エキゾチックアニマル【本編完結】

霧京

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第四十一話【【信じられるもの】】後

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たっぷり栄養補給をした力也は冬真に指示され、もう一度床におすわりをした。先ほど叩かれた尻は既に痛みがなかったが、それでも床の冷たさは気持ちがいい。
 “Stay”を言い渡され、そのままの状態で待つ。ご主人様の動きを見逃さないように、見つめるその手足には、少し前に通販で見つけ買ってしまった拘束具が嵌められていた。
 両手は足首と繋がれ、首はその二つへ続く鎖にリードでとめられていた。装着するときに少しだけ短くしたらか、首は上を向くことしかできない。
 つまりどうしたって、ベッドにいる冬真から目線を反らすことができない。

「実は俺前からやってみたいのがあったんだけど、なかなかできなくて……」
「AVでもできないこと?」
「あ、別に猟奇的な内容じゃないからそこは安心して」

 ダイナミクス向けはSM系が多く、わりとなんでもありなのだが、それでもできないと言えば多くの人は残酷な内容だと思うだろう。そう考え、言い重ねるように告げた冬真の言葉に、力也は不思議そうな目を向けた。

「そこは疑ってねぇけど、冬真そういうの苦手そうだし」
「本当に、力也がそっち好きじゃなくて俺も助かってる」

 では何をするのかと見ていると、冬真は手にしたローションを薄いガーゼへとしっかりと染み込ませた。そしてそれを手に力也の前へと膝をついた。

「タオルはたくさん持ってきたし、大丈夫だとは思うけど」

 そういうと、ローションを染みこませたガーゼを勃起する性器の先端へと当てた。

「ローションガーゼやったことある?」
「ない」
「力也の初体験ゲット! じゃあ、やりすぎないよう気を付けるけどかなりヤバいらしいから、セーフワードためらうなよ?」
「わかった」

 そう言うと、冬真はガーゼを横に引いた。軽く引かれたその瞬間、はじけるような快感が力也を襲った。

「はぁっ………!」

動かすことなどできない状態なのに、体が跳ねたかのように感じ、体がガクガクと小刻みに震えだす。

「と……とうまぁ……なにこれ……」
「だからローションガーゼだって、ぴったりと添わせて磨くようにこうやって」
「ああああっ!!」

 もう一度、擦られた瞬間、力也の先端から精液とも塩ともいえない物が噴出した。それは勢いよく噴出したもの止まる気配を知らない。

「まだいけそうだな」
「やぁっ……これおかしくなる」

 珍しく、嫌がる言葉を口にした力也の様子をチラッと見ると、冬真はそれを聞き入れずガーゼへと力を込めた。

「可哀そうだけど、お仕置きだから」
「うそっ……やぁぁぁ!」

 もう一度、引けば再び力也の性器からは勢いよく噴水のように噴き出す。己の買った拘束具の所為で抵抗することもできず、その体は痙攣のように震えていた。
 
(もう少しいけそうなんだよな)

 顎をさげることもできず、上を見上げたままのその瞳からは涙が流れ落ちていた。ガーゼの下の性器は不自然に震えながら、止めどなく液を漏らす。三回擦っただけで、床は出されたものでビチャビチャになっていた。
 むろん、近くにいた冬真もそれがかかっている。だが、それさえも力也は気づいていない。

「力也、これですべて許してやるから後七回、耐えきれるか?」
「ぐっ……ずっ……七回も……?」
「そう、さっきの入れて全部で十回。無理なら今のうちに言ってほしい。この後は一気に行くから」

 どうなるか見るために、最初はゆっくりやったが、本来もっと早いスピードでやるものだ。その為、傷つけないようにローションはたっぷり目に染み込ませてある。実際にやったことはなかったが、体力も気力も使うのは知っている。
 力也なら明日には回復できるだろうが、今日は体力が残り少ない。ならこの辺でやめればいいと言われそうだが、もう少し見たいと思ってしまう。

「どうする? 数減らす?」
「いい、頑張る」

 状況的に泣き言を言い出す可能性を考えながら、もう一度聞き返した。

「本当に? 俺減らしても構わねぇよ」
「大丈夫……だからまた沢山褒めてほしい」
「わかった。ありがとう」

 そう言うと、受け入れるように瞳を閉じたその姿は健気さと共に、ある種の凛々しさまで秘めていた。
 しかし、それはその時だけのことであった。冬真が手を動かした瞬間ガクガクと震え、止まらぬ快感に悲鳴のような嬌声を発し、その口からは大量の唾液が流れ落ちる。
 強すぎる快感に涙と涎、更には性器からもダラダラと液をこぼれさせながら、ただ、ただそれを受け入れた。

「Good Boy、力也」【よくできました】

 気づけばまた冬真に抱きしめられていた。

「とうま……終わっ……た?」
「ああ、終わった。偉かったな力也」

 背中を撫でながら“Good Boy”と何度も褒められ、達成感と幸せで心が満たされる。
力也にとって長い時間のように感じた責め苦は、意に反し短い時間であった。それでも、摩擦による快感は意識を奪い、その間はまさにぐちゃぐちゃとしか言えなかった。

「俺またサブスぺ入ってた?」
「一瞬意識飛んでただけ、つらいのに耐えてくれてありがとう」

 そういうと冬真は、力也の首に続くリードを外し、首を自由にするとその目尻へキスをした。キスのついでのように、涙の痕を舌で舐めリードを掴むと自分はベッドを背に座る。

「力也、このままこれるか?」
「うん」

 下着が下ろされることで露わになったのは、脈打つぐらいに立ち上がり、力也を待ち構える冬真の性器だった。
 ごくりと唾を飲み込むと、力也は膝立ちのまま、ぬるぬるになった床を進み冬真を跨いだ。

「いいこ、力也Kneel」【おすわり】

 両手が使えないながらも、しっかりと位置を合わせた力也を軽く支え、冬真は愛情のグレアと共にそう命じた。
 力也はそのあとのことを覚えているようでよく覚えていない。ただ、自由にならない手足の代わりに冬真が支え、時に強く抱きしめ、快感と幸福だけを与えてくれたことは覚えている。冬真は擦られた乳首も、性器もいたわる様に舐め、言葉にならない声を発する力也を甘やかすように抱いた。

 次の日気づけば、とっくに日が昇っていた。いつベッドに上ったのかも覚えていないが、見る影もなかった体も、ビショビショだった床も綺麗に拭かれていた。

「あれ?」
「お、起きた?」

 その声に、すでに起きて動いていたらしい冬真が、寝室へと来てベッドに座った。

「体調は?」
「いいと思う」

 そう答えた力也の状況を確かめるように、顔を覗きこみ、額に手を当てたりすると本当のようだと頷いた。

「よかった」
「今何時?仕事は?」
「もうすぐ10時になるとこ、仕事は俺は午後から、力也はお休み」

 そう答えれば、途端に心配そうになる真面目な様子に苦笑し、証拠とばかりにスマホを見せる。

「ほら、俺は最初から午後から。お前のは氷室さんが昨日のうちに、調整したらしいから後でお礼言えばいいって」
「うん」

 そんな力也をしばらく撫でていた冬真だったが、不意に真剣な瞳になり、その顔をじっと見た。

「なに?」
「お前、しばらく入浴とプール禁止って言ったら耐えられる?」
「耐えられるけど?」

 どういう意味だろう、肌を見せるなという命令にしては少しおかしいと思い聞いていると冬真は、少し息を吸い口にした。

「腫れが引いたらピアス開けたい」

 昨日いじりすぎた所為かまだ熱を持つ、乳首を指さされ、力也はとっさにそこに触れた。

「お前の体だから、嫌なら言え」
「……いやじゃない」

 母もしていたのを覚えているから、それほど驚きはしなかったが、緊張しながら答えると冬真は真意を確かめるように見て頷いた。

「よし、じゃあ。やるときはいうからそれまでに覚悟決めとけよ」
「うん」

 そう言って笑う冬真に、頭を撫でられただけで緊張がほぐれていくのを感じた。
 チラリと見えた冬真の首筋には昨日、力也がつけたキスマークがまだ残っている。自分では見えないが、恐らく力也の首筋にはもっとたくさんの痕が残っている。
 しかし、これは明日になればきっと消えてしまう。
 乳首のピアスがどれほど痛いかはわからないが、きっと冬真が開けると決めたのだから、最大限の配慮をしてくれるだろう。
 緊張はあるが、恐怖は何もない。言い聞かせる必要もなく、大丈夫だとわかるから……。
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