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第一話【できすぎた偶然】
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一口にSudと言っても、好みのプレイスタイルがある。
束縛、羞恥、加虐、放置、他にも色々あるが、俺は時にそのすべてに当てはまる。
とは言ってもすべてが好きなわけじゃなくて、ギリギリハラハラといった境が好きだ。
危険を感じ、全身の毛穴が開くような、血の気が一気に引くような。
呼吸の仕方も忘れ、心臓さえもとまるんじゃないかと思えるような。
あの、沸き立つような興奮が好きだ。
危険を好むからと言って死にたいわけじゃない、だから体を鍛えた。
鍛えた体でギリギリを楽しむ為に、今この職業についているのもその性だ。
「じゃあ今回の出番を確認するね。まず乱闘シーンからの階段落ち、石段だから勢いに気を付けてね。次に逃亡の末の橋から川へ落下、川底浅いから真似だけね。最後に3階からのジャンプシーン、ここ見せ場だから角度気をつけてね」
「了解」
シナリオを見ながらのマネージャーの説明を聞きながら、準備運動をする。
今回撮っているのは【怪盗と探偵と忍者】とかいう盛りだくさんのミステリーアクションドラマだ。
俺はその忍者役のスタントマンで、アクションシーン担当だ。
探偵の助手が忍者という、とんでも設定のドラマはわりといい視聴率をたたき出していて、現在2クール目に入っている。
1クール目から俺はいるから、スタントマンと言っても顔なじみばかりだ。
「力也(りきや)君、今日の調子はどう?」
「いつも通りっすよ」
屈伸や開脚をしていたら、俺がスタントしている忍者役の孝(たか)仁(ひと)さんが声をかけてきた。
「ならよかった。じゃあ最終確認したいんだけど…」
「はい」
落ちる時の角度、カメラに向ける部分など、スタントマンと役者は見せ方を打ち合わせしなくてはいけない。
顔がでるとスタントマンだとバレてしまうし、人によっては体つきとかで気づかれることもある。
スタントマンを使っているのはわかっていても、それがわかってしまったら演出としてなりたたない。だからこそ、念入りな打ち合わせが必要となる。
俺と孝仁さんは体格が似ているけど、筋肉はもちろん、身長も俺の方が少し高い。
うまく調整しなければ違和感がでてしまう。
「よし、じゃあよろしくね」
「よろしくお願いします」
ヒラヒラと手を振りながら、メイン役者さんたちの方へ戻っていく孝仁さんに軽く頭を下げ先ほどの打ち合わせを頭の中で確認する。
本能を満たすために始めた職業だけど、7年もやっていればそれなりにプロ意識もでてくる。
顔はでないし、人に話すと心配される職業だけど俺はこの仕事を辞める気はない。
「力也君!」
「はい!」
監督に声をかけられて走っていくと、そこには初めて見る役者さんたちがいた。
「彼らが今日の君の乱闘相手だから、組織の構成員設定だからこれっきりじゃないけど」
そう説明し、さらにエキストラの役者さんたちに俺を紹介してくれた。
「よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
互いに挨拶を交わしたときにふと何かを感じた。聞き覚えがある声を聞いた気がした。
(まさか……)
彼らの顔をじっとみて、一人ずつの声を聞き俺は確信した。
エキストラとしてきた5人のうちの一人があのDom男優だと…。
(なんで?ここに……)
確かに役者には違いないのだろうけど、AV男優とドラマ俳優は全く違う。
業種的には近くとも、会うことはないはずなのに。
(なんで?)
さすがにその問いを口にすることはできなかった。
撮影中も、休憩中も必要以上に話しかけることも近づくこともできず、ただ役として打ち合わせたことをやるのに精一杯だった。
自分が惹かれたDomが目の前にいて、直接声が聞こえる。それは偶然というにはあまりにできすぎていた。
束縛、羞恥、加虐、放置、他にも色々あるが、俺は時にそのすべてに当てはまる。
とは言ってもすべてが好きなわけじゃなくて、ギリギリハラハラといった境が好きだ。
危険を感じ、全身の毛穴が開くような、血の気が一気に引くような。
呼吸の仕方も忘れ、心臓さえもとまるんじゃないかと思えるような。
あの、沸き立つような興奮が好きだ。
危険を好むからと言って死にたいわけじゃない、だから体を鍛えた。
鍛えた体でギリギリを楽しむ為に、今この職業についているのもその性だ。
「じゃあ今回の出番を確認するね。まず乱闘シーンからの階段落ち、石段だから勢いに気を付けてね。次に逃亡の末の橋から川へ落下、川底浅いから真似だけね。最後に3階からのジャンプシーン、ここ見せ場だから角度気をつけてね」
「了解」
シナリオを見ながらのマネージャーの説明を聞きながら、準備運動をする。
今回撮っているのは【怪盗と探偵と忍者】とかいう盛りだくさんのミステリーアクションドラマだ。
俺はその忍者役のスタントマンで、アクションシーン担当だ。
探偵の助手が忍者という、とんでも設定のドラマはわりといい視聴率をたたき出していて、現在2クール目に入っている。
1クール目から俺はいるから、スタントマンと言っても顔なじみばかりだ。
「力也(りきや)君、今日の調子はどう?」
「いつも通りっすよ」
屈伸や開脚をしていたら、俺がスタントしている忍者役の孝(たか)仁(ひと)さんが声をかけてきた。
「ならよかった。じゃあ最終確認したいんだけど…」
「はい」
落ちる時の角度、カメラに向ける部分など、スタントマンと役者は見せ方を打ち合わせしなくてはいけない。
顔がでるとスタントマンだとバレてしまうし、人によっては体つきとかで気づかれることもある。
スタントマンを使っているのはわかっていても、それがわかってしまったら演出としてなりたたない。だからこそ、念入りな打ち合わせが必要となる。
俺と孝仁さんは体格が似ているけど、筋肉はもちろん、身長も俺の方が少し高い。
うまく調整しなければ違和感がでてしまう。
「よし、じゃあよろしくね」
「よろしくお願いします」
ヒラヒラと手を振りながら、メイン役者さんたちの方へ戻っていく孝仁さんに軽く頭を下げ先ほどの打ち合わせを頭の中で確認する。
本能を満たすために始めた職業だけど、7年もやっていればそれなりにプロ意識もでてくる。
顔はでないし、人に話すと心配される職業だけど俺はこの仕事を辞める気はない。
「力也君!」
「はい!」
監督に声をかけられて走っていくと、そこには初めて見る役者さんたちがいた。
「彼らが今日の君の乱闘相手だから、組織の構成員設定だからこれっきりじゃないけど」
そう説明し、さらにエキストラの役者さんたちに俺を紹介してくれた。
「よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
互いに挨拶を交わしたときにふと何かを感じた。聞き覚えがある声を聞いた気がした。
(まさか……)
彼らの顔をじっとみて、一人ずつの声を聞き俺は確信した。
エキストラとしてきた5人のうちの一人があのDom男優だと…。
(なんで?ここに……)
確かに役者には違いないのだろうけど、AV男優とドラマ俳優は全く違う。
業種的には近くとも、会うことはないはずなのに。
(なんで?)
さすがにその問いを口にすることはできなかった。
撮影中も、休憩中も必要以上に話しかけることも近づくこともできず、ただ役として打ち合わせたことをやるのに精一杯だった。
自分が惹かれたDomが目の前にいて、直接声が聞こえる。それは偶然というにはあまりにできすぎていた。
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