エキゾチックアニマル【本編完結】

霧京

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第八十四話【パーティと催し】後

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 会食も一通り落ち着き、Dom達の交流も済んだ頃、会場の中央に用意されたステージには今日の催しの司会らしいDomが一人立った。

「皆様、お楽しみの最中に失礼いたします。これより、SubとDomによるいくつかの催しを開催させていただきます。まずは特技披露からです。ご参加される方はステージにお集まりください」
「力也さん、頑張ってください」
「ああ」

 すぐに来た出番に、力也は冬真に連れられステージの近くに来た。とはいえ、ステージは中央に設置された物だけなので意外と狭い。

(これでできるってなるとそんなに動けないな)

 格闘技系をやってもいいが、それだと相手がいた方が見栄えがする。それもできれば素人ではなくある程度動ける人、しかし出場者の様子をみるにパートナーの手は借りるが他の人の手を借りるようすはない。

(冬真は・・・・・・無理だな)

 考えるだけ無駄だったと諦め、他の物を考える。頼めばやってくれるだろうが、見応えはないだろう。ならやはり最初に考えていた通り、もっと広いところを使わせてもらい、アクロバティックな事をするのがいいだろう。

「質問いいですか?」
「はい、なんでしょうか?」

 力也が視線でいい場所を探していると、事前にやることを相談していた冬真が代わりに司会の人へ尋ねた。

「ステージ上でできない事はダメなんでしょうか?」
「いえ、ステージを使わなくても問題ありませんよ」
「よかった。俺の力也にはなるべく広い場所を使わせたいので」
「わかりました。では次の催しに備えて少し広い場所を用意しているので、その場所を使うと言うことでお二人は一番最後にお願いします」
「ありがとうございます」

 気がきく冬真によかったなと笑いかけられ、頷き返した。これで思いっきり動けるだろう。

 特技披露は次々に進んでいった。一人一人の持ち時間は少ないので、皆短い時間で自分の特技を披露していく。
 色々なタイプのSubがいるので、一口に特技と言っても、歌を歌う人、ダンスをする人、手品をする人など様々な内容があった。中には、ポールを使いポールダンスをする人や、力也が一瞬考えた格闘系の技を見せる人もいた。

「よかった。被るとこだった」
「瓦割りなんか力也できんのか?」
「できなくはないよ。やったことはあるし、でも慣れてないからうまくいくかどうか・・・・・・」

 昔、空手で試しにやったことはあるが、特に心揺さぶられる物ではなかったからその後はやっていない。

「ならやろうとすんなよ」
「狭くて相手がいないとなるとやること限られるし、その辺ならやれるかなって思っただけ。冬真投げ飛ばす訳にはいかないし」
「力也になら投げ飛ばされてもいいけど」
「受け身とれないんだからやめて」

 予想通りの事を言われ、即座に拒否し、力也は自分の番に備えて軽くストレッチを始めた。

「では最期に、力也さん、お願いします」
「はい」

 広く空いたスペースの端に力也は立った。大きく深呼吸をすると冬真の“Go!”という合図とともに走り出す。両手をついて上へ跳ね、そのまま体を回し、体を戻すと床へ着地すると同時にもう一度跳ねるように空中で後転をすると、改めて床に着地した。

「おー!」
「前方伸身宙返り&バク転でした!」

 大きな歓声と拍手に、先ほど力也から教えて貰った技名を冬真がマイクで説明し、最期の特技披露が終わった。
 特技披露の後は一端集計がとられる。いいと思ったところにポイントを入れていくスタイルらしく、張り出された名前の横にシールが貼られていく。

「どう?」
「うーん、結構シールあるけど、皆そんなに変わらないんだよな」
「まぁ、一人一人の持ち点も多いし、そんなもんだよね」

 特技披露はSub好きの人々にとっては、何をしても好意的にみられる為、点数の差がつきにくい。その為、順位ごとの賞品の差も少ない。

「まぁQUOカードは貰えるし、3位以内で食事券貰えればラッキーだよな」
「そうだな」

 その言葉通り、力也は無事三位以内に入り、スイーツバイキングの食事券を手に入れた。二人用の券ではあったが、十分嬉しそうにしていたので“良かったな”と冬真は力也を撫でた。

 その後次の内容に備えて、参加者達はプールへ移動することになった。水で溶ける水着を着用してプールの上に浮かべた板の上での、尻相撲を見学した。

「本当に溶けるんだな」
「見た目は結構普通の水着に見えるから、いたずらにも使えるんだよな」

 AV俳優時代の知識だろうか、スタッフに見本を見せて貰っている力也にニヤリとした笑みを浮かべた冬真にジト目を返す。

「着ないからな」
「着ろなんて言ってないだろ。なんだよ、想像したのか?」
「してない!」

 あんな、汗でも溶けそうな水着なんかPlayだってすぐ意味がなくなるに決まっている。それなら着ないのと変わらないと、思いながら力也は次の内容に備えて中に戻った。

「では次は大人気ご主人様捜索です。参加するSubの皆様はこちらへお越しください」
「結衣行こう」
「はい、ではいってきます」

 神月と冬真に見送られた力也と結衣は、スタッフのSubの後に別の部屋に案内された。

「では、詳しい内容を説明します。参加者の皆様にはカーテンの向こうにいる自分のご主人様を探していただきます。ご主人様は言葉も、グレアも発せずにおとなしくお待ちになっていらっしゃいます。皆様はこちらのラバーマスクをご着用いただき自分のご主人様を探し出してください。そして見つけ出したらその場でおすわりをしてください」

 そういう彼が見せたのは、口だけが空いた顔全体を覆うラバーマスクだった。真っ黒いラバーマスクは顔全体を覆うことで、頼りになる視覚も嗅覚も使えなくなる。かろうじて聴覚は使える物の、いつもよりも精度は落ちる。

(なるほど、かなり難しいな)

 むしろどうやってたどり着けというのだろうと思うほどだった。例え視覚、聴覚、嗅覚がなくともグレアが感じられればわかるがそれもない。これでは賞品がいいのも理解できる。

「力也さん、私自信ないです」
「俺もないよ」

 とはいえここまで来たからには頑張るしかない。ラバーマスクを渡され、力也はそれを手に取り身につけた。

(ラバーマスクとか久しぶりだな。これ口空いてても結構苦しいんだよな)
「力也さん」

 不安そうな結衣に腕にしがみつかれ、この辺かなと思いながら頭を撫でた。

「怖がるなよ、頑張るんだろ?」
「は、はい」

 始まってしまえば、結衣に構うことはできなくなるだろう。大丈夫だろうかと思っていると今度は後ろに誰かが来るのがわかった。

「では、続いて手首も拘束させていただきます」
「え?」

 どうやら両手まで自由に動かせなくなるらしい。両手を後ろで手錠で拘束され、これでラバーマスクを自分では脱げなくなってしまった。

「力也さん・・・・・・」
「結衣、落ち着け。とにかく傑さんを探すんだ。大丈夫絶対見つけられるから」
「はい」

 そうは言うが自分も見つけられるか自信はない、結衣に言いながら力也も自分に言い聞かせる。

(大丈夫だ。俺のご主人様は冬真ただ一人、必ず見つけ出せる)

 息を吸い込み気分を落ち着かせる。そうして数分後、力也達のいる部屋のカーテンが開く気配がした。
 カーテンが開いても動き出せないでいるSub達の耳に、スタートの合図のようにご主人様達からのコマンドが聞こえた。

「Search!」【探し出せ!】

 同時に発せられたコマンドだったが、その瞬間先ほどまで動けずにいたSub達は動き出した。
 待機していた部屋を出ると、視界を奪われ見えない中ご主人様を探し出そうと会場の中に入る。
 Dom達は、一人ずつ板で仕切られたカーテンの向こうにいた。椅子に座り声を出すこともグレアも禁じられたまま自分のSubをただ信じて待つしかない。

「さぁ、Subの皆様が一斉にスタートされました」

 司会の声を聞きながら冬真は自らも気配を探すように、目を閉じた。カーテンの向こうの騒ぎは集中してもわからない。かろうじてDomの本能で沢山のSubがいるのはわかる、しかしそれだけで見分けることはできない。

(力也、こっちだ。俺はここだ)
「おっと、一人動かないSubがいます。どうしたのでしょうか」

 心で必死に呼びかける中そんな司会の声が冬真の耳に届いた。どうやら、多くのSub達が探している中一人だけ動かずにいるSubがいるようだ。

「お、早くも一人カーテンの前にたどり着きました。さて、どのカーテンの向こうにご主人様がいるか見つけ出せるでしょうか?」

 カーテンの向こうに、Subの気配が近づくのを感じる。気配は次第に数が増えていくが、それでも冬真のカーテンの前に止まる事はなくウロウロとしているらしい。

(力也、俺の力也。来い、今すぐ俺の傍に!)
「おっと、動かずにいた一人が動き始めました!凄い、一直線です。一直線にカーテンの方へ向かっていきます!」

 観客席からの歓声が聞こえる中、そのSubはカーテンの向こうに到着したらしい。
状況を見守っていた観客達は、たった一人動かずにいたSubの様子を見守っていた。
 緊張して動けなかったのかも知れないが、これでやっと他の仲間達と同じように探し始めるだろう、誰もがそう思ったとき彼はスタスタと歩き、迷うことなく一つのカーテンの前で止まった。
 そして観客達が見守る中、彼はその場にペタンと座ってしまった。

「え? これは見つけ出したと言うことでしょうか?」

 誰もが驚く中、彼はウロウロしているSub達にぶつかられながらもその場から動こうとしない。ラバーマスクはカーテンの向こうが見えているかのように、前だけを見つめていた。
 
「おっと、また一人見つけ出したようです。おすわりの体勢になりました! 続々と座っています」

 徐々に、他のSub達もゆっくりとカーテンの前へおすわりを始めた。しかし、やはり見つけ出すのが難しいのだろう、同じカーテンの前に二人座ってしまっていたり、まだウロウロと探し出せずにいる人もいる。

「残り一分となりました。カーテンを開かせていただきます」

 その声と同時に、Dom達とSub達の間にあったカーテンが取り除かれた。カーテンが取り除かれたDom達の何人かは自分の椅子の前に座るSubを見下ろした。
 しかし、中には椅子の前に誰もいないDomもいる。

「どうやらまだご主人様の下へたどりついていないSubがいるようです。Domの皆様はグレアで呼んであげてください」

 その瞬間、何人かのDom達からグレアが発せられた。
低ランクがいることもあり、ちゃんと加減がされているグレアだったが、自分のご主人様のグレアを間違える筈がないSub達は、ある者は安心し、ある者は慌てて動き出した。
見つけ出せずにウロウロとしていた結衣も、神月のグレアを感じ取りもつれる足でその場に向かった。

「おめでとうございます! これで全てのSubの皆様がご主人様を探し出すことができました! では、ご主人様は渡してある鍵で手錠を外し、マスクを取ってあげてください!」

 参加者のDom達はこの状況になっても声を発することなく、鍵でパートナーだと思うSubの手錠を外し、ラバーマスクのチャックを上げた。

 手錠が外れ、やっと邪魔だったラバーマスクが外された力也は、違和感を吹き飛ばすように軽く頭を振った。

「あーさっぱりした」
「お疲れさま力也、ちゃんと見つけ出して偉かった」

 膝をついた冬真ににっこりと微笑まれ、思わず抱きついた。無事見つけられたよかったと思いながら、甘えるように顔をこすりつける。

「発表します! 今回の一位は、力也選手です! おめでとうございます!」

 司会がそう発表する中、望み通りの賞品を手に入れた力也は、ただ一人のご主人様である冬真の腕の中でご褒美のキスをおくられていた。

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