり屋とか言われていた。
 
 目立っている所為か、喧嘩を売られたりもした。
 まぁ、全員返り討ちにしたけどな。
 そんな事があった所為か、同じ中学の奴らからはヤンキー扱いされている。
 そいつらが、俺の事についてある事ない事話した所為か、他の中学の奴らも怖がる様になった。
 これでも、中学の頃から成績も悪くないし、無早退無欠席なんだけどな。
 そんな事を思いながら、校門が見える所まで来ると、知り合いがいた。それも朝から会いたくない奴に。

 女性にしては高く百七十はありそうな長身で、艶がある黒髪をポニーテールにしていた。
 凛とした美貌と切れ長の目に鳶色の瞳を持ち、学園の制服をキッチリと着こなしている事から、真面目な印象を抱かせていた。
 メロンぐらいはあるんじゃないのかと思える程に大きく育った御立派な物を持ち、腰も折れそうな位に柳の様に細かった。尻は胸と同じくらいに大きく育っており、柔らかそうな桃の様に肉が付いていた。
 学園指定のスカートの裾から見える両足は肉付きが良かった。
 
 このAV女優みたいな女は、俺と同学年で同じクラスの月山つきやま璃子りこだ。
 同じ中学の噂を聞いたのか何かと俺を目の敵にしてくる。
 今も風紀委員というかったるい事をするぐらいに真面目な奴だ。
 璃子の奴も俺を見るなり、睨むように見て来た。
 折角の朝に、叱られるのは嫌なので、俺は何処か変な所がないか確認した。
 大丈夫だろうと思い、俺は校門を潜った。
 璃子の前を通ると。
「待ちなさい」
 璃子が声を掛けて来た。
 無視しても良かったが、以前無視したら、追いかけて来て「声を掛けたのに、無視するとは失礼でしょうっ」と言って来た事があった。
 その相手が面倒だったので、声を掛けられたら足を止める事にした。

「何だよ? 何処も変じゃないだろう」
 制服も着崩しても居ない。ネクタイもちゃんとつけてる。
 髭は生えていないので、剃らなくても良いので、問題なし。
 制服は何処も改造していない。
 何処も問題ないだろうと言えたが。
「ネクタイが曲がっているわ。直しなさい」
「はあっ⁉」
 
 ネクタイが曲がっているだ? さっき直したばかりだっての。
「お前さ、俺に何か因縁でも付けたいのか? あん?」
「わたしは風紀を正そうとしているだけよ」
「お前のは、た、だ、の嫌がらせって言うんだよ。嫌味たらしい奴だな」
「わたしは女よ。奴じゃないでしょうっ」
「へいへい、失礼しました。嫌な女だな」
「嫌な女ですって、少し指摘しただけで、そんな事を言われる覚えはないわっ」

 こいつ、マジで言ってるのか?
 思わずジッと璃子の目を見る。
「な、なによ・・・・・・」
 璃子が何故か顔を赤らめているが、意味が分からん。
「・・・・・・けっ、何でもねえよ」
 言っても疲れるだけだと思い、俺はネクタイを直した。
「ほら、これで良いか?」
「ええ、良いわよ」
 璃子が通っても良いと言うので、俺は校内に入る事が出来た。
 今度あいつが校門に立っているの見かけた時は、あいつの目の前で服装を直して見るか。
 そう思いながら、俺は自分の教室に向かった。
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