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しおりを挟む「夕! 回れ右じゃない」
「くるっとまわれって言ったじゃんよ」
「だから運動会じゃないんだ。キビキビしすぎだって言ってるだろう。普通に振り返れ。あと、回れ左で頼む」
あーもう、それ先に言っといてくれよ。回れ左な。自然にな。
その場でそれをやってみる。
「こうか?」
「回れ左と歩き出しを両立してくれ」
「んー?」
回れ左しながら、歩き出す…足がもつれそうだな。
「ちょっと待て、そんなスピードじゃなくてゆっくりだ」
「ゆっくり…これくらいか…?」
「何かが違う…左肩から先に回れ」
「肩からぁ?」
注文が多いぞ。ゆっくり、左肩から、まわりながら、歩き出して…と。
「顔はちょっと俺の方に残しながら、徐々に上げて行く」
「ああもう! ちょっと待てよ、順番に考えるから!」
進行止めて、マジで周りにすまないとは思ってる。でも、宵闇の注文が多いからなんだ。皆、わかってくれ。
大体、昨日のフォトシューティングよりスタッフが多くてプレッシャーもすごい。
えーと、左肩から入って、顔は宵闇の方にちょっと残しつつ、まわりながら、徐々に上げるのと一緒に足は歩き出して…。
静止ツイスターの3倍くらい難しいじゃねぇか。
「合ってる? 合ってるか?」
「合ってる。ちょっとぎこちないが、合ってる」
「夕、リラックスリラックス! 立ち上がるとこだけは天才的だぞ!」
朱雨が軽く応援してくれる。若干ありがたみに欠けるけどありがとう。
文句言っててもしゃーない、ここでやってくって決めたからには、これは付いてまわるんだし。宵闇の言う通りにやろう。ここは俺の分野じゃねぇからな。
「とりあえず撮ってみるか。全員戻れ」
ぞろぞろとポジションに戻ると、宵闇がそれを確認する。
「お願いします」
監督は頷き、スタートの声をかける。監督の合図で、それぞれ順にフレームアウトして行く。
よし、次は俺だ。
「夕くん」
すっと立つ。宵闇の頭を3秒。左肩から回れ左しながら顔を徐々に上げながら歩き出しながら…。
「っと!」
宵闇以外の全員が同時に笑った。
自分の足に蹴躓くかよ普通…。俺の運動神経、大丈夫か。
転びはしなかったから、顔を上げた宵闇は怪訝な顔をしてる。見られなくて良かったっつーか…これ、撮影されてんじゃん。後で絶対見られるじゃん。
NG集収録決定じゃねぇか。NG集なんてもんがあるのかどうかは知らねぇけど。
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