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第十八話【知らないもの】後
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「てめぇの指示不足をSubの所為にしてんじゃねぇよ」
「黙っていてもらえますか?これはしつけです」
「しつけ?はっきりと指示も出さないで、不安だけ煽って、てめぇで穴に落としておいて散々楽しんでから救い上げるみてぇなことしやがって。言わなくてもわかれ?Subはエスパーか?」
「マミに情が移ったのはわかりました。だからと言って口を出さないでもらいたい」
「追い込みすぎだって言ってんだよ」
力なく座ったままのマミを抱き起し、かばうようにした冬真の仕草に伊澄のグレアが変わる。
「離せ!」
そう咆哮のように怒鳴った瞬間、ビリビリとした容赦のない攻撃のグレアが伊澄から放たれた。ディフェンス、自分のSubを守ろうとする行動だった。
とっさに冬真はマミを自分たちから離れるように、その背を押した。
「マミ!」
力強く押されたそのマミの体は、駆け付けた力也に抱き留められた。そのまま、力也はマミを抱きしめ冬真たちから少し距離を取り、さらに自分の体を盾にかばうように抱きしめた。
伊澄が放つディフェンスはどんどん力を増していき、すべてを攻撃するのではないかと思うほどの、狂気を含んだものとなっていた。
しかし、それを真正面からあてられているはずの、冬真はひるむことなく鼻で笑った。
「何が一番大事かもわからず、自分はSubのこと見てねぇくせに、Subにだけ見てほしい。そんなどおりが本当に通ると思ってんのか?はっきり言ってやるよ、てめぇがしてるのはしつけじゃねぇ、虐待だ!」
冬真はそういうと、抑えていたグレアを伊澄に向かい放ち、伊澄のだしていたグレアを押し返した。押し返したうえで、それ以上歯向かわないように圧力をかけていく。力の差を意思の差を覚悟の差を自覚させるべく、決して弱めず圧力をかける。マウント、Domの上下関係をわからせたのだ。
「ぐぁっ」
先ほどまで狂気に満ちていた伊澄の体に力が入らなくなっていく、まるで錘でも乗せられているかのように足が震える。呼吸もままならなくなっていく。ついにはその膝が地面につき、両手まで地についた。
「冬真、そこまでだ!」
神月監督の静止の声が、響き渡った。それでも、顔をあげるのは許さないとばかりに、空気を和らげることがない冬真のもとへとゆったりとした様子で歩み寄る。
「どうだ?自分が落とされた気分は?お前はそれを常にマミに強制していたんだ」
冬真の肩へと手を置き、変わるとばかりに下がらせると伊澄の前に立った。地べたに這いつくばる様子を見下ろす。
「冬真、お前はアイツをほめてやれ。アイツしっかり守り通したぞ」
その言葉に、冬真ははっと気づいたように、力也とマミのほうをみた。力也は自分の背を盾にしてこれ以上負担がかからないように、おびえることのないように、震え続ける小さな体を抱きしめていた。
「力也!」
二人分の威嚇のグレアを近距離で浴びた力也へと走り寄ると、力也は汗を浮かべながらもニコッと笑った。
「終わった?」
「あ、ああ。ありがとな、立てるか?」
「俺は平気。マミ、立てる?」
差し出した冬真の手を断り、マミから手を放さず抱きしめたまま、ゆっくりと立ち上がった。その背を慰めるようにやさしく撫でていると、少し落ち着いたマミの瞳が伊澄のほうへと向いた。
「伊澄さん!」
地べたへと這いつくばる伊澄の姿を見た瞬間、マミは力也の手を振り払いふらつく足で、転がるように神月監督と伊澄の間へ土下座をした。
「ごめんなさい!ごめんなさい!僕が悪いんです!全部僕が…僕が…」
「愛波」
「僕がなにもできないから…僕がダメだから…僕がバカだから…伊澄さんは僕のためにしてくれたんです!ごめんなさい…ごめんなさい」
マミ、愛波は驚く伊澄をかばうように、頭を地べたにつけ、神月監督へと謝罪をし続ける。その姿は全身が恐怖に震え、強い自責の念にとらわれていた。
「本当に、いい身分だな。知りもしない恐怖を与えていた相手にかばってもらって、こいつが感じた恐怖の一万分の一も感じてはいないくせに、被害者みたいに守ってもらって。俺はな、お前みたいな自分の欲で動いてるくせにSubのためとか言って、見もしないやつが嫌いなんだよ。よく見ろよ、お前の前にあるその体を、誰に守ってもらってんだ?お前は何を見てきたんだ?俺の前にこうしているっていうのがどれだけマミにとってキツイかわかるか?お前が感じている何十倍の恐怖の中こいつはまだ自分に非があると思ってこうして、俺に頭を下げてんだ」
「はぁっ…ふっ…ごめ、ごめんなさい」
「いま俺が、グレアを浴びせればこいつはサブドロップから戻ってこれなくなる。やってやろうか?お前がここまで追い詰めたんだ。壊したいなら俺が力を貸してやるよ」
「やめ、やめて…」
「お人形さんが欲しいんだろ?ならそうしてやるよ。大丈夫自我を失ってもコマンドは効くし命令にも従う。お前が望んでいたことだろう?」
「やめてください!!」
神月監督が、グレアを発した瞬間、伊澄は這いずるように愛波を抱きしめた。
「伊澄さん」
「いや、だめです。私の大切な子なんです。お願いします。やめてください」
驚く愛波の体を抱きしめ、ボロボロと涙を流す。それは愛波も初めて見る大事なものを取られる恐怖におびえる弱い姿だった。
「その気持ち忘れんな。真剣に考えろ、活かすも殺すも自由という本当の意味を、大事にしろお前を受け止めてくれる存在を」
「は、はい…ごめん、ごめん愛波」
「伊澄さん…なんで…」
「ごめん、たくさんたくさんひどいことをした。なにもわかっていなかった。私はなにもわかっていなかった」
ぎゅっと抱きしめる伊澄に戸惑いつつも、静かに涙を流す。その瞳には安堵と至福の色が宿っていく。愛波にとって本当に久しぶりだった。本気で抱きしめてくれたことも、いつ怒りだすかわからない不安を感じないことも…。
「よかったです」
「ねぇ、本当に…よかっ…」
その様子を見ながら、離れた場所にいる孝仁たちのほうへと向かった力也たちの前で、孝仁が膝から崩れ落ちた。
「孝仁!?」
「孝仁さん!」
支えた将人が慌てだす中、力也も冬真もすぐにその体を支える。孝仁はハッハッとまるで酸欠かのように息を吸うことだけを繰り返し、その体はさきほどの愛波のように震えていた。しかし、その瞳は限界まで開き焦点が合っていない。
「しまった。そっちか!」
Switchのはずの孝仁の起こしたサブドロップのような症状に、どうしていいかわからず焦る力也たちのもとへ神月監督が走ってきた。
「どけ」
すぐに、冬真をどかし孝仁の体を支える。
「Switchのコントロールが効かなくなってる、Sub性に傾きすぎたんだ。孝仁、こっちを見ろ。負けるな、お前はグレアを出せるはずだ。忘れるな自分の性を否定しようとするな。お前はお前なんだ」
「孝仁さんこっちみてください」
その言葉で、Switchとしての孝仁の中にあるDom性が消えかけていることに気づいた力也はSubとして呼びかけた。
「孝仁、グレアだ。力也にグレアをだしてみろ」
「孝仁さん、わかります?俺にグレアをください。お願いします」
「力也君」
ゆっくりと孝仁の体からグレアが放たれていく、孝仁のグレアは弱く、それでも太陽の光を浴び続けたタオルのように暖かいものだった。
「そうだ。うまくできたな」
「孝仁さん、ありがとうございます」
「力也君、力也君!」
ぎゅっと抱き着いてきたその体を抱きとめ、力也は心配そうに見守っていた将人と冬真へとVサインをだした。二人を助けられた力也はすごくうれしそうに、心からの笑顔を浮かべていた。
「黙っていてもらえますか?これはしつけです」
「しつけ?はっきりと指示も出さないで、不安だけ煽って、てめぇで穴に落としておいて散々楽しんでから救い上げるみてぇなことしやがって。言わなくてもわかれ?Subはエスパーか?」
「マミに情が移ったのはわかりました。だからと言って口を出さないでもらいたい」
「追い込みすぎだって言ってんだよ」
力なく座ったままのマミを抱き起し、かばうようにした冬真の仕草に伊澄のグレアが変わる。
「離せ!」
そう咆哮のように怒鳴った瞬間、ビリビリとした容赦のない攻撃のグレアが伊澄から放たれた。ディフェンス、自分のSubを守ろうとする行動だった。
とっさに冬真はマミを自分たちから離れるように、その背を押した。
「マミ!」
力強く押されたそのマミの体は、駆け付けた力也に抱き留められた。そのまま、力也はマミを抱きしめ冬真たちから少し距離を取り、さらに自分の体を盾にかばうように抱きしめた。
伊澄が放つディフェンスはどんどん力を増していき、すべてを攻撃するのではないかと思うほどの、狂気を含んだものとなっていた。
しかし、それを真正面からあてられているはずの、冬真はひるむことなく鼻で笑った。
「何が一番大事かもわからず、自分はSubのこと見てねぇくせに、Subにだけ見てほしい。そんなどおりが本当に通ると思ってんのか?はっきり言ってやるよ、てめぇがしてるのはしつけじゃねぇ、虐待だ!」
冬真はそういうと、抑えていたグレアを伊澄に向かい放ち、伊澄のだしていたグレアを押し返した。押し返したうえで、それ以上歯向かわないように圧力をかけていく。力の差を意思の差を覚悟の差を自覚させるべく、決して弱めず圧力をかける。マウント、Domの上下関係をわからせたのだ。
「ぐぁっ」
先ほどまで狂気に満ちていた伊澄の体に力が入らなくなっていく、まるで錘でも乗せられているかのように足が震える。呼吸もままならなくなっていく。ついにはその膝が地面につき、両手まで地についた。
「冬真、そこまでだ!」
神月監督の静止の声が、響き渡った。それでも、顔をあげるのは許さないとばかりに、空気を和らげることがない冬真のもとへとゆったりとした様子で歩み寄る。
「どうだ?自分が落とされた気分は?お前はそれを常にマミに強制していたんだ」
冬真の肩へと手を置き、変わるとばかりに下がらせると伊澄の前に立った。地べたに這いつくばる様子を見下ろす。
「冬真、お前はアイツをほめてやれ。アイツしっかり守り通したぞ」
その言葉に、冬真ははっと気づいたように、力也とマミのほうをみた。力也は自分の背を盾にしてこれ以上負担がかからないように、おびえることのないように、震え続ける小さな体を抱きしめていた。
「力也!」
二人分の威嚇のグレアを近距離で浴びた力也へと走り寄ると、力也は汗を浮かべながらもニコッと笑った。
「終わった?」
「あ、ああ。ありがとな、立てるか?」
「俺は平気。マミ、立てる?」
差し出した冬真の手を断り、マミから手を放さず抱きしめたまま、ゆっくりと立ち上がった。その背を慰めるようにやさしく撫でていると、少し落ち着いたマミの瞳が伊澄のほうへと向いた。
「伊澄さん!」
地べたへと這いつくばる伊澄の姿を見た瞬間、マミは力也の手を振り払いふらつく足で、転がるように神月監督と伊澄の間へ土下座をした。
「ごめんなさい!ごめんなさい!僕が悪いんです!全部僕が…僕が…」
「愛波」
「僕がなにもできないから…僕がダメだから…僕がバカだから…伊澄さんは僕のためにしてくれたんです!ごめんなさい…ごめんなさい」
マミ、愛波は驚く伊澄をかばうように、頭を地べたにつけ、神月監督へと謝罪をし続ける。その姿は全身が恐怖に震え、強い自責の念にとらわれていた。
「本当に、いい身分だな。知りもしない恐怖を与えていた相手にかばってもらって、こいつが感じた恐怖の一万分の一も感じてはいないくせに、被害者みたいに守ってもらって。俺はな、お前みたいな自分の欲で動いてるくせにSubのためとか言って、見もしないやつが嫌いなんだよ。よく見ろよ、お前の前にあるその体を、誰に守ってもらってんだ?お前は何を見てきたんだ?俺の前にこうしているっていうのがどれだけマミにとってキツイかわかるか?お前が感じている何十倍の恐怖の中こいつはまだ自分に非があると思ってこうして、俺に頭を下げてんだ」
「はぁっ…ふっ…ごめ、ごめんなさい」
「いま俺が、グレアを浴びせればこいつはサブドロップから戻ってこれなくなる。やってやろうか?お前がここまで追い詰めたんだ。壊したいなら俺が力を貸してやるよ」
「やめ、やめて…」
「お人形さんが欲しいんだろ?ならそうしてやるよ。大丈夫自我を失ってもコマンドは効くし命令にも従う。お前が望んでいたことだろう?」
「やめてください!!」
神月監督が、グレアを発した瞬間、伊澄は這いずるように愛波を抱きしめた。
「伊澄さん」
「いや、だめです。私の大切な子なんです。お願いします。やめてください」
驚く愛波の体を抱きしめ、ボロボロと涙を流す。それは愛波も初めて見る大事なものを取られる恐怖におびえる弱い姿だった。
「その気持ち忘れんな。真剣に考えろ、活かすも殺すも自由という本当の意味を、大事にしろお前を受け止めてくれる存在を」
「は、はい…ごめん、ごめん愛波」
「伊澄さん…なんで…」
「ごめん、たくさんたくさんひどいことをした。なにもわかっていなかった。私はなにもわかっていなかった」
ぎゅっと抱きしめる伊澄に戸惑いつつも、静かに涙を流す。その瞳には安堵と至福の色が宿っていく。愛波にとって本当に久しぶりだった。本気で抱きしめてくれたことも、いつ怒りだすかわからない不安を感じないことも…。
「よかったです」
「ねぇ、本当に…よかっ…」
その様子を見ながら、離れた場所にいる孝仁たちのほうへと向かった力也たちの前で、孝仁が膝から崩れ落ちた。
「孝仁!?」
「孝仁さん!」
支えた将人が慌てだす中、力也も冬真もすぐにその体を支える。孝仁はハッハッとまるで酸欠かのように息を吸うことだけを繰り返し、その体はさきほどの愛波のように震えていた。しかし、その瞳は限界まで開き焦点が合っていない。
「しまった。そっちか!」
Switchのはずの孝仁の起こしたサブドロップのような症状に、どうしていいかわからず焦る力也たちのもとへ神月監督が走ってきた。
「どけ」
すぐに、冬真をどかし孝仁の体を支える。
「Switchのコントロールが効かなくなってる、Sub性に傾きすぎたんだ。孝仁、こっちを見ろ。負けるな、お前はグレアを出せるはずだ。忘れるな自分の性を否定しようとするな。お前はお前なんだ」
「孝仁さんこっちみてください」
その言葉で、Switchとしての孝仁の中にあるDom性が消えかけていることに気づいた力也はSubとして呼びかけた。
「孝仁、グレアだ。力也にグレアをだしてみろ」
「孝仁さん、わかります?俺にグレアをください。お願いします」
「力也君」
ゆっくりと孝仁の体からグレアが放たれていく、孝仁のグレアは弱く、それでも太陽の光を浴び続けたタオルのように暖かいものだった。
「そうだ。うまくできたな」
「孝仁さん、ありがとうございます」
「力也君、力也君!」
ぎゅっと抱き着いてきたその体を抱きとめ、力也は心配そうに見守っていた将人と冬真へとVサインをだした。二人を助けられた力也はすごくうれしそうに、心からの笑顔を浮かべていた。
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