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第三十話と三十一話の裏で
しおりを挟むなにをするにも愛らしく、愛おしく、可愛い、なによりも大事な存在で、生きていく上での癒しでもあるSubたちが、休憩をとるために会場を出た瞬間会場には独特の緊張感が訪れた。
「では、ここにお残りのDomの方々に指導者の立場として命じます。UP」【立ってください】
先ほどまでの優し気な雰囲気を一瞬で消し去った菊川のそのコマンドに、即座に反応したのは少なかった。即座に、椅子から立ち上がり直立不動の姿勢になったのは、冬真たち王華学校の関係者だった。
「おや、まだ立てない方がいらっしゃるようですね。ではもう一度UP」【立ちなさい】
落ち着いた声色ながら、その一言は会場中に響き渡り、反論など許さないと空気までも揺らすグレアを含んだものだった。今だ席に座っていたDomたちはまるで転げ落ちるかのように立ち上がった。
「はい、さて我々の素晴らしいパートナーであるSubの皆様がいらっしゃらない間にもっとも大事なお話をしたいと思います」
ステージから降りた菊川はコツコツと足音を立て、看守のように残された驕りでできたDomたちを一人ずつ見て回る。
「今日は嬉しいことに、私と同じ思想の同志も参加してくださり、ありがたく思っています。その他の方々には今日ここでパートナーの在り方を学んでいただき、是非とも互いに互いを監視していける私たちと同じ関係を築きたいと思います」
そういう菊川の瞳を見たものは、背筋が凍るのを感じた。その瞳は透き通るほどに、淀み、目の前にいる人を映してはいなかった。彼が映しているのは、人ではない。彼が瞳に映しているのは、自分の大事な宝を傷つける可能性のある凶悪な注意人物だけだった。
「我々に許しを与えてくださるSubの皆様は、いつでも私たちを見てくださいます。多くの人々が目を反らしたいほどの醜い欲にまみれ、歪んだ愛情しか抱くことができないそんな私たちについてきてくださいます。これをどう思いますか?」
菊川がそう言いながら立ち止まったのは、起立の号令に即座に従ったDomの中の一人だった。
「深く感謝しています。とても尊い精神だと」
「そう、崇高なるSubの皆様は悪魔のような私たちに命を預けてくださるのです。自分を害する可能性の高い、刃物をチラつかせる殺人鬼のような私たちに。私たちはそんな尊いSubの皆様がいるからこの世界に生きていけるのです」
相手の答えに満足した菊川は、にっこりと鳥肌がたつような笑顔を浮かべた。
「では、いまから我々の救い人であるSubの皆様が戻っていらっしゃる前に、後半の講習の準備をしようと思います。Subの皆様がお座りになる椅子を残し、すべてを片付けてください」
どういうことかとざわざわとし始める中、菊川は誰の意見も聞きはしないという瞳で宣言した。
「後半、男性のDomの方々は立ったまま空気椅子で拝聴していただきます。もしどうしても椅子に座りたいというならば、Subの皆様を膝の上に乗せる場合にのみ許可しましょう。女性のDomの方々は、パートナーが男性の場合に限り、背中から抱きしめた状態で受けることも許可しましょう。女性同士の場合は、男性と同じです。わかりましたか?」
冬真たち含む王華学校の関係者たちが、すぐさま椅子を片付け始めるのに対し、理解ができず動けないままのDomたちはもう一度菊川からの喝という名のグレアを浴びることになった。
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