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甘くて怖い、君のとなり(2)
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日が傾きかけたころ、蓮華のマンションのリビングには、落ち着いたオレンジ色の光が差し込んでいた。
「へぇ、れんれんのこのギターって、2017年のライブで初披露したやつですよね? ファンの間じゃ“黒薔薇モデル”って呼ばれてて……」
蓮華は、ソファの向かいに腰を下ろす碧生の言葉を聞きながら、無意識に口元を緩めていた。
「あと、この壁のポスターも……初期のデザインのやつ、今はほとんど出回ってないんですよね。俺、あの時期の曲、めちゃくちゃ好きで……」
「……なぁ」
蓮華は、堪えきれずに笑った。
「なんやねん、碧生くん、俺より“デッド・ブーケ”のこと詳しいんちゃうか?」
「す、すみません……! つい、語りすぎました……!」
碧生が慌てて頭を下げたが、蓮華は首を横に振って小さく笑った。
「ちゃうねん。めっちゃ、嬉しい。なんか、自分が大事にしてきたもんを、同じくらい大事にしてくれてるんやなって思って」
そのまま、ふと蓮華は視線を碧生に戻した。
彼の目は、まっすぐこちらを見ている。
「……でもな」
蓮華は、少しだけ表情を引き締めた。
「俺のこと、“れんれん”としてだけやなくて……もっと“中辻蓮華”として、知ってってほしいなって、思ってたんや。ずっと」
碧生のまなざしが、優しく細められた。
そして、ほんの少しだけ間を置いてから、彼はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……俺の“好き”って、“ファンとして”の“好き”を、たぶんもう超えてるんですよ」
「……え?」
「気づいてました?」
「……」
蓮華は言葉を失い、その場で固まった。目の前の碧生の顔を見ることができず、手元のクッションを無意識にぎゅっと握る。
耳まで真っ赤に染まっていくのが自分でもわかる。
そんな蓮華を見て、碧生がふわっと笑った。
「れんれん……可愛すぎませんか? 想像以上です」
次の瞬間、ふわりと、優しく抱きしめられる。
驚きで一瞬体がこわばった蓮華だったが、胸元に感じる鼓動と、碧生のぬくもりに、そっと目を閉じて身を預けた。
(――やばい。俺、ほんまに……落ちてもうたんやな)
蓮華の中で、ステージの上とはまったく違う“本当の気持ち”が、静かに鳴り始めていた。
---
部屋の中には、夕暮れがつくる赤みがかった陰影がゆっくりと差し込んでいた。
窓の向こう、街がゆっくりと夜へ変わっていく。
その移ろいを背に、蓮華と碧生はしばらく黙って、抱き合ったまま互いの鼓動を感じていた。
(この腕の中におるんが……俺で、ええんかな)
そんな不安が、ほんの少しだけよぎった蓮華の胸に、碧生の手がそっと触れた。
「れんれん」
「……うん」
「――目、閉じてもらっても、いいですか」
声があまりに優しくて、心臓がふわっと跳ねた。
蓮華はゆっくりとまぶたを閉じる。
次の瞬間、そっと唇が触れた。
触れるだけの、やさしいキス。
……のはずだったのに。
「……ん」
気づけば、そのキスは少しずつ深くなっていた。
碧生の指先が蓮華の頬をなぞり、その手が首筋を包むように添えられる。
そのまま、何度も、何度も、確かめるように唇を重ねられて――
静かで、甘くて、時間が止まったみたいだった。
(こんなん、反則やろ……)
身体の奥がじんわりと熱くなって、何も言葉が出せなかった。
唇が離れたあとも、余韻に包まれて、ふたりはしばらく見つめ合う。
碧生の目が、少し潤んでいるようにも見えた。
「……ごめんなさい。ちょっと長かったかも」
「……」
蓮華は、ゆっくり首を横に振って、ほんの少しだけ照れたように微笑んだ。
「……全然。むしろ、もっと……って、言いそうになったわ」
「……!」
今度は碧生の方が真っ赤になった。
でも、それすらも愛おしいと思えるくらい、あたたかい空気がふたりを包んでいた。
――この夕暮れは、きっと一生、忘れられない。
そんな予感だけが、確かにそこにあった。
「へぇ、れんれんのこのギターって、2017年のライブで初披露したやつですよね? ファンの間じゃ“黒薔薇モデル”って呼ばれてて……」
蓮華は、ソファの向かいに腰を下ろす碧生の言葉を聞きながら、無意識に口元を緩めていた。
「あと、この壁のポスターも……初期のデザインのやつ、今はほとんど出回ってないんですよね。俺、あの時期の曲、めちゃくちゃ好きで……」
「……なぁ」
蓮華は、堪えきれずに笑った。
「なんやねん、碧生くん、俺より“デッド・ブーケ”のこと詳しいんちゃうか?」
「す、すみません……! つい、語りすぎました……!」
碧生が慌てて頭を下げたが、蓮華は首を横に振って小さく笑った。
「ちゃうねん。めっちゃ、嬉しい。なんか、自分が大事にしてきたもんを、同じくらい大事にしてくれてるんやなって思って」
そのまま、ふと蓮華は視線を碧生に戻した。
彼の目は、まっすぐこちらを見ている。
「……でもな」
蓮華は、少しだけ表情を引き締めた。
「俺のこと、“れんれん”としてだけやなくて……もっと“中辻蓮華”として、知ってってほしいなって、思ってたんや。ずっと」
碧生のまなざしが、優しく細められた。
そして、ほんの少しだけ間を置いてから、彼はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……俺の“好き”って、“ファンとして”の“好き”を、たぶんもう超えてるんですよ」
「……え?」
「気づいてました?」
「……」
蓮華は言葉を失い、その場で固まった。目の前の碧生の顔を見ることができず、手元のクッションを無意識にぎゅっと握る。
耳まで真っ赤に染まっていくのが自分でもわかる。
そんな蓮華を見て、碧生がふわっと笑った。
「れんれん……可愛すぎませんか? 想像以上です」
次の瞬間、ふわりと、優しく抱きしめられる。
驚きで一瞬体がこわばった蓮華だったが、胸元に感じる鼓動と、碧生のぬくもりに、そっと目を閉じて身を預けた。
(――やばい。俺、ほんまに……落ちてもうたんやな)
蓮華の中で、ステージの上とはまったく違う“本当の気持ち”が、静かに鳴り始めていた。
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部屋の中には、夕暮れがつくる赤みがかった陰影がゆっくりと差し込んでいた。
窓の向こう、街がゆっくりと夜へ変わっていく。
その移ろいを背に、蓮華と碧生はしばらく黙って、抱き合ったまま互いの鼓動を感じていた。
(この腕の中におるんが……俺で、ええんかな)
そんな不安が、ほんの少しだけよぎった蓮華の胸に、碧生の手がそっと触れた。
「れんれん」
「……うん」
「――目、閉じてもらっても、いいですか」
声があまりに優しくて、心臓がふわっと跳ねた。
蓮華はゆっくりとまぶたを閉じる。
次の瞬間、そっと唇が触れた。
触れるだけの、やさしいキス。
……のはずだったのに。
「……ん」
気づけば、そのキスは少しずつ深くなっていた。
碧生の指先が蓮華の頬をなぞり、その手が首筋を包むように添えられる。
そのまま、何度も、何度も、確かめるように唇を重ねられて――
静かで、甘くて、時間が止まったみたいだった。
(こんなん、反則やろ……)
身体の奥がじんわりと熱くなって、何も言葉が出せなかった。
唇が離れたあとも、余韻に包まれて、ふたりはしばらく見つめ合う。
碧生の目が、少し潤んでいるようにも見えた。
「……ごめんなさい。ちょっと長かったかも」
「……」
蓮華は、ゆっくり首を横に振って、ほんの少しだけ照れたように微笑んだ。
「……全然。むしろ、もっと……って、言いそうになったわ」
「……!」
今度は碧生の方が真っ赤になった。
でも、それすらも愛おしいと思えるくらい、あたたかい空気がふたりを包んでいた。
――この夕暮れは、きっと一生、忘れられない。
そんな予感だけが、確かにそこにあった。
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