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第十一話

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 暫く呆然としていた俺だったが、何時までも落ち込んでいては仕方がないと思い直した。
 そして、俺は気を取り戻すと、目の前の壺を見る。
 壺の中に引っ込んだようだし、出て来るまで待つか。
 しかし、この土地が封印された所ってのは、本当の様だな。
 此処に来てから、どれだけ時間が掛っているか分からなかった。
 何せ、空が黒いので時間が分からない。
 ポケットに入れている携帯の時間を見ても、全く動いていなかった。
 
 マールスは此処はマルスパゴスっと言っていたが、どうにか出る事は出来ないのか調べてみるか。
 そう思い階段を下って行った。
 
 数十分後。

 マールスが封印された壺がある所から、離れていき、階段を下りて行くと、俺が最初居た所に着いた。
 一応、何かあるかなと思い探してみたが、何も無かった。
 左程期待していなかったので、気にしないで次の場所を探した。
 下に降りて行く階段があったので降りてみた。
 それなりに長い階段を下りて行くと、出口なのか門が見えた。
 その門の傍まで行くと、マールスを封印している壺に張り付けられている札が張られていた。
 此処から出る事は不可能だと分かった。
 今度は、そこら辺に転がっている石を拾い空に向かって投げてみた。

 すると、何か見えない空間に当たり、バチっという音を立てて弾いた。
 石が落ちて行くのを見た俺は空を飛んで行くのも無理だと分かり、溜め息を吐いた。
 これは、どうやったら、外に出る事が出来るんだ?
 そして、ふと思った。それなりに動いている割りに、腹が減ってはいなかった。
 時間が止まっているという事は、どれだけ身体を動かしても体力が減るという事はないのか?
 それとも、腹が減らないだけか?

 そこの所、どうなのか分からないが、とりあえず、俺はマールスが封印されている壺が置かれている所に戻る事にした。
 階段を上がり続けて、壺がある所に戻って来た。
 マールスと話したいが、どうにか出来ないかな。
 此処は定番で、壺を擦れば出て来るかな?
 そう思い、壺を擦ってみたが、マールスは出て来る気配は無かった。
「う~ん。どうするべきかな?」
 拝んでみるか?
「はぁ~、偉大なるマールス様。どうか、御姿をお見せ下さいませ~」
 そう言って拝んでみたが、何の反応も無かった。
 
 これも駄目か。じゃあ、次は。
 二礼二拍手して、祈ってみるか。
 一礼だったかな? どうも、そこら辺覚えていないんだよな。
 とりあえず、祈ってみるか。
 マールス様。どうか、姿を見せて下さい。と言うか、話がしたいから姿を表せ。
 ・・・・・・姿を見せないな。
「良し。此処は・・・出て来いっ。脳筋男神っ」
『誰が脳筋だっ!』
 罵倒するなり、姿を見せたマールス。
『我を脳筋と言うとは、貴様、いい度胸をしているなっ」
 怒った顔で俺を睨みつけるマールス。
 まぁ、普通はそうだよな。
「すいませんでしたっ」
 とりあえず、馬鹿にした事を謝ってみた。
『ふん。それで、何の用だ? 先程から良く分からん行動は我に何か用があって呼び出す為にしていたのか?」
 見ていたのなら、出て来て欲しかったな。
 そう思いつつ、俺は訊ねた。
「聞いても良いか。この壺から、あんたを出したら、此処から出る事が出来るのか?」
『ふん。当然だ。この忌々しい壺の封印から出る事が出来たら、我はこの地から出るなど造作もない』
 凄い自信満々だが。神様と言うのだし、封印されているのだからそれぐらいは出来るか。
「じゃあ、俺がその封印を解いたら出る事は出来るのか?」
『お前がか?』
 そう言って幻体のマールスは俺を見た。
『ふむ。鍛えれば、出来であろうな』
 それを聞いた俺はその場で膝をついた。
「お願いします。どうか、俺を鍛えて下さい」
 頭を下げてマールスに頼んだ。
『・・・・・・ふむ。どうせ、時間は沢山あるのだ。暇つぶしにはなるか』
 そう言ったマールスは俺をジッと見た。
『我がお前を鍛えてやろう。拒否も逃げる事も許さん。それを心に留めておくのだぞ』
「はいっ」
 こうして、俺はマールスに鍛えられる事となった。
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