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5、「七月中旬並みの気温です」

心配しないで笑ってて

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「貴広さん。マジでどうすんの」

 閉店後は店内の照明を落とし、カウンターの上だけにする。ほんわりとしたオレンジの光の中で、良平がカウンター席に座っている。

「どうすっかなあ」

 貴広は良平に訊かれ、まかないのフライパンを揺すりながら天井を見上げた。

 今日のまかないは、鶏肉の香草焼き。……というとリッチに聞こえるが、実際はオムライスのための鶏肉を、冷蔵庫不調のため早めに片づけようというだけだ。それに、普段より早めにくたりと萎れてしまう、レタスなどサラダ野菜の一掃処分。

「夏になったら持たないよ。食中毒でも出したりしたら……」

 カウンター席で、良平は心配そうに眉を寄せる。貴広はフライパンを握ったままブルと震えた。

「……そうなんだよなあ」

 そんなことにでもなったら営業停止、閉店へのカウントダウンだ。

 鶏肉に火が通り、丁寧に皿へ移そうとする貴広。良平はカウンターから身を乗り出した。

「俺が金作って来ようか。とっとと就活終わらせて、卒論で忙しくなる前に、夏休みの時間使ってさ。期間工でも行ってひと稼ぎしてくれば」
「バカ」

 レジの前を回り、貴広が席へやってきた。

「お前は、そんな心配しなくていいんだよ」

 貴広は良平の髪を撫でた。

「毎日笑ってくれてればいい」
「貴広さん……」

 良平は貴広の腹に額をつけた。貴広は良平の細い肩を抱いた。

「金の算段は俺がする。だから良は、何も心配しないで笑ってて。今は就活と卒論のことだけ考えて。いいコだから、な?」

 良平は瞼を閉じて、貴広の腰に腕を回した。
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