転移したら研師になった。  この能力で全てを研ぎ澄ます

正海広竜

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第八話

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 ミネルヴァに呼び止められた俺と三人のクラスメート達は顔を見た。
 一人は牛耳ぎゅうじつかさ
 長身なんだが、肉が付いていなくて、何と言うか骨と皮しかない奴だ。
 目もギョロッとしているので、どうにも不気味にしか見えない。
 その上、女子を見てブツブツ言いながら笑うという事がよくある所為か、女子から嫌われている。
 人の話を聞かない上に、意味がよく分からない事を言うので、頭大丈夫かとしか言えなかった。

 もう一人は正矯しょうきょうおさむと言う奴だ。
 クラスメートの中で一番身長がデカい。百九十以上はあるだろう。
 その分、横幅もデカい。例えるのなら、言い方は悪いが豚みたいであった。
 クラスメートの中にはファンタジーに出て来る豚の亜人と言われている『オーク』という奴もいる。
 まぁ、俺も同じ意見であった。
 太っている所為か、目が細かった。自分勝手な性格の様で、人から頼まれても良く断っている。
 その為か、クラスメート達から嫌われている。
 
 最後の一人は出井でいばんと言い、俳優や〇ャ〇ーズに居てもおかしくない美形なのだが、性格がかなり悪い。
 同級生上級生他校の奴らだろうと、因縁付けて喧嘩を売っている危ない奴だ。
 その為か、偶に学校に来る時、制服がボロボロで顔に殴られた様な跡があった。
 蛇みたいな目をしているので余計に悪そうに見えた。
 噂では、人を殺しているのではと言う話があった。
 
 しかし、こいつらと一緒にどうして俺まで残されたんだ?
 そう思っていると、ミネルヴァが先程まで浮かべていた笑顔が真顔になっていた。
「貴方達を呼び止めたのは、他でもありません。少々、貴方達に言いたい事がありまして」
 何だ? 何を言うつもりだ?
 そう思いながら、ミネルヴァが何と言うのだろうか耳を傾けた。

「貴方と貴方は本当に職業は魔法使いなのですか?」
 ミネルヴァが牛耳と正矯の二人を指差した。
 指差された二人は身体を震わせた後、答えた、
「そうです。ぼ、僕は魔法使いです」
「僕もなんだな」
 二人が魔法使いだと言うと、ミネルヴァが眦が吊り上がった。

「女神であるわたしに嘘を付くとは、いい度胸ねっ」
 怒声を上げるミネルヴァ。
 同時に、何か背筋が粟立ち始めた。
 やばない? これ。
「貴方達の職業は傀儡マリオネット操術師マスターに催眠術師だという事は分かっているわよっ」
 ミネルヴァがそう告げると、二人は酷く驚いた顔をしていた。
 傀儡操術師に催眠術師? 何だ、それは。
「人を操る事が出来る傀儡術を使う事が出来る職業に、暗示をかけることにより、他者の精神を操る術を扱う職業と分かっているのよ」
 ミネルヴァが二人の職業について説明すると、二人はビクビクと震えだした。
 あ~、それは秘密にしたいわ。
 どう考えても、誰かにバレたら怪しい事に使うと思われるよな。

 ぶっちゃけ、それを使えば、男の欲望と言える夢を叶える事が出来るよな。
 正直に言って羨ましいな。
 そして、このミネルヴァは鑑定かもしくはそれに同じスキルを持っていると思って良いな。
「そんな職業を持っている者達をこのままにしておくことは出来ません。なので」
 ミネルヴァがそう言って掌を向けた。
 すると、牛耳達の足元に魔法陣が浮かんだ。
「これはっ」
「なにを・・・・・・ぎゃあああっ」
 
 驚く牛耳達の足元に浮かんだ魔法陣が輝くと同時に、二人の額に紋様が浮かび上がった。
 そして、二人は苦しむ声をあげて、少しスルト虚ろな目となった。
「貴方達の能力を制限します。能力を行使する時は、わたしが決めます」
 ミネルヴァがそう言うと、二人は何の反応が無かった。
「あんた、いったい、何をしたっ」
 俺が何をしたのか訊ねると、ミネルヴァは淡々と答えた。
「職業を使った能力で、国益を損なう事をするかも知れませんので、制限を掛けて貰いました。わたしの言う事には絶対に従うようにしました。次に貴方」
 ミネルヴァは出井を指差した。
「俺が何か?」
 指差された出井は首を傾げた。
「貴方は自分の職業を詐欺師と言いましたね」
「ああ、そうだ」
 出井は嘘はついてないのか自信ありげに頷いた。

「そうね。貴方は嘘はついてないわ。ですが」
 ミネルヴァは掌を出井に向けた。先程と同じように、何かの魔法を使うのかと思ったが、掌から魔法が放たれた。
 放たれた魔法は出井の心臓を貫いた。
「ごっ」
 出井は胸に穴を開けられ、口から血を吐きながらうつぶせに倒れた。
「貴方の職業は詐欺師のようだけど、元の世界で殺人を行ったようね。しかも、かなりの人数を殺している様ね」
「ぶっ、すげえな。当たっているぜ。女神の目は其処まで見れるのかよ・・・・・・」
 ミネルヴァがそう言うと、出井は正解とばかりに答えた。
 そして、出井の目に光が失った。
 俺は側に寄り、死んでいるかどうかの確認をした。

 呼吸が全くない。これは駄目だな。
 そう思いながら、俺は出井の目を閉じた。
 それが終わると俺はミネルヴァを見た。
「・・・・・・俺も殺すのか?」
 職業は偽っても居ないし、元の世界で人も殺していない。
 と言うか、この場に呼び出される覚えがないんだが。

 俺がそう訊ねると、ミネルヴァは冷たい声で告げた。
「貴方、いらないわ」
 刃に切られたかの様な声で言ってきやがった。
「いらない?」
「そう。別に研磨するだけのスキルなんていらないわ。鍛冶師の職業を持っている者はそれなりに居るのに、研磨するだけの研師なんて、必要ないのよ」
「ははは、まぁ、そうだよな」
 無用と判断された事については、俺も反論が出来なかった。
 鍛治師の職業を持っている奴のスキルがどんなのか知らないが、多分研磨も出来るだろう。
 そう考えると、研師は要らないと言われても仕方が無かった。
「・・・・・・俺も殺すのか?」
「いいえ」
 そう訊ねると、ミネルヴァは違うと答えた。
 そして、ミネルヴァは指を鳴らした。同時に俺の足元に魔法陣が浮かんだ。
「こいつはっ」
「要らない者は捨てるだけよ。何処に行くかは分からないけど、もう会う事は無いでしょうね。最後に言う事はあるかしら?」
 そう訊ねて来たので、俺は。
「くたばれ。クソ女神っ」
 俺がそう言うと同時に、魔法陣が輝いた。
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