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Collarと呼ばれる首輪、それはSubの証、母の宝。装飾品をつけない、母の胸に光るピアスもそうだと言っていた。
微妙に傾いた胸のピアスは、母には似合わない、大ぶりのもので、右と左が鎖で繋がれていた。
母の体にはそれだけじゃなく、いくつもの傷があった。
それらは母にとって大切なものだと言っていた。例え他人には見せられないものだとしても。
学校から手渡されたプリントを手に、力也は近所の公園にいた。
キーキーと音を立て、ブランコを揺らしながら、習ったばかりの記憶を駆使してプリントを読む。
「授業参観のお知らせ、保護者の皆様におきましてはますます……」
学校で先生が話していた内容と照らし合わせ、もう一度日にちと時間を確認する。
「やっぱり5日金曜日」
何度考えても無理だとわかり溜め息をつく。
その日は母のご主人様がいらっしゃる日だ。
「せっかくいらっしゃるんだから、ダメだよな」
週に1度と決まっている訳ではない、すべてはご主人様の心次第、母はそれを24時間心待ちにしている。
その日は母にとってPlayをしていただける貴重な日。
余計な予定などいれたくはないだろう。母は来たがるかも知れないが、ご主人様は怒るかも知れない。
別の日にしてくれるならいいが、ご機嫌を損ねればしばらくいらっしゃってくれないかもしれない。
「よし、なかったことにしよう」
嘘も隠し事も苦手だが、母相手なら隠しきれる自信があった。
「他にも来ない親もいると思うし」
仕事で都合がつかない人だっているだろう、だから全然大丈夫だと思えた。
しっかりとプリントを折り畳み、公園の時計を確認する。帰るまでにはまだ時間がある。
暇潰しに、図書室から借りてきた本を読むことにした。
「犬の太郎は、幸せになれました」
保護犬の話の挿し絵、幸せそうなその首につけられている首輪を指でなぞる。
「母さん、まだかな」
そうしてしばらくして、予定の時間が過ぎた。母はまだ来ない。
「どうしよう」
帰るか、もう少し待つか、悩む。まだご主人様がいらっしゃるのか、既に帰られているのかもわからない。
「もう一回読もう」
迎えに来てくれると言っていた母を待ちながら、力也は新たな大切な飼い主と出会った犬の話をまた読み返した。
微妙に傾いた胸のピアスは、母には似合わない、大ぶりのもので、右と左が鎖で繋がれていた。
母の体にはそれだけじゃなく、いくつもの傷があった。
それらは母にとって大切なものだと言っていた。例え他人には見せられないものだとしても。
学校から手渡されたプリントを手に、力也は近所の公園にいた。
キーキーと音を立て、ブランコを揺らしながら、習ったばかりの記憶を駆使してプリントを読む。
「授業参観のお知らせ、保護者の皆様におきましてはますます……」
学校で先生が話していた内容と照らし合わせ、もう一度日にちと時間を確認する。
「やっぱり5日金曜日」
何度考えても無理だとわかり溜め息をつく。
その日は母のご主人様がいらっしゃる日だ。
「せっかくいらっしゃるんだから、ダメだよな」
週に1度と決まっている訳ではない、すべてはご主人様の心次第、母はそれを24時間心待ちにしている。
その日は母にとってPlayをしていただける貴重な日。
余計な予定などいれたくはないだろう。母は来たがるかも知れないが、ご主人様は怒るかも知れない。
別の日にしてくれるならいいが、ご機嫌を損ねればしばらくいらっしゃってくれないかもしれない。
「よし、なかったことにしよう」
嘘も隠し事も苦手だが、母相手なら隠しきれる自信があった。
「他にも来ない親もいると思うし」
仕事で都合がつかない人だっているだろう、だから全然大丈夫だと思えた。
しっかりとプリントを折り畳み、公園の時計を確認する。帰るまでにはまだ時間がある。
暇潰しに、図書室から借りてきた本を読むことにした。
「犬の太郎は、幸せになれました」
保護犬の話の挿し絵、幸せそうなその首につけられている首輪を指でなぞる。
「母さん、まだかな」
そうしてしばらくして、予定の時間が過ぎた。母はまだ来ない。
「どうしよう」
帰るか、もう少し待つか、悩む。まだご主人様がいらっしゃるのか、既に帰られているのかもわからない。
「もう一回読もう」
迎えに来てくれると言っていた母を待ちながら、力也は新たな大切な飼い主と出会った犬の話をまた読み返した。
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