最期の七日間を君に贈る

早瀬黒絵

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七通目

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 あなたと出会ってから七日目の朝。

 とても体が軽く感じられました。

 本当はダメなのですが、家族と主治医の先生に頼んで外出許可をもらいました。

 そうして私は生まれて初めて本物の海を見ました。

 車に乗って高速道路を初めて通りました。

 車窓から望む海はキラキラと太陽の光を反射させて輝いています。

 鳥が飛んで、遠くには小さくですが船も見えました。

 言葉にできないくらい本当に世界は綺麗ですね。

 途中で母が大きなつばのある帽子を買ってくれました。

 暑いからと、真っ白な綺麗な帽子です。

 父は写真を撮ってくれました。

 病院以外で初めて家族写真を撮りました。

 私と海も、姉と一緒にいる所も、数えきれないくらい写真に収めてくれました。

 姉と一緒に貝殻を拾って、少しだけ海水にも触れてみました。

 冷たくて、潮風の磯の香りにあなたを思い出してしまいます。

 帰りは疲れてしまって少しだけ眠ってしまいました。

 二時間ほどのお出かけでしたが、私はそれだけで充分です。

 帰ってくると看護士さんが海の匂いがすると笑って、私が持って帰ってきたお土産の貝殻をもらってくれました。

 あなたに渡そうと思って拾った貝殻もあります。

 その日もあなたの姿を見ることはできませんでしたね。

 もう泣くことはありませんでしたが、身体のどこかに見えない穴が開いてしまったかのような不安を感じました。

 どうか会いに来て下さい。

 たった一度だけでいいので、あなたの顔が見たいです。

 けれども心のどこかでもうあなたに会えないのだという予感がしていました。

 もしもあなたが明日来てくれたとしても、私はあなたと会うことはできない。

 私はきっと明日死ぬのでしょう。

 今日この日は神様が私にくださった最後の一日なのかもしれません。

 だから今のうちにあなたへ書き残しておきます。

 ありがとう。

 絵をくれて、世界がこんなにも素敵なものだと教えてくれて。

 私という存在を見つけてくれて、ありがとう。

 あなたは将来画家になりたいと言っていましたね。

 あんな素敵な絵が描けるのですから、きっと素晴らしい画家になれるでしょう。

 私はもうその絵を見ることはできません。

 その素敵な絵で沢山の人々に私が感じた感動を、伝えてください。

 あなたと出会えたことは、私の短い人生の中でもっとも幸せなことだったと思います。

 どうかあなたの絵で救われた人間がいたということを忘れないで。




 
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